茨城県の日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターでプルトニウムが入った容器の検査の際に、プルトニウムが入ったプラスチック容器が破裂して、プルトニウムを含む細粒が飛び散ったと思われる。それを吸い込んだ作業員の肺から22000ベクレルのプルトニウムが検出されたという。
 
飛散したのは、金属製の容器に保存されていた高速実験炉での実験用燃料作製の際に出たクズの粉末(約300g)であった。試料クズは、先ずポリエチレン製容器に入れられ、二重のビニール袋で覆い、金属製容器にいれて26年間保管していたという。なぜビニール袋が破裂したのか。出光一哉・九州大教授(核燃料工学)は「ウランやプルトニウムなどは時間がたつと原子核が崩壊し、ヘリウムの原子核(アルファ線)が飛び出す。長期間保管してヘリウムガスがたまり、容器の内圧が高まって破裂した可能性はある」と指摘する。
 
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使用済核燃料中に含まれるプルトニウムなら、その中に11%程度含まれるPu(241)の半減期が14.4年と非常に短く、保存期間の26年間には約70%崩壊しており、場合によっては最大2L程度(65mL/g; Pu(241))のヘリウムガスを発生していたかもしれない。
 
それにプラスチック容器は、おそらく放射線によりボロボロになっていたのではないだろうか。
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上記は原子力資料情報室が公開している原発で2年間ウラン核燃料を燃やしたあとの核廃棄物に含まれるプルトニウムの組成を示す。容器には300gの核物質が入っていたというから、全部の放射能は兆ベクレルである。従って20万ベクレルなら、恐らく合計が1mg程度の細かい埃を吸い込んだと思われる。
 
缶を開けたのは、内側に空気を吸い込むタイプの所謂ドラフトチャンバー内であり、大部分の埃は排気口のフィルターに補足されているだろう。何れにしても、その地域に健康被害を起こすようなレベルではないと思う。
 
被曝した人も、埃が何らかの生理作用(たんなど)で排出されれば、被曝量は減少する。気管支肺洗浄などの処置を行い、下剤を用いて消化管を綺麗にすれば、相当被曝量を減少させることができるのではないだろうか。経過観測が大事であると思う。http://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~med-1w/hospital/sickness/kikanshihaihou.html

以上、事件に関する感想を記した。

追加:
その後、肺からプルトニウムが検出されないことがわかったということです。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170612/k10011015221000.html
おそまつな話です。放射線管理の専門家が上層部になっていなかった可能性がある。だいたい、Pu239が検出されたというが、上の表ではプルトニウムならPu241の方が壊変数としては大きい筈。わけわからん。