武田邦彦氏の「50個の原爆を持つ日本」という動画がyoutube上にアップロードされている。つまり原爆50個分のプルトニューム(補足1)を持っていることが、原爆を持っていることに等しいというのである。
一方、青山繁晴氏の動画でも、似たようなことを言っている。前半部分では、イランも米国の制裁解除で、核兵器を持つようになるだろう。そのような核兵器が拡散した将来の世界を考えて、日本も核開発をすべきだと言っている。その意見には賛成である。しかし、この動画で言っている「核開発など1日でできる」という考えには同意できない。https://www.youtube.com/watch?v=ZUno2Lbrdfg
この二人の原爆の開発は容易であり、一晩でできるという意見には全く同意できない。例えば、北朝鮮では核兵器開発に何年もかかっている。日本も戦前、理化学研究所で核兵器開発をしていたが出来なかった。そこでの開発経験者が、北朝鮮に帰国後開発にあたったと言われている(補足2)。
上記動画で武田氏は、原爆は原爆用のプルトニュームを普通の容器にいれて、火薬で囲むだけだと言っている。しかし、爆発限界以下の塊で配置したプルトニュームを中心付近に急激にTNT火薬で集めるのだが、それが1000万分の1秒程度の誤差で同時に集まらなければ、部分的な爆発に終わってしまう。マンハッタン計画では、32面体の容器に入れるという方法を発見するだけで、相当の時間を要したという。(補足3)
その構造の概略は、ネットにも掲載されている。http://gigazine.net/news/20141210-visible-atomic-bomb/ しかし、それは凡その構造であり、寸法や角度などが入っていて初めて実用的な情報となる。例えば、爆発の伝搬が早い火薬の中に、遅い火薬の層を配置して(その構造を爆縮レンズという)、中心部分にナノ秒レベルの誤差で均等に届くようにしなければならないが、それは至難であると思う。
時間的誤差の非常に短い雷管なども、入手が難しいかもしれない。そして、この爆薬の量とその配置などの情報は、米国などから貰わなければ、長期のシミュレーションと最終的には実験が必要だろうと考えるのが普通の感覚である。実際に2006年の政府の内部文書には「小型核を持つまでに3-5年かかる」とあるらしい。(補足4)
なぜ、二人はこのような無責任なことをいうのだろうか? 青山さんの動画には江田五月(元科学技術庁長官)さんに聞いてもらったというような言葉があったが、江田五月さんのような民主党系統の方に政府官僚が核装備に関する大事な情報を漏らさないと考えるのは間違いだろうか?
補足:
1)原子炉でできるプルトニュームには、質量数239(239Pu)の他に質量数240のもの(240Pu)などの同位体があるが、原爆用のプルトニュームは239Puが90%以上のものが必要である。上の武田氏の動画で述べられている米国に返還したプルトニュームがその原爆用である。
2)日本併合時代に理化学研究所で働いた朝鮮人科学者が核開発を始めたとネットでみた。おそらく、世界的に著名な物理学者であった仁科芳雄博士の研究室員だろう。生き残りがおれば北朝鮮は当然動員するだろう。
3)このノーハウは、戦後に米国の原爆独占を恐れた開発者の一人がソ連に漏らした。それが、比較的短期間にソ連が核開発できた理由である。
4)産経新聞の暴露記事(2006年12月25日)にかかれているという。https://ja.wikipedia.org/wiki/日本の核武装論