米国は何故、日韓に圧力をかけたのか?(1)
1)アジアにおいて、国連常任理事国であり核兵器を保持する国は、中国だけである。米国が現在脅威と考えているのは中国のみである。しかし日本も、政治的には完全に抑え込んでいるものの、潜在的脅威であることに変わりはない。悪夢は中国と日本が手を結ぶことであり、それを防止するために太平洋地域を重視している。もちろん、日露の友好など米国は考えたくもないだろう。
中国が脅威であるがゆえに、ニクソン以来米国が笑顔で接すべき相手である。もちろん脅威であるがゆえに、本音もチラチラ見えるだろう。しかし、すぐに笑顔に戻る筈である。南沙諸島の問題で、米国が空港建設現場の近くを軍艦で通行したと言って、やはり米国が頼りになると喜んでいる向きもあるが、頼りになるのなら、何故埋め立てをやっている間に圧力をかけて中止させなかったのか?つまり、米国の軍艦航行は中国向けというより、周辺諸国向けのデモンストレーションにすぎないという見方が既に多数派である。
2)今回の日韓に対する“従軍慰安婦問題”解決への圧力も、米国側にたって考えてみる必要がある。 http://www.mag2.com/p/money/6933/3
まず、北朝鮮は米国にとって脅威か? 韓国は米国にとって重要な国か? 両方ともノーだろう。米国が元々朝鮮半島の行く末にあまり関心がないのは、ディーン・アチソンという元国務長官が、米国の防衛上大事なラインの外に置いた時から明らかではないのか。
今回の“従軍慰安婦問題”解決への圧力に対して、オバマ大統領が北朝鮮核問題解決を業績として残したいからという、田中宇氏の解説があった。それも一つかなと思ったが、今はその考え方は間違いだと思う。 http://tanakanews.com/160104japan.htm
それが目的なら、既に中国への働きかけがなされていなければならない。日韓への圧力なんて何時でもできることである。米国が、「北朝鮮を承認する用意があるから、貴国(中国)は北朝鮮に核兵器を廃棄させる役をやってくれないか。その上で休戦協定に調印した国が集まって、朝鮮戦争を終結しようではないか」と言えば、実現する可能性が高いし、それしか実現させる方法はない。その様な働きかけなど全くなかったことが、中国が北朝鮮へ圧力をかけることに消極的であると表明していることでわかる。http://mainichi.jp/articles/20160109/k00/00m/030/085000c
中国の「北朝鮮の核問題は米国と北朝鮮の問題だ」と言う台詞は、米国が北朝鮮を国家として承認する予定があれば、中国が協力するまでもなく簡単に問題が解決するだろうという意味にも取れる。そうなら、わざわざ日韓に団結を求めなくても良いはずだ。米国にそのハラヅモリがあったなら、20年以上前に平和な朝鮮半島は実現していただろうし、北朝鮮は核兵器開発などしていなかっただろう。何故そうしなかったかは、馬渕睦夫氏が著書に書いているように米国はアジアに火種を残したいから(2)であると思う。
3)“従軍慰安婦問題”解決を日韓に強制する目的は何だったのか?私は長期化しそうな安倍政権を潰すことにあったと思う。
北朝鮮の核兵器が米国にとって問題であるのは何故か? それは、日本がそれを脅威に感じて、核武装を考えるだろうからである。北朝鮮の核実験が始まった時、当時のライス国務長官が急遽日本を訪問して、「米国は核の脅威から日本を守る」とかなんとか言った。
その慌てぶりは見ものであった。日本を核攻撃から守りたかったわけでは決してない。日本が独自核武装を頭に浮かべることを吹き消すためである。鎮火には初期消火が絶対だからである。しかし、日本には核武装の考えなどほとんどないことを知った米国は、逆に北朝鮮の核兵器は使えると思ったに違いない。それは、北朝鮮の核の脅威を口実に、日韓の友好を強制することである。もちろん、日韓友好が大事だからではなく、全く逆である。
今回の“従軍慰安婦問題解決”という両国への指示は、それにより日韓の間に刺さった棘が痛み出し、そこが膿むことを狙っているのだと思う。そんなに簡単に解決しないことなど、米国のアーミテージなど対日戦略を練っている人たちには自明のことであるし、一般人でも米国に存在するたくさんの“慰安婦の像”を見ればわかることである。
また、日韓両政府間に何らかの合意を強制することは、中国と韓国の間に楔を打ち込むこと、つまり中国に米国の縄張り範囲を示す意味はあっただろう。
何故この時期かを考えると、本当の目的は日本での安倍政権への信頼感を国民の間から失わせ、日本に憲法改正から独自路線を歩むという選択肢がなくなるようにしむけることだと思う。それで、プーチン安倍会談から、日露間の距離が縮まるという悪夢もなくなる。
では何故この時期なのか?
安倍さんが総理になった当初、オバマ大統領らは安倍さんを非常に軽くみていたと思う。その考えが甘いことが決定的になったのが、安倍総理の米国議会での演説であったと思う。単なる右派だと思っていたが、米国の議員たちの心をつかむ演説をやってのけた。
ウクライナの件で、ロシアと日本との北方領土問題解決への動きが消えたと思っていたが、どうもそうでもない。プーチン安倍会談の予定が未だに組まれている。参議院選挙で憲法改訂がいよいよ具体化する可能性が高くなる。米国は安倍政権を脅威に思い出したのだと思う。
注釈:
1)これは素人のメモです。適当に読み飛ばしてください。
2)火種がなければ、米国の存在感を示す舞台がないし、何かの時に利用もできない。