大韓航空機の航路変更事件、“ナッツ姫事件”の判決があった。

大韓航空前副社長の趙顕娥(チョ・ヒョナ)被告に12日、懲役1年(求刑・懲役3年)の実刑判決が言い渡された。
今回の裁判で問われた5つの罪のうち、最も注目されたのは航空保安法上の航路変更罪だった。趙被告は一貫して「飛行機が動いていたとは知らなかった」と主張。「航路とは離陸後の空路を意味する」と引き返しは航路変更に該当しないとした被告側の主張は認められず、航路変更罪では有罪となった。韓国で同罪が適用されるのは初という。 

ソウル西部地裁は「本当に心から反省しているのか疑わしい」「(離陸直前の機内で趙被告から暴言、暴力を受けた)客室責任者と乗務員も趙被告を許していない」ことなどを実刑判決の理由に挙げた。テレビ放送(とくダネ)によると、裁判長の言葉の中に、“国家の威信をも傷つけた”というのがあったという。
 
私には、ナッツ姫が犯した罪は、乗務員に対する暴行だけの様に思える。何故なら、飛行機が飛行場から飛び立つ時或いは航空中の最高責任者は、その飛行機の機長であり、このナッツ姫ではない。従って、航空保安法の中身は知らないが、航路変更を行なった罪は機長が問われるべきである(注釈)。日本の航空法も恐らく韓国の法も、国際航空法を元に作られているだろう。そうすれば、滑走路に向かってから到着した空港の滑走路に降り、乗客を降ろす場に停止するまで、機内の最高権威者は機長であるという基本は変わらない筈である。 

 機長が大韓航空の社員であり、上司の命令に従わなければならないという就業規則があったとしても、それは航空法に優先する筈がない。ナッツ姫がピストルなどで脅したのなら兎も角、乗務員から”副社長が激怒して引き返せと言っている”と報告があっても、無視すれば良い。暴れ出したとしても、乗務員の男が何人もいるのだから押さえつければよい。もし、それが原因で解雇や減給処分を会社から受けたのなら、不当解雇などで訴える方法がある。 

 韓国ではそのように論理的には事は進まないという意見があるかもしれないが、それについては、機長さんは不運だったと諦めるしかない。 

 裁判長が判決理由の中で、国家の威信に傷を付けたと言ったらしいが、たかが部下にビンタを見舞っただけで、懲役一年の実刑の判決を受け、おまけに国家の威信云々といわれたのではたまらない。韓国民も3-4年牢にぶち込めと言っているらしいが、それが判決に反映したのなら、将に人民裁判である。 
 私は異国の人間故何の野心も無いが、袋たたきのナッツ姫に少し同情する。 

注釈: 
もし、機長がナッツ姫の要求を通常の業務命令と受け取り航路変更したのなら、航空法違反の共犯者としてナッツ姫が裁かれる可能性があるかもしれない。しかし、主犯は機長であり、機長はそのような罪で裁かれていない(上記記事の”韓国で同罪が適用されるのは初という”と言う記述がある)ので、その可能性はないだろう。つまり、”副社長の怒り”がピストルを用いるのと同程度の脅迫と看做されなければ、ナッツ姫(副社長)の航空法の違反は成立しないと思う。 

==因に、筆者は法律の専門家ではありません。==