癌が重粒子線にキレた理由 その2
前回は、通常の放射線治療が癌細胞に対して
何故、有効なのかについて書きました。
今回は、重粒子線治療が癌細胞に対して、
何故、更に有利な点を持っているかについて
書いてみたいと思います。
以前のブログで重粒子線の特徴について、
以下のように書いたと思います。
・通常の放射線は電子を加速した電子ビーム、
重粒子線は電子と比べると はるかに重い質量を持った
炭素イオンを加速したイオンビームが正体です。
・通常の放射線はエネルギーを減少させながら
人間の身体を突き抜けて進んでいきますが、
重粒子線はエネルギーを温存して進み
癌細胞のターゲットの場所で
大きなエネルギーを放出して(ブラッグ・ピーク)
動きが止まります。
・上記の性質を利用して癌細胞の前にある組織や、
後ろにある組織に対して影響を最小限にして、
通常の放射線の3倍の力で癌をやっつける
(生物効果)ことができるわけです。
これ以上、何の特徴があるのでしょうか?
癌の3大療法は、手術、抗癌剤などの化学療法、
放射線療法と言われますが、
全ての癌患者が3大療法を受けることが
できるわけではありません。
例えば、腺癌、私のような腺様嚢胞癌などは、
化学療法や放射線療法が効きにくい癌です。
そのため、涙腺上の腺様嚢胞癌になってしまった場合、
眼球、瞼、眼窩の一部の骨、及び、眼窩内組織を
全て手術して除去するのが唯一の治療法だったのです。
ただ、そのような癌においても、
重粒子線治療は効果があるのです。
それは何故なのかを書いていきます。
放射線療法が効きにくい癌(放射線抵抗性のある癌)
とは、以下の特徴があるそうです。
①大きな癌の固まりで、内部の低酸素状態にある癌細胞。
②遺伝子(p53)が異常である癌細胞。
p53が正常に機能しないと
異常な細胞分裂を止めることができなかったり、
アポトーシス(細胞の自殺)が阻害されたりします。
③遺伝子(Bcl-2)が過剰に発現している癌細胞。
Bcl-2はアポトーシスを抑制する働きがあり、
過剰に発現するとアポトーシスが起きにくくなります。
では、上記のような癌に、はたして重粒子線は
打ち勝つことができるのでしょうか。
まず、①のタイプの癌への効果です。
前回書いたように、放射線治療では、
酸素イオンの力を使ってDNAに損傷を与えています。
そのため、酸素が少ないところでは、
酸素イオンの発生も余り発生しないため、
DNA損傷への切れ味が落ちてしまいます。
しかし、重粒子線の場合、
炭素イオン自身が照射されるので、
酸素が無いところでもイオン効果により
癌細胞のDNAへ損傷を与えることができます。
TVショッピングで有名な
ダイヤモンド入りチタン包丁のような切れ味です。
②のタイプの癌への効果です。
重粒子線を照射すると遺伝子p53の働きの有無によらず、
細胞が致死することが分かっているそうです。
ん・・・調べても理由とか判りませんでした。 (;^_^A
しかし! 信じる者は救われる!!
想像の域を達しませんが、
重粒子線の強力なエネルギーにより、
多くの癌細胞のDNA螺旋鎖は完全に切られてしまい、
細胞分裂は停止せざるを得ない状態になり、
またズタズタになった癌細胞は、
p53遺伝子によるアポトーシス誘導がなくても、
アポトーシスが誘発されてしまうからではないでしょうか。
③のタイプの癌への効果です。
これまで、③のような癌細胞に対して
重粒子線が有効かどうかは
科学的には解かっていませんでした。
今年に入り、独立行政法人日本原子力研究開発機構と
国立大学法人群馬大学の実験により、
遺伝子Bcl-2に強くアポトーシスが
抑制されている癌細胞においても、
重粒子線によりアポトーシスが誘発されること、
細胞分裂停止も引き起こされることが
明らかになりました。
実験で分かったと言うのは、
論理的でないので納得し難いのですが、
まぁ理論は後から付いてくるのでしょう。
以上のように、放射線抵抗性のある癌にも、
重粒子線治療は効果があるのです。
以上が、期待を込めて書いた
癌が重粒子線に(よってDNA鎖が)キレた理由 でした。
落ち弱ー・・・。 (-"-;A