僧籍を得て歌人となる前は侍で、源頼朝との交流があったことなどが記録されている。
その彼が侍だった頃、染園という才女に、ひと目惚れをする。
思いを告白すると返ってきた手紙には、
『この世にては逢わず、あの世にても逢わず、三世過ぎて後、
天に花咲き、地に実り、人間絶えし後、西方弥陀の浄土にて我を待つべし』
というもの。
これは強烈な、否定の言葉のように見える。
「人類が絶えて久しくなった西方浄土で会いましょうというのだから、
『もう諦めなさい』という意味に読み取れるが、
実際は、この手紙、
『今夜は逢えません、明日もダメ、三日が過ぎて四日目の夜に、
空に星が出て、草木も眠る丑三つ時に、西にある阿弥陀堂に行って、私を待ちなさい』
という逢い引きの意味が秘められている。
それに気がつかなければ、ヤボな人、ということになる。
もちろん、西行は名うての歌人。
気づかぬハズもない。
ただ、本懐を遂げたかどうか、、、
残念ながら、その辺りは知りようがない。
西行は、そのようなロマンの話に事欠かない。
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