グウの音も出ないお話 | BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

古代ギリシャ時代に書かれたアイソーポスの話は『イソップ童話』呼ばれる。
これは英語的発音。
日本の桃山時代には伝わっていて『伊曽保(イソホ)物語』などと呼ばれていた。
内容的には寓意を含んだ物語。
実際に「童話」という呼び方ではなく「寓話」と書かれている場合も多い。
ストーリーは動物などを擬人化し、暗喩的に表現した物語。
諷刺や機知に富んでいる。

スコットランド生まれのスティーヴンソンは、
『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』などで知られる小説家だが、死してのち、
未定稿として残していたいくつかの『寓話』作品が発見されたという。
『宝島』は、奥さんの連れ子のために書いたともいわれている。
その後、彼は、肺を患ったため療養を兼ね、
妻と子とサモアの島に移住。
そこで、現地の人たちと尊敬と親愛に包まれ、タシツラ(お話の巧みな人) と呼ばれたという。
やがて現地で、その生涯を終えた。
その未定稿である『寓話』の中の一編に『沈む船』という話がある。
その一節に、
航海士が船の揺れに驚き、半分ひげを剃りかけたままの姿で
船長にあわてて報告をするくだりがある。
『せ、船長、船が沈みかかっています!』
船長は、確認するように、窓から外を眺めて悠然と答えた。
『まず、剃り残しをキレイにし給え。
船ってものは、進水したときから沈みかかっていると思っていいんだよ』
こんな対応をする船長は、決して船を沈めることはない。

今の世の中を見ると、こんな航海士が溢れている。
「機」を逃さないことも重要だが、
冷静に物事を判断できるということは、それ以上に重要なこと。
今、自動車業界で、日本車は、EVに乗り遅れていないか?
などと言われる。
実際、幾分「機」を失っているように見えなくもない。
それとも、これは、船長のように、悠然たる判断なのか?

何事も、スタートしたときから破綻というものに向かっているものだと考えれば、
ちゃんとヒゲも剃って、コーヒーでも飲んでから考えるのも悪くはないか。

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<了>