いつの頃からか、花粉症が席巻するようになって、
「杉」は、ちょっと悪役っぽい立場に立たされてしまったが、
日本人は古来より杉のかおりを ことのほか好んできた。
まず、懐石の箸には利休の「赤杉」の柾目。
そして、杉生地の折り箱。
開けたときの木の香りに食欲をそそられる。
また、吉野杉で酒樽を作り、
酒造りの最後に杉の葉を丸く束ねた杉玉を軒端に吊るして、
新しい酒の誕生したことを知らせる役目をになった。
杉は、日本人の生活と密接に結びついていた。
杉でできた、一合升の淵に塩を置き、冷や酒をキュッと呑むのは、
最高の贅沢のような気がする。
その贅沢を後押しするありがたい『酒は百薬の長』まで用意されている。
この言葉は中国古代の史書『漢書』の中、
どうも「新」を建国した王莽(おうもう)の言葉らしい。
左党にとっては、二千年前の、この言葉ゆえに、ありがたく酒が呑める。
また、江戸時代の儒学者、貝原 益軒の書『養生訓』に
「酒は天下の美禄なり。少し呑めば、甚(はなは)だ人に益あり」
とあることを楯に、テイスティングをはじめた。
この言葉、「少し呑めば、、」というところがミソ。
ところが、お決まりの通り、終わるはずがない。
「はじめ、人、酒を呑む。終わりには、酒、人を呑む」
などという厳しい言葉もある。
知らない人とも親しくなったような気がしたが、気づいてみれば「宴の後」。
ドイツの格言
「酒が作り出した友情は、酒の酔いのように一晩しかきかない」
確かに...。
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<了>