ショートショート『なんちゃって占い師 10』 | BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

小市民M氏の元同僚のK氏は定年後「占いの館」を開いた。
その占いの館には連日様々な人がやってくる。
今日現れたのは、よくしゃべる中年女性。
「先生、うちの妹の主人が一週間前に忽然といなくなってしまったんです。
会社にも行っていない、主人の友達とかに聞いてもわからない」何とも落ち着かない様子。
「ほう、蒸発というヤツですな。警察には?」
「もちろん、次の日、捜索願いを出しました。事件性がはっきりしないと警察はそれほど踏み込んだ捜査はしてくれない。消えてしまった当日だけは妹と手分けして色々探したけど、それこそ、屋根裏部屋はもちろん、行きつけの店とか主人の友達とか。もしかして『女がいるのか?』なんて疑ったり。それはそれは方々探し回りましたよ」
「まったく手がかりなしですか?」
「そうです。忽然となんです。それで、K先生の評判を聞いて、生きてるのかどこにいるのか、それを知りたくて来たんですよ」
「そりゃ、大変ですな。どちら方面ということは言えてもドンピシャでココということはできませんが、それでもよろしいですかな?」
「はい、ちょっとした手掛かりだけでもあれば、、、」相変わらずそわそわしている。
「では占ってしんぜよう。妹様のご主人の名前がコレコレ、生年月日がコレコレ」
K氏は、そばの竹筒に立てていた筮竹(ぜいちく)を手に取り、何やら呪文のようなものを唱えつつ、
「アレがコウなり、コレがアアなり、ならば、コレが...ムムム、ハイッ!」
「先生、どうですか?!」
「出ましたぞ!現在の生死のほどはわからぬが、ここより辰巳(たつみ)すなわち東南の方角にあり」
そう言うや、女性はケータイを取り出し電話をかけ始めた
「今、K先生に観てもらっているんだけど『東南の方角』だって。何か身に覚えがある?」
妹が『ここから、東南の方角?覚えがないけど...あっ、学生の頃通っていた”精神修養の道場”がそっち方面にあったわ。そこかしら。今から行ってみる』
「先生、妹の主人は悪い人じゃないんですけど、どこかつかみどころのない人で、、、何かヒントになればと思って、、、どうなるかわかりませんけど、、、」話し出せば止まらない。
K氏は、このあとM氏と約束がある。早く見料を頂戴して終わりたいところだが、
この女、お財布から出したお札を握ったまま、なおも話し続ける。
いいかげんK氏が痺れを切らしかけているところに女性のケータイが鳴った。
さすがに話をやめ、ケータイに応答しながら見料を払い、話しながら出ていった。
「ふーっ、話の長いおばさんだ」
ほっとしたのも束の間、また、その女性が血相変えて飛び込んできた。
「先生!見つかりました!先生が言われたように辰巳の方角にある”精神修養の道場”で。
ありがとうございました!さすがK先生。お見事!」
女性は言うだけ言ってやっと出ていった。そこにMが入ってきた。
「話の長いおばさんだったね。だけど、よくわかったな」
「いや、一週間ほど前に来られたのがおそらくご主人。その時占ったのが、『恵方は辰巳にあり』と答えたのじゃ。そうすると、仔細ありて、そこに行かれたのじゃろう。ハッハッハ」

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<了>