ショートショート『海側の窓辺にビール』 | BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

小市民のM氏は新幹線に乗るときは海側の席を取ることに決めている。
山側を選べば富士山も見えるが、全体的な風景としては海側。
そう思って、三列シートの一番窓側のA席を取った。
切符を手にして、車両を確認し、座席のナンバーを確かめ、
窓側のA席を見つけて座ろうとすると、
そこに幼稚園児のような娘と母親が隣同士でちょこんと座っていた。
『あれ?』と、もう一度座席を確かめ、『やっぱり、ここだ』と母親らしき女性に声をかけた。
「ここは、ボクの席だと思うんですが?」
母親は怪訝そうな顔をしながらM氏を見た。
M氏は切符を指し示し「12番のA席。これがボクの切符です。
そちらのは、B席とC席ですからソチラとコチラですね。
お嬢ちゃん、ごめんなさいね。そちらに座りますね」と言って、窓側の席に着いた。
この景色を見ながら、キオスクで買ったロング缶のビールを傾ける。
これが、最高なんだ!と、シュパッと缶を開けて、一杯、ゴクリと飲んで、
「クーッ」と言って窓のところに缶を置いた。
しばらく車窓を眺めていると、母親が口を開いた
「窓の景色が見えなくってもヒロコ、ガマンよ!」
(えーっ、なんか、罪なことをしてしまったかな?
だけど、ボクにとって新幹線はコレ! 割り切ろう)

そして、ピーナッツの袋を開けて口に入れようとすると、また、母親の声がした。
「あっ!海の景色。あまり見えないけどヒロコ、ガマンよ」

M氏は、遂に、いたたまれなくなり、その席を母娘に譲ることにした。
「良かったら、こちらに変わりますか?」
「えっ、いいんですか?!ありがとうございます!」
母親は嬉しそうに娘を抱っこして窓辺のA席に着いた。
座るやいなや、母親は、海の風景をシゲシゲ食い入るように見ていた。
M氏は、C席から遠巻きにして、海の風景を見ていた。
(これでもいいか。見えないわけでもないし。
窓辺の桟のところにビールを置くのが好きなんだけどな。)そう思いつつも、
前の座席にくっついているテーブルを出して、丸いくぼみにビールを置いた。
母親が「ヒロコ、飲み物はないけど、いいよね」

ふと通路に車内販売のワゴンが現れた。
M氏は『これも何かの縁。』この母娘に飲み物でも奢ってやろうと、声をかけた。
「何か飲みませんか?私が奢りますよ」母親は、遠慮がちに、うなづいた。
M氏は、娘さんの方に声をかけた「ヒロコちゃん、何がいい?」
ワゴンの方を指さして言った。

すると、母親が「あのー、ヒロコは私です。
あ... 独り言が...聞こえちゃいましたか?」

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<了>