「つまらん」
誰にともなく、というより、まるでもうひとりの自分にだけ伝わるように
花は吐き捨てた。
「盛り上がってんじゃねえか」
意識してなのか無意識になのか、花とは目を合わせずに
下界を眺めながら猪木がつぶやいた。
「本気?」
花が猪木に問う。
「アリと闘った時、フレアーと北朝鮮で試合した時より、この試合の熱気が勝ってますか?」
少し驚きながら猪木か笑う。
「試合、見たのかい?」
同じ様に
視線は試合に向けたまま、花が答える。
「勿論見ましたよ。だって、こっちに来てからずっと退屈だったんだもん」
「ジュリアは最初、私と向き合ってた時よりお利口になってるし
岩谷…岩谷麻優もあたしを標的に定めた時より、ジュリアには遠慮してるもん。
なんか運動会見てるみたい。
観客も応援合戦みたいで、腹の底から熱狂してないもん。
猪木さんなら、この空気感で乗れますか?」
「ムハハハハ」
いつもの笑い方をする猪木を横目に
花は吐き捨てた。
「女子だって、負けないくらいに熱狂させられるし、
ジュリアだって岩谷麻優だって
私とならもっとヤレるもん」