よろこびも悲しみも -6ページ目

よろこびも悲しみも

人の心に興味があり、テレビドラマだったり、歌詞だったりで、いろいろ勉強中です。

私が、以前からずっと気になっていた心理実験があります。
調べているうちに、なんだか旅をしているような感覚になってきました。
少しずつ整理しながら書いてみます。

私がピグマリオン効果の話を知ったのは、
ある人のCD・オーディオブックを聞いていた時のことでした。

先生が
「この生徒は頭がよくなる」
と思うと、本当にその生徒の成績がよくなった、
という話だったのです。

その時はまだ「ピグマリオン効果」という言葉さえ知らない時でした。
なので、その話を聞いても、
「ふ~ん」と思っただけで終わってしまったのです。

けれども、何故か
この話はその後も私の心の奥に残り続けたのです。

そしてある時、どうしても気になって、
このピグマリオン効果のことを調べ始めたのです。

すると、
意外な事実や思いもよらない事実が
次々と見つかったのです。

ピグマリオン効果とは、いったい
何だったのでしょうか。

あなたも、ピグマリオン効果の正体を
一緒に追い求めてみませんか。

1960年代のアメリカ
大学内の実験室の一室に、学生たちが集められていました。

机の上には、いくつもの迷路装置。
そのそばには、小さなネズミたちが入った箱が並んでいました。

指導する先生が言いました。

「ネズミは迷路を覚える能力を持っています。
 君たちの役目は、このネズミたちを訓練し、
 より早く迷路を解けるようにすることです。」

そして学生たちは、それぞれネズミを割り当てられました。

ある学生には、
「こちらは迷路学習能力の高いネズミです」

別の学生には
「こちらは迷路学習能力の低いネズミです」

そう説明されたのです。

迷路装置は、思っていたよりずっとちいさなものでした。

学生は最初、少し拍子抜けをしたような顔をしました。
こんな簡単な箱で、本当に能力の違いなど分かるのだろうか。
そんな疑問が頭のどこかに浮かんだのかもしれません。

けれど、
ネズミをそっと迷路の入り口に置くと、
白い体は一瞬、ぴたりと止まりました。

やがて、小さな足がゆっくりと動き出します。

右の迷路に入り、すぐに行き止まりにぶつかる。
くるりと向きを変え、今度は左へ進む。

学生は身を乗り出すようにして、その動きを見つめていました。

手には記録用紙と鉛筆。
けれども、書くことを忘れたように、
ただネズミの行方を追ってしまいます。

隣の机からは、
「お、もう出たのか」
という小さな声が聞こえてきました。

別の学生のネズミは、どうやらもう迷路を抜けたらしいのです。

その声を聞いた瞬間、
目の前のネズミの動きが、
少しだけ遅く感じられたのかもしれません。

「ほら……そっちじゃないよ」

思わず漏れたその声は、
励ましだったのか、焦りだったのか、
本人にもよく分からなかったでしょう。

ネズミは角で立ち止まり、
ひげを細かく震わせています。

その姿は、
まるで何かを必死に考えているようにも見えました。

やがて動き出し、
遠回りをしながらも、出口へと近づいていきます。

学生は、知らず知らずのうちに
その小さな背中を応援していました。

自分のネズミだけは、
きっと、うまくやれる。

そう信じたい気持ちが、
いつの間にか胸の中に生まれていたのです。

やがて、
日を重ねるうちに、
少しずつ違いが見え始めました。

「能力が高い」と言われたネズミは、
迷路に入ると、ためらう時間が短くなってきました。

一度通った道を覚えているかのように、
前よりも迷わずに進むようになってきたのです。

学生たちは、
その様子を見るたびに、
小さな手応えのようなものを感じていました。

「やっぱり、このネズミは覚えがいいのかもしれない」

そんな思いが、
少しずつ確信へと変わっていきます。

一方で、
「能力が低い」と言われたネズミは、
何度も同じ場所で立ち止まり、
同じ行き止まりに迷い込むことが多く見えました。

学生たちは、
そのたびに記録用紙に印をつけながら、
どこか残念そうな表情を浮かべていたかもしれません。

「もう少しなのに」

そう思いながらも、
次第に、
このネズミは時間がかかるのだ、
という考えが心の中に形を作っていきました。

こうして、
迷路を解く速さの違いは、
日ごとに、はっきりしたものとして
学生たちの目に映るようになっていったのでした。

けれど、この実験には
誰も予想していなかった結末が待っていました。