10、バラエティ豊かなお餞別 | Never stop exploring

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きょうも どこかで よい旅を

こうして、出発までの日々はあっという間に過ぎていった。
準備と同時に、しばらく会えなくなるみんなと過ごす時間を作った。誘ったり、誘われたりして、楽しい時間が濃縮された三ヶ月だった。

私としては、ちょっとパリ言ってきます。ってぐらいの軽い感覚のつもりだったけど、周圍の扱いは結構大げさで、まるで一生のお別れのような手厚い送り出しっぷりであった。
出発が近づく頃には、誰とご飯に行ってもごちになってばかり。餞別品も、ありがた迷惑なふざけたものから使えるもの、心のこもったものまで、実におもしろかった。

その個性溢れるラインナップの中から面白いものを少し紹介

①現地で困ったときに路上で小銭を稼げるようにとくれた手品セット。(ありがた迷惑)
②荷物にならずにもっていけるようにと、北斎の富士山の絵のパズルに書かれたみんなのメッセージ(これは本当に現地で完成させた)
③向こうでやばくなったら聞け!と、やたら応援ソングが入ったiPOD(でも名曲揃い)
④「これお守り」と、気づいたら勝手にバッグに付けられていた、手作りのブローチ。(泣けました)
⑤友人12人によって作られた、世界に一つしかない、2010年1月~12月のカレンダー。各月を一人一人が自由に担当して書いてくれたもの(、、ってことは一年間は向こうにいなさいってことね)
⑥一番ウケたのはお金!私の知らないうちに、小池基金なる名目で職場にブタの貯金箱が置かれていたらしい。これも、モノより何より必要なのはお金でしょ、と考えた友人のアイデアで、ピンクのブタさんの中には1円からお札まで、ずっしりとカンパが入っていた。


私の行き先は、戦地か?
言っとくけど、意地でも帰ってきますけど!?
身近な人に急に優しくされると不安になるわ!
嬉しい反面、「やばい、、これじゃあ向こうで嫌になっても簡単に帰ってこれないじゃんか、、」
と、本気で焦った。

でも、どの人からも共通して伝わってきたのは、「とにかくただ思いっきり楽しんでこい」という、シンプルでありがたいメッセージだった。

いざ自分が何かに向かって動こうというとき、何も言わずに応援してくれる人、自分のことのように喜んでくれる人がいること。これは私に大きな力をくれた。
普段は当たり前で気づけなかったけど、自分がどれだけ人に恵まれていたことか。
それを再確認できただけでも、フランス行きを決めてよかったとさえ思った。


30歳、無職、独身、財産なし。資格、特技も特になし。
端から見たらただのダメ人間。
もはや失うものはなにも無いぜー!なんて思っていたけど、自分の周りにこんなにたくさんの人がいてくれたのかと、幸せを痛感した。


こりゃぁ タダでは帰れぬ。
必ず、自分なりに何かを得てこよう。


結局、出発の朝までバタバタだったが、リュック一つとスーツケース一つに必要最低限のものだけ詰めて家を出た。

一ヶ月後の自分が、どこで何をしているのか。
全く想像できなかったけど、きっとすごいことが待っているという、根拠の無い自信と期待は、なぜかはっきりと心にあった。


行けるとこまで行ってみよう。
そこで起こるすべての出来事を思いっきり味わってこよう。


こうして、2009年の12月24日。
30歳になったばかりの私はパリ行きの飛行機に乗った。

ちょっとそこまで、旅行と一緒。なーんて言ってたくせに、
機内で見た友人からの手紙を見てホロリ涙が出た。

人生は別れで深まり、出会いで広がる。

ニクい言葉です。