第69回正倉院展 初日に行ってきました | あべしんのブログ

あべしんのブログ

京都・奈良・滋賀。寺社、古墳、花……、史跡をぶらぶら散策するおじさんの日記です。
京都市内は、ランニングしながら、ぶらぶらしていることもあります。

朝から、雨。またですか・・・。

今日は、いや今日も、大和西大寺駅の近くで、朝から所用がありまして、奈良市へ、、。そして、それが午後4時半頃に終わりました。

天気も悪いですしね、京都行きの電車に乗って帰らないといけないところ、やっぱり奈良行きの電車に乗ってしまいました。何故ならば、今日から「第69回正倉院展」が始まりましたから!

スミマセン!──嘘をついてしまいました。生まれて初めて、嘘をついてしまいました。
(↑それがウソ!)
朝、家を出る時から、正倉院展のチケット(招待券)をカバンに入れてました。どんなに雨が降っても、行くつもりでした。


夜の雨の中の奈良国立博物館です。

今年の正倉院展の「目玉商品」は何だろう?──と考えると、どれも"甲乙つけがたく"一つを選びにくいのですが……。

やっぱり、これでしょうか?
図録の表紙を飾ってますしね。

緑瑠璃十二曲長杯(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)です。深緑色の楕円形のガラスの坏です。鉛ガラス製で、その緑色は銅によるそうです。表面のウサギやチューリップの文様が見ものです。
正倉院展と言えば、毎年のようにペルシア起源の「ガラスの器」が出陳されて、話題を集めます。
かつて白瑠璃碗を見た時は、「1,300年前に西アジアで作られたガラスのお碗がはるばる平城京まで運ばれて、美しい輝きを保っている!」と感動しました。ただし、これ(緑瑠璃十二曲長杯)は、形の起源は西・中央アジアですが、作られたのは、お隣りの中国〈〉だそうです。
何れにせよ、1,300年を経て、美しく輝くガラスの杯、スゴいですね!

並んで、玉長杯犀角杯など、様々な素材で、"世界各地に源流"を持つ「杯」が出陳されていました。

この玉の杯・玉長杯は、新疆ウイグル自治区のホータン産か(!?)──と言われているそうです。

その隣りに出陳されていました、金メッキの銅水差し・金銅水瓶(こんどうのすいびょう)も、今年の「目玉商品」かも知れません。

幾つかの部分に分けて作られた銅製品ですが、どこが境目か分からないくらい、破綻のないデザインでした──分けて作らないとできない形ですが──。
でも、これ!──鳥頭の長い首は、どう見ても「異国風」の水瓶です。でも、わが国で造られたものだそうです。

結論!!
“Made in CHINA”にしても“Made in JAPAN”にしても、その技術が素晴らしいだけでなく、世界各地のデザインを表現しようとしているんですね!

そして!
聖武天皇も、いや奈良時代の貴族の皆さんも、舶来ものがお好きみたいです!
昨今、「和の文化」だとか「和装」だとか「和柄」だとか、“日本風”に拘る人々も多いみたいですが、間違いなく、奈良時代の人々(日本人)の「流行の最先端」は、ペルシア風または中国(唐)風のようです。

世界デザインの数々───
漆槽箜篌(うるしそうのくご)なんて、まるで「西洋のハープ」だし、伎楽面・迦楼羅(かるら)なんて、「インドの神さま」だし!
※そう言えば、あの興福寺阿修羅さんの"なかま"八部衆の迦楼羅(かるら)さんも、同じく「乾漆」でした。たぶん、奈良時代の人々は、両方とも《乾漆のかるら》を見ていたことでしょうね。

同じく、今年の「目玉商品」であります、羊木臈纈屏風(ひつじきろうけちのびょうぶ)熊鷹臈纈屏風(くまたかろうけちのびょうぶ)も、"Made in Japan"ながら、そこに描かれている巻き角の羊や熊鷹は、ペルシア中国大陸にいる動物でした。

今年のパンフレットの表面を飾るのは、"これ(羊木臈纈屏風)"でした。羊だけでなく、猿や鹿の絵柄も楽しめました。

※これらの「臈纈屏風」に因んで、ミツバチの巣から作った蝋・臈蜜がたくさん出陳されていました。驚くことに、1,300年前のものですからね。スゴい!
下痢止めの薬としても使われたみたいですが、よく残ってますよね!──正倉院、恐るべし。


そうですね。
正倉院展と言えば、やっぱり、いろんな素材、材料が見られるのが、毎度の楽しみですね!
今年も、木材のみならず、銅や鉄、犀角やべっ甲、ガラスや水晶や琥珀……。
中には、マダケの尺八と並んで、"わざわざ竹に似せて大理石"でそれ(尺八)を作ったり(玉尺八)・・・、タイマイ(玳瑁)が貴重なら、"べっ甲模様を似せる「仮玳瑁(げたいまい)"言う技法で作った献物台・蘇芳地六角几(すおうじのろっかくき)までありました。
恐るべし、奈良時代の職人さん、いや奈良時代の公務員の工人の皆さん。

あっ、もう一つの「目玉商品」は、同じく献物台の碧地金銀絵箱(へきじきんぎんえばこ)でした。

本当に美しい工芸品でした!

看板などでは、この通り、緑瑠璃十二曲長杯と並んでいます。


ヒノキの箱に、水色の絵の具が塗られています。その上に、ニカワでといた水に金粉や銀粉を混ぜた金銀泥で、花や鳥が描かれています。

これはね、美し過ぎて、その場からなかなか離れることができませんでした。


初出陳の10点をはじめ、合計58点の宝物が出陳されていますが──。
仏さま(菩薩さま)への献物と考えられる品々を含めた、仏具類がたくさん出陳されています。そのコーナーの中に、今言った蘇芳地六角几碧地金銀絵箱があります。

それから──。
帯などの腰回りをお洒落に飾った「佩飾品(はいしょくひん)」が多く出陳されています。
天平人お洒落と言うか、天平貴族の《流行モード》を楽しみたいものです。これらも、様々な素材の刀子腰飾りがありました。


今年の正倉院展では、例年以上に「様々な素材やかたち、そして様々な製作地から来た宝物の数々」を見ることができます。
西方文化唐の文化を積極的に受け入れた、国際色穣な天平文化の様相をよくうかがうことができます。

今日は、雨の日の夕方、そして「オータムレイトチケット(※)」の時間の前と言うことで、わりと空いていて、しっかりと宝物を鑑賞することができました。
※閉館の1時間半前から、一般の入館料が1100円が800円になる時間帯のチケットのことです。その前が「穴場」かも知れません。


あっ、まだもう1枚、チケットを持っています。ですから、最終日(11月13日)までにもう1度見ることになると思います。


★余談ですが──。
1枚のチケットでなら仏像館にも入ることができます。寄ってから帰るのが、お約束!
そうそう。
先日、石山寺に拝観した時に、わが国独自の仏像(いや神さま?)の蔵王権現像のことを、ちょっとだけ書きました。なんと、入ってすぐの所で、蔵王権現像に出迎えてもらえました。
また、地獄絵ワンダーランド@龍谷ミュージアムの記事のなかで、源信さん以前に「地獄」がわが国に伝わっていた例として東大寺二月堂の観音さまの光背のことを書きました。それも、まだ展示されていました。
特にどうって言うことはないのですが、【オタクの私】にとっては"見逃せない"ものです!


まだまだ書き足りないのですが、これ以上続けると、「今日の記事」にならないかも知れません。
日付が変わる前に終わります。
また、もう1度、正倉院展の記事、あるかも……。
ですから、一旦終わります。