難しそうな本が並んでいる。 ボクは「デカルト入門」といった本を手にとって立ち読みするフリを始めた。 こうしてまわりに人がいなくなるのをうかがった。  これじやI、まるで万引きだ……。 あたりを見回す。 誰もいない。  よし、行こ’つ。 やっと意を決してセクシュアリティーコーナーヘ向かう。 うになった。 それでも本を棚から出すときと戻すときは最高に緊張して、で顔を赤らめていた。 そして周囲をキョロキョロ。 もできるよなぜか一人 こうして何回かの本屋さん通いを経て、やっと本をレジに持っていけるようになった。  買ったのは、太郎次郎社の『男ふたり暮らし』と『男と男の恋愛ノート』。 表紙がマンガで親しみやすく、「ゲイ」「同性愛」といった単語がタイトルになかったので買いやすかった。  しかし、このあと、本を買ったことでまた一つ、「解決しなくてはならないこと」を増やしてしまった。       タイガは風呂嫌いり‥  これは数年前のエピソードだ。   ある日、ボクは久しぶりの大学友だち二人と湯河原の温泉につかっていた。 親戚が経営しているということで、格安で泊まれるこの宿は、料理もうまいし、大学時代からの「隠れ家」的存在になっていた。 屋上にあるヒノキの樽風呂「満天星」は、月を見ながら入るには最高。 ついつい部屋の冷蔵庫でキンキンに冷えた日本酒をこっそり持ち込んで長湯してしまう。
このように、女を妊娠させるという行為は実は想像以上に難しい。 そのために男を相手に練習を積むことが大切だ、とベイカーらは主張しているのである。 むろんバイセクシャルの男本人たちは、そんなからくりがあるなどとはつゆ知らない。 本能の赴くままに行動しているだけなのである。  バイセクシャルの男が本領を発揮するのはたとえば、パートナーがいる女を相手にする場合だろう。  女は、パートナーと浮気相手(バイセクシャルの男)の両方とほぼ同時期に交わることが多い。 しかも女は無意識のうちにその時期として排卵期を選んでおり、精子競争が起こることになる。  精子競争とは、一つの卵の受精を巡り、複数の男の精子が争うことだ。  そういう競争状態でこそ、日頃の練習の成果がより発揮されるに違いない。 ばっちり掻き出し、女をタイミングよくいかせる……。  男性同性愛者は男性異性愛者と比べ、五分の一程度しか子を残さないとされているが、こうしてみるとそれは見かけ上のことかもしれない。 戸籍の上で、あるいは認知している限りにおいてそうだというだけで、実は潜在的には非常に多くの子を残している。
これが、動物行動学やその周辺の分野の人々が、共通して持っている認識である。  これから紹介する研究と、それによってわかった事実とは、実はこの認識から少しはずれている。 それでも、男性同性愛者の七人に一人くらいがこの理由によって同性愛者になっているという推定もあり、決して無視することはできないものだ。  それは……兄の数である。  自分の母親が産んだ、兄の数だ。  そもそも男性同性愛者は、キョウダイの中でも後の方の順番に生まれている傾向にあること、しかもキョウダイの中に男が多い傾向にあることが、既に一九五〇年代、六〇年代の研究でわかっていた(キョウダイの下の方だと親に甘やかされて育つとか、男の兄弟が多いと、ケソカをして揉まれて育つ、などという環境との関わりは問題にされていない)。  しかしこの時代には、男性同性愛者がキョウダイの後の方に多いという現象が、兄が多いためなのか、姉も絡むのかがはっきりしていなかった。 兄、姉、弟、妹を厳密に区別して調査 そこで一九九六年、カナダ、トロント大学のR・ブランチャードはA・F・ボガートと初めて共同研究をした。 ボガートとは、後に同性愛者のペニスの研究をすることになる、あのボガートだ。  ブランチャードは実は、その何年も前から男性同性愛者について、生まれたときの親の年齢や、男の兄弟の割合について研究していたのだが、兄、姉、弟、妹、とキョウダイを厳密に区別して調査したのはこれが初めてだった。
だったらたくさん投資する方がたくさん返ってきて嬉しいじゃないか」と受託者を信頼する気になって多くのお金を投資したのだろうか9・ それとも単に、お金がまったく返って来ないとか、投資した分すら返って来ないというリスクがあるが、そんなことはまったく気にしない、とにかくたくさん返ってくる方法を選ぶ、というように恐れの気持ちか薄れた結果、多額のお金を投資する気になったのだろうか? この点が区別できない。  そこでもう一つの実験をする。 コンピューターが相手の場合は? 受託者は人間ではなく、コンピューターである。 もうかったのに全然返さないとか、投資した分すら返さないというリスクがランダムに発生することになる。 そうした裏切り行為がいつ発生するかはわからないが、一定の確率で発生することがわかっているのである。 どうなったと思いますか? 平均して全額投資した者も、どちらのグループも投資者のI〇%で、違いなし。  見事なくらいに違いなし。  つまり最初の実験では、「裏切られてもいい、大いなる賭けに出よう1・」というリスクを恐れる気持ちがオキシトシンによって薄れ、多額の投資をしたのではなかった。 相手を信頼する気持ちが高まったことで多額の投資をしていたことがわかるのだ。 コンピューターは、ランダムとはいえ】定の確率で裏切り行為をする。 信用できない。 だから多額の投資をすることが憚られるというわけである。
一九九九年のことだ。  この年にはもう一つ、ハマーらの研究に疑問ありとする研究が提出されたが、それは双子研究をしたJ・M・ヘイリーとR・C・ピラードのコンビによるものだった(ヘイリーはヘルパー仮説を否定する研究も後にしている)。  とはいえこれでハマーらの研究が全面否定されたわけではない。 男性同性愛に関わる遺伝子の一つが、性染色体のXに存在することはほとんど疑いようがない。 他の人々の研究によっても、男性同性愛者の母方に男性同性愛者が多いことが確かめられていて、それはX上に男性同性愛遺伝子の一つが存在することの動かぬ証拠だからである。 問題はXのどこにあるかだけだろう。 が、今日でもまだ、どこなのかはわかっていない。 男と女‥右か左か?挙丸は右、おっぱいは左り‥ 一九九四年、カナダ、ウェスタンオンタリオ大学の心理学者、ドリーンーキムラはこんな研究をしている。  そもそも性によって体の左右の発達に偏りがある部分がある。 それが性による得意、不得意の分野と関係があるというのである。 同性愛者か異性愛者かを区別していないのが残念だが、貴重な研究だ。  男と女のそれぞれの生殖腺である、傘丸と卵巣だが、どういうわけか、男では右の傘丸が大きく、女では左の卵巣が大きい傾向にある。