10月の下旬ぐらいからか、近所を散歩していたり、
自転車でフラフラしていたりすると、民家の庭先に
植えられた木犀の甘い香りが漂ってきて、鼻先を
そちらに向けてクンクンさせてしまう。
木犀の香りで17歳まで育った家の裏庭の風景を
鮮明に思い出す。裏庭の端に木犀(ギンモクセイだと思う)
があって、年がら年中その木に登って遊んでいた。
松の木もあって、そちらは屋根に登った時のくだりに利用していた。
子供時代の猿的動作は木犀の木で見につけた。
一年に一度、その木犀が香ることは経験的に知っていたが、
いつの季節だったかは、植物に無関心な小僧には記憶がない。
自分の育った地域は都市計画に伴う区画整理・住居移転などで
昭和30年代までの風景は消失してしまった。小学校の通学路も
なし。中学校の通学路もなし。今、自分が自転車なんぞでブラブラ
しているのは、小さな風景のなかに昭和30年代を見つけるため
なのかもしれない。開発から取り残された古い町並みを見ると
妙に懐かしく安心した気分に浸れる。原風景ってやつか。