こんにちは
臨床心理士の湯浅です。
普段カウンセリングオフィスや福祉でのカウンセリングを行なっていると、ここに来てくれている人は悩んでいる人、サポートが必要な人の一体何%くらいなんだろうと考えます。
特にDV虐待などの被害を受けていて心理支援が必要な人に対して、相談にたどり着けた人はほんの数%なんだろうと思います。
相談を始め、支援が必要な人が、その必要を訴え、適切なサポートが得られるまでに課される行動を称して「援助要請(えんじょようせい)行動」と呼びます。
しかし、支援が必要なのに、援助要請行動を阻害する要因がたくさんあって、支援につながらないケースというものがたくさんあります。
その代表的なものに
・情報の不足(どのような支援が世の中にあるかなどを知らない)
・自己認識と自己開示の制限(自分の状態がわからなかったり、人に知られるのが怖い、など)
・援助要請に対する抵抗感(恥や心理支援に対する偏見を含む)
が挙げられます。
最近もDV被害を受けたクライアントさんからカウンセリングの申し込みがあり、その方はパートナーの追跡を恐れるあまり住居から遠く離れた他府県を車で移動しながら生活しているとのことでした。その状態でトラウマ治療が必要かどうか教えてほしいという主訴でいらっしゃいました。
この方は経済的困窮しているわけではありませんが、それでも貯金を切り崩してホテル代やガソリン代を支払っていくことに相当な不安を感じるはずです。
また、そのような生活では、たとえオンラインといえどもカウンセリングが継続できるかどうか分かりません。
結論からいって、このクライアントさんにはトラウマ治療的なカウンセリングが必要でした。しかしそれより優先して福祉につなげ、住居と収入を確保し、パートナーからの追跡を恐れないでいいような環境づくりが必須です。
まず住民票がある自治体に連絡し、遠隔でDVシェルターへの長中期入居が可能かを問い合わせ、必要があるならその方の言語でのサポートを探してもらい、通訳も要請し、また国際結婚と離婚、ビザなどに詳しい弁護士につなげることを優先しました。
DV被害者に対する自治体のサポートは、場所によってはとても手厚いのですが、残念ながら皆さんあまりご存じありません。ですので私の知りうる限りの情報を提供し、しかるべき支援機関につなげ、その道筋をザッと決めてあげることが初回のカウンセリングで重要です。
決めてあげるというと大袈裟ですが、DV被害者は上記の理由から現実検討や援助要請が難しくなっていることも多いので、気持ちは拾いつつも、確実に支援機関に繋がってもらうことが良いと思います。
そして生活が落ち着いて、安全考えられたらトラウマについて話しましょう、と約束すると、皆さんすごく納得されるように思います。そうすることで援助要請行動の阻害要因を一つ潰しておくんですね:
そのためにはカウンセラーが領域ごとにある程度の情報とパイプを持っているの理想的ですよね。初回カウンセリングではその方向転換と支援機関へつなげるということをスピーディに行い、その方に無事で帰ってきてもらうことを目標とできるといいと思います。
Sincerely,
Aya Yuasa
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