林勇気『電源を切ると何もみえなくなる事』 | Pokopen Photographic

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もうだいぶ前の事ですが、林勇気さんの展覧会が京都芸術センター
で開催されたので行って来ました。


林勇気さんというと、ペットボトル等日常の身の周りにある
大量の写真を、コンピュータに取り込み、切り抜き、重ね合
の映像作品のイメージが強いです。


今回は4つの場所で展示。さらにアーティスト・トークもあっ
たのでそれにも参加しました。


作品まずはギャラリー北。
作品名:another world-eternal-
ここでは従来のイメージ通りの作品が上演されていて、多数の
切抜き画像が複雑にレイヤー化されてそれがゆったりと流れて
いました。そしてそれがだんだんとスピードを増して、やがて
個別に判定出来ないレベルまで動いていくという作品。
展示室すべての面に映像が写されていて見る人の影も
壁に写って、まるで多くの物が自分達の周りに存在しそれに
取り囲まれて生活しているような。そんな作品のように
思えました。



ギャラリー南
作品名:memories
この作品はまず片側の壁に写真を途中まで破って再び元に戻る画像が
3つ流れていて、部屋はその写真を破る音で満ち溢れている感じ。
妙に音が生々しかった。一方反対側に人間の何かを持っている
アニメーション。そして部屋にはそのアニメーションで人が持っていた
物が展示されていました。後でわかったのですが、そこに展示
されていたものは、アニメーションで出てきた画像データーを
基に3Dプリンターで出力したもので、円筒形の物は。ほぼ
その通りの形ですが、プチプチで包んだ平らな物はプチプチ
部が再現できてなくてゴツゴツした塊の様でした。




談話室
作品名:image data

多数のCRTに動画が写されている作品。一瞬ナム・ジュン・パイク
を連想しました。


和室「明倫」
作品名:OVERLAP

7人の人に他人に見て貰らいたい映像を持ってきてもらい
それを繋げた作品。その映像が写っている場所の下に御本
人達のアニメが現れ「皆さん集まってその画像を見るとい
うアニメが追加されていた。


感想

一番印象的だったのはギャラリー南の「memories」写真を破る
音が生々しく響き、凄かったですね。実はその写真もデジタル
画像で作った写真。デジタルはすべて虚、唯一写真を破るのみ
行為が真実なのかと思ってしまう作品でした。御本人自体は
「デジタルデータの薄さ」を表現したかったそうで、その時は
「薄さ」という物が何なのかまでは気が付きませんでした。
存在自身が薄いという事でしょうか?(質問すれば良かった)
そして破くことにより出てくる裂け目にRealtyを感じるのだ
そうです。

そう言う意味では反対側の壁に写されていた人のアニメーション
は物凄く薄い作品でした。そのアニメの人が持っている物を
3Dプリンターで出力したものを展示していましたが、
かならずしもアニメで表現されている物とはちがっていて
デジタル→アナログへの変換におけるミスマッチ(誤変換、
または正誤訂正)を表しているようで面白かったです。

デジタル技術が多くの人が利用するにつれ利便性は増すものの
人間は「アナログでしか認知しないので、当然ながら変換作業が
必要となるのですが、それが持つ危うさや危険性を感じました。
それなら「何故デジタルを捨ててアナログに向かわないのか」
という疑問はありますが・・・。

パピルスの紙に書かれた物は5000年も残ったがデジタルデーター
は果たして何年持つのか、そういう話がトークショーでありまし
たが。「memories」と言うタイトルはこういう背景から出てきた
のでしょうか?


タイトルの『電源を切ると何もみえなくなる事』。当たり前と
言ってそうなんですが、映像芸術のみならず私たちの生活は
すべて電気がなくては生きていけないわけで、そういう危うさを
表現しているのかは判りませんが、1日3回電源が落ちる時間が
あります。てっきりすべて電源が落ちるものと思ってましたが
実際は「談話室」のCRTの作品のみ真っ暗になって、他は入力
信号のみOFFとなっている為画面が青一色になっていました。
トークショーでは「単に待ち時間になってはいけない」といった
理由でこうなったそうですが、やぱりタイトル通りにばっさり
とやって欲しかったですね。その時間が「待ち時間」になるか
どうかは鑑賞者に委ねるという思い切りの良さがあってもよ
かったんじゃないでしょうか?現代美術なんだから。

色々勉強になったイベントでした。