3月5日に亡くなりましたね。
昨年の12月5日、体力の限界を理由に引退を表明したのですが、
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとのベートーベンの交響曲
のプロジェクトをスタートしたばかりでの引退表明なので、体力的
に何か問題があったのかな?と心配しておりました。
ラストの録音は多分追悼記念で買うでしょう。運命なんて何時買った
以来かな?
さて個人的なアーノンクールの思い出とか・・。
初めて聞いたのはバッハの「ヨハネ受難曲」もっともこのレコードは
指揮はしていないですけど。元々クラシックはドビュシーなんかで
スタートしたので、バッハって音楽の授業で聞いたくらい。
高校の時にクラシック好きな先生がいてリヒターの「マタイ受難曲」
聞かせてもらって。当時はこれ神の様に崇められた演奏。確かに
素晴らしいけど、正直好きになれなかった。
そんな中、たまたま中古で"Das Alte Werk"の「ヨハネ受難曲」を購入。
古楽器+オール男声(女性パートはウィーン少年合唱団)というバッハ
が生きていた時代の音を再現したというレコードでした。これ「ウィーン
・コンツェントゥス・ムジクス」と「レオンハルト・コンソート」
が合流した演奏。指揮は H.ギレスベルガー。今から考えるとそうそうたる
メンバーが集まった演奏ですね。実際聞いて見ると弦の響きが薄くなって
その分、声と管楽器とのバランスが良くなって、音楽が透けて見える
って感じでしたね。室内楽的でこれはいい!と結構聞きました。
後に「マタイ受難曲」も購入。こちらは指揮はアーノンクール。
両ディスク共仏ディスク大賞受賞。この2つは結構聞きました。
音楽とは関係ないけど、「マタイ受難曲」のリブレットにはバッハ
の自筆譜の写真があってこれも結構楽しかったです。
バッハの次はモンテベルディ。「オルフェオ」「ウリッセの帰還」
「ポッペーアの戴冠 」「アリアンナの嘆き」等、「オルフェオ」は
ともかく、他の2組のオペラの録音した事はびっくりしました。
この3組も結構聞きました。
アーノンクールって例のテンポ感覚とダイナミズム、不協和音の強調。
これらの特徴はこの時期からすでに現れていて、ここらへんは古楽演奏の
研究から来ていますが、クイケン兄弟なんかはすぐに方針転換をした。
(SEONとACCENTでは奏法がかなり違う)一方アーノンクールはそれを
武器にして進んで行きましたね。
アーノンクールが大きく話題になったのはやはりモーツアルトの歌劇
「後宮からの誘拐」でしょうか。トルコの民族楽器を使ったこのレコード
は大きな話題になりました。
実はこの頃から古楽に民族音楽の研究成果が入り始めた頃で、それを
拡大解釈(笑)してモーツアルトの歌劇の取り込んだのは感心しました。
実際モーツアルトがどう考えていたかは素人の私は判りませんが、その事
を抜いてもこの演奏は素晴らしかったです。そして次に出て来たのは
歌劇「イドメネオ」色んな版も補刊で発行されていて、なかなか資料的に
もすぐれたレコードでしたが、なんといってもモーツアルトのオペラ・
セリアの魅力を存分に示したレコードではないでしょうか。「イドメネオ」
はシュミット=イッセルシュテット/ドレスデンしか聞いてないですが
演奏として悪くはないですが、はるかにアーノンクールの方が
説得力がありました。その後「皇帝ティートの慈悲」。「ポントの王
ミトリダーテ」と次々と従来軽く扱われていたモーツアルトの歌劇の真
の姿を描いた演奏が続いて本当に目から鱗状態でした。
その他グスタフ・レオンハルトと共同でバッハのカンタータ全集の録音
とかやりましたが、こちらはエラスムス賞獲ってましたね。
ただ90年代になってモダンオケを振っては彼流儀の解釈で演奏を
続けたものの、私自身は古楽の研究が進む中、進歩が止った、アーノンクール
に興味は無くなり、W・クリスティのフランス物やブリュッヘン指揮の18世紀
オーケストラに興味が移ってしまいました。
アーノンクールなしでは私のPeriodic演奏への扉は開かれなかったかも
しれませんが、一方において巨匠化してしまったアーノンクールには
興味が失せてしまった。というのが今の私の情況です。
ご冥福をお祈りします。