月に憑かれたピエロ | Pokopen Photographic

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あるおかたが、ツイッターでニーチェを読んでる。と言った話から
R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう語った」の話になって
(私も聴いたし、ニーチェの方も読んだなあ・・。)
それが同じ作曲家の「エレクトラ」になって・・。
で何故かシェーンベルクの「ピアノ組曲」の話になって・・・。
で調子に乗って私、シェーンベルクと言えばこの曲「月に憑かれたピエロ」

と書き込んでしまいました。


そこで久々に「月に憑かれたピエロ」を聞いてみました。
実は私シェーンベルクってあんまり好きじゃないのですよ。
むしろ弟子のベルクやウエーベルンの方が良く聞きます。

確かに12音技法を考えだし、発展させた大作曲家ではありますが。
革新的な手法で何を表現するのかと言った点で、なんかイマイチ
馴染めないところありまして・・。

そんな作品のなかで「月に憑かれたピエロ」は好きな作品です。

その理由は

・室内楽的なアンサンブル
・クラシックぽいようで、クラシックぽくない。


もともとロックやジャズが好きだったことから奏者間の
インタープレイに興味があって、クラシックでもそのような
要素が結構好みですね。しかもこの曲、楽器編成がユニーク
で音色感たっぷりの音楽がいいです。


そしてこの曲、シェーンベルクらしく古典的な音楽形式
てんこ盛りの楽曲ですが、音楽的内容はキャバレーソング
の名残りもあって、そしてなんといっても歌唱が、シュプレッヒ
シュティンメ(語るように歌う)。元々の要求が朗読だった
のですが、このように変えた事によってより歌詞が鮮明に
伝わって来て、ここらへんはダイヤストレーツやボブ・
ディランっぽいですねえ。

この事がジャズ歌手であるクレオ・レーンのレコードを
生み、ビヨークが歌ったり、なんと能舞台に掛けらたりと
意外な展開も生みました。


またその楽器編成がストラヴィンスキーの『3つの日本の
抒情詩』、ラヴェルの『ステファヌ・マラルメの3つの詩』
、ブーレーズの『主なき槌』に影響を与えた事は有名な事。

さてさてそこで我が家のレコード棚を探して見ると4枚の
物がありました。

1)ブーレーズ指揮 ヘルガ・ピラルツィク(61年)
2)ブーレーズ指揮 イヴォンヌ・ミントン(77年)

3)ハワース指揮  クレオ・レーン(74年)
4)シノポリ指揮  ルイーザ・カステラーニ(97年)


ブーレーズの61年版はかの現代音楽専門レーベルWERGOの第一弾!
歌手はこれまた現代物の第一人者、ヘルガ・ピラルツィク。割と
語るほうに重きをもった歌唱。録音もピラルツィクがポンと
中央に立ってその背後にアンサンブルが鳴るという、なんか歌曲
の録音みたいな音でした。そこらへんはCDでの再発の時に
ブックレットに詳しく書いているらしいです。(興味はありますが
その為にお金を払うのは一寸・・)
誌の内容に重きを置いた演奏でした。


それが(77年)になると、角が取れて綺麗に流れる感じに。
イヴォンヌ・ミントンも歌っている感じ。ブーレーズは新録音
となると細部の仕上げを練り上げ、流麗に音楽が流れる反面、
角が取れて音楽そのもの毒が消えていく感じがして・・。(これを
私は勝手にカラヤン化と言ってます。)

このレコードはアンサンブルのメンバーも豪華。


ピンカス・ズッカーマン(ヴァイオリン)
リン・ハレル(チェロ)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
アンソニー・ペイ(クラリネット)
ミシェル・デボスト(フルート)

ブーレーズの指揮も明晰でシェーン・ベルクが音楽形式てんこ盛りの
様子を見事に描き分けていますが、なんか録音には不満がある物の
私は61年版の方が好きですね。


クレオ・レーン(歌詞は英語)の方は彼女の個性が出ていていいですね。
この曲のキャバレーっぽい雰囲気が出ていて。この曲の依頼者である

アルベルティーネ・ツェーメがどういう人かはしりませんがなんとな

くツェーメが思い描いた世界はこんなのだったといった感じです。

伴奏のエルガー・ハワース指揮、ナッシュ・アンサンブルもブーレーズ

程鋭いというわけではありませんがいいですねえ。ナッシュ・アンサンブル

公演観に行きましたが、なかなかの腕でした。今のところこのレコードが

この曲のお気に入りです。


最後はシノポリ。 ルイーザ・カステラーニ若干演出過剰な所ありますが
いい演奏だと思います。シノポリの指揮も綿密解釈でいいですね。

いかにも「表現主義の音楽」って感じです。「月に憑かれたピエロ」って
どんな曲と言われたらこのCDをかけてあげればいいかな?



残念ながらドイツでは評判のサロメ・カンマーは未聴。
2年前かな?この人琵琶湖ホールでベリオ、ワイル、ケージ
なんかを取り上げたリサイタルやっていて行きたかった
です。