最近私にとって一寸ショッキングな会話。
ある人「HMVって何?」
私「ニッパー君の事?」
ある人「それ何?」
私「ニッパー君知らないの、蓄音機の横に
座っている犬の事」
ある人「・・・・」
私「HMVってHis Master's Voiceの略なんだけど」
今の人は多分HMVと言えばレコード店としか
思わないみたい。
冷静に考えてみたら確かにそうだわなあ。
HMVってかつてクラシックのファンにとっては
神のような存在。例の犬の絵がバンとレーベル
に大きく描かれ、どっしりと重たく、黒光りの
するHayesプレスのレコード(又はSP)。
このレコードを持ってプレーヤーにかける瞬間
は心がときめいたそうです。
残念ながら私が聞き始めた頃はニッパー君の絵も
小さく。しょぼくなっていた頃ですが・・。
せっかくなんで「HMV」の由来なんか一寸。
まずはニッパー君。英語では"Nipper"
脚の裏を噛むことことからそんな
名前になったとか。でその最初のご主人が
死んで、その弟(画家)がニッパー君を引き取
って、その弟が亡き飼い主の声が聞こえる
蓄音機を聞いている絵を描きました。
この絵のタイトルが"His Master's Voice"
(亡き主人の声)
正確に言うと最初はそんなタイトルでは
なかったそうですが・・。
その絵をレコード会社に売り込もうとしたの
ですが、最初の会社(円筒型蓄音機のメーカー)
の拒絶され次にベルリーナ・グラモフォン社
(円盤型蓄音機のメーカー)に持ち込んだところ、
元々描がかれていた円筒型蓄音機を円盤型
蓄音機に書き直す事を条件に買い取られ、
これが「HMV」の絵がベルリーナ・グラモフォン社
後のHMVそして最終的にはEMIグループの商標
なるわけで。もっとも商標は登録したものの
最初はレーベルのマークとしては使われず、
実際に使われるのはもう一寸先になってから。
ところでこのニッパー君。最初はレーベルの
半分を占める位、大きく書かれていたらしいの
ですが、その後絵そのものは変わりませんが、
グループ各社でレーベル上のレイアウトが
変わったりして、レコードのプレスなんかも一緒
に変わっていったので、「仏EMIの半円状の
レーベルは音がいい」とか色々話を聞いた事
があります。70年代となるとニッパー君は
小さくなり、それにともなって音も貧素になる
なんて言う人もいました。デジタルが始まる
時DMMプレスになった頃再び、大きく描かれる
事になりました。
さて、この絵を買い取った、ベルリーナ・グラモフォン社
その後経営不振に陥り、アメリカ・ビクタ-・ト-キング
マシンがこの絵の商標権を買い取り、商標としました。
後にこれが日本ビクターの商標ともなりますが・・。
これでこの絵はさらに有名になります。
でちょっとした悲劇が。
日本ではこの絵の商標権は日本ビクターが持っていて、
EMI系のレコードを日本に輸入する場合、商標侵害
となるので、ニッパー君の絵にシールが貼られたり
酷い場合はそこだけカッターで切って剥がされたり
してました。シールも色々あってPatheとかODEON
なんかのシールは結構デザイン的にも良かったの
ですが、だんだん横着になってEMIと書かれた
赤シールを貼る無粋は状態に。しかも貼り方が
いいかげんで一寸浮いたりしていて、興ざめ
でした。
今はそんな事もなくなったとは思いますが、
我が家には多数の「痛いニッパー君」のレコード
がまだ結構あります。
ところでいま日本でHMVと言えばCDショップ。
元々はグラモフォン社が1929年にロンドンで
オープンしたお店。昔英グラモフォン誌を購入
していたので、大きく広告が載っていて、一度
行ってみたいと思ってました。
元々は英国も及びカナダのチェーン店でしたが
90年代から国際的に規模を拡大。1998年
のはEMI社本体から別れて独立しました。
日本も1990年に進出。HMVと言えばクラシックという
イメージありますが、1号店の渋谷HMVと言えば
渋谷系サウンドですねえ。
今は亡き渋谷HMV。渋谷系サウンドはあまり興味は
なかったのですが、まあ一つの時代を築いた
お店でしたね。
ついでに英グラモフォン誌のURLを