Yes『In The Present - Live From Lyon』 | こはるーポカポカ日記

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4月に来日が予定しているYesの、最も新しいライブアルバム『In The Present - Live From Lyon』を聴いてみました。

Yes:
Chris Squire (Bass & Vocals)
Steve Howe (Guitar & Vocals)
Alan White (Drums)
Benoit David (Lead Vocals)
Oliver Wakeman (Keyboards)

DISC 1
01. Siberian Khatru
02. I've Seen All Good People
03. Tempus Fugit
04. Onward
05. Astral Traveller
06. And You And I
07. Corkscrew (Acoustic Solo)

DISC 2
01. Owner Of A Lonely Heart
02. Southside Of The Sky
03. Machine Messiah
04. Heart Of The Sunrise
05. Roundabout
06. Starship Trooper

2009年12月1日のフランスはリヨンでのライブを収録しています。2011年7月に新しいアルバム『Fly From Here』を発売していますが、それより前のライブなので新譜の曲は演奏されていません。

今更いうまでもないことですが、Yesは2008年に40周年ツアーが計画されていましたが、Jon Andersonの病気によりキャンセルとなります。Chris Squireは代役のシンガーとして、YesのコピーバンドをしていたBenoit DavidをYouTubeで見つけ40周年ツアーを行います。キーボードのRick Wakemanは心臓病を抱えており、医師の助言によりツアーに参加せず、息子のOliver Wakemanが参加しています。

その後、Jon AndersonとRick Wakemanは連名でデュオアルバム『Living Tree』を発表、デュオでツアーもし、Yesの楽曲も演奏していますから、病気は回復しているのかもしれませんが、Yesへの復帰とはなっていません。

      ■

一番注目されるのはやはり、ヴォーカルがJon AndersonではなくBenoit Davidなところでしょう。はっきりいうとかなり似ています。何も知らずに聴かされたら「あれ? Jonは喉の調子が悪かったのかな」ぐらいに思う人も多いのではないでしょうか。でも似ているだけに、細かな歌い回しが違うと気になってしまうのも確か。Jonだったら感情を込めて抑揚をつけて歌っていたところが、平板になっている印象を受けます。それでもYesの場合、単独で歌う場面より、Chris SquireとSteve Howeのコーラスが絡む場面の方が多いので、違和感は決して強くありません。

King Crimsonの初期メンバーの実質的な再結成バンド、21st Century Schizoid Bandのヴォーカルが、Greg LakeではなくJakko Jakszykだったことで違和感を感じた人も結構いましたが、それと比べると違和感は少ないでしょう。

「YesのヴォーカルはやっぱりJon Andersonじゃないと」と言われれば、そうだよなぁと思うし、「今Jonが復帰しても昔のような声で歌えたとは限らない」と言われれば、それもそうだと思ってしまいます。

自分の中でYesのヴォーカルがBenoit Davidであることは、「良い」「悪い」という判断基準ではなく、現在のYes(まさしくアルバムタイトル『In The Present』のように)のヴォーカルは彼なのだから、それを楽しまなければ損という考えです。

演奏については、スローテンポでもっさりとしていて、スリリングさがないのは事実なのですが、思っていたよりは堅実でしっかりとした演奏です。黄金期のメンバーである3人は、もうかなりの年齢なので、もっとよれよれかと思っていたので、これはうれしい誤算でした。

Amazonのカスタマーレビューには「本人たち自身による完コピバンド」なんていう辛口な言葉が並んでいますが、もしYesが70年代で活動をやめ、黄金期のメンバー3人を含む再結成だとしたら、もっと賞賛するコメントが並んでいたはずだと思うと複雑な気分です。「ヴォーカルもオリジナル・メンバーではないけれど、そっくり」みたいな。実際そういう状況ではないので、Ifの話をしても仕方がないのですが。

選曲的には、Jon AndersonやRick Wakemanがいたら演奏できなかったであろう、ふたりが参加していないアルバム『Drama(ドラマ)』の収録曲である「Tempus Fugit(光陰矢の如し)」や「Machine Messiah(マシーン・メシア)」が演奏されているのが特長です。2ndアルバム『Time And Word(時間と言葉)』に収録されている「Astral Traveller(星を旅する人)」もかなりめずらしい選曲かと。

あと一点付け加えるなら、音質がかなりいいです。ライブ・アルバムというと、最近のものであってもブートまがいのひどい音質のものがありますが(Eddie Jobsonの『Ultimate Zero Tour - Live』とか)、本作はきちんとした機材できちんとしたエンジニアが録音したのでしょう。ただ個人的には拍手や手拍子の音が少し大きすぎるように感じました。

     ■

4月のYes来日について、Jon AndersonやRick Wakemanがいないのかという声がありますが、そもそも今回の世界ツアーは『Fly From Here』のレコ発ツアーなわけで、『Fly From Here』はThe Buggles組の復帰と、当時の未発表曲「We Can Fly From Here」を組曲にするというアイディアがあったこらこそできた新しいアルバムなわけで、そういうアイディアが出てきた背景には、Benoit DavidとOliver Wakemanの編成で、ライブで『Drama』の曲を取り上げていたことがあるわけで。

そもそもJon AndersonとRick Wakemanがメンバーのままだったら、新譜の発売も世界ツアーもそれに伴う来日公演もなかったと自分は考えています。もちろんIfの話でしかないので、ふたりがいて黄金期の5人で新譜を作った可能性はありますが、あの5人が集まって、外から何の刺激もなく新譜を作るような創造性が芽生えただろうかと考えると、かなり懐疑的です。