2019.01.29放送
NHK BSプレミアム
「アナザーストーリーズ」羽生結弦オリンピック連覇
~メダリストたちが語る「最強」伝説~
■ 毒舌レジェンドも認めた羽生劇場
ディック・バトン氏のインタビュー書き起こし
「結果なんておまけだよ。私の評価基準は演技がちゃんと劇場になっているかどうか。独創的で、お客を呼べる劇場にね。羽生結弦の演技は、そういう意味では最高だ。みんなをうっとりさせる。満員御礼間違いなしだね」
「今の選手はスケート界を変えるという気概が足りないよ。採点に縛られて窮屈で、新しい技をやろうなんていう選手は全然いない」
ここで結弦くんが史上初の4Loと4T-3Aに成功した映像。
「結弦がソチオリンピックの後に言ったことに強い感銘を受けたんだ。『うまく滑れなかった』と言ったことにね。・・・私もね、1948年のオリンピックは良かった。最高の演技で優勝した。でも、次の1952年の時は、選手としては絶頂だったのにジャンプで転んでしまった。今でも悔やまれるよ」
Q:でも、1952年にも金メダルを獲っていますよね。勝つだけではダメなのですか?
「ダメだよ。なんでって?転んじゃったからだよ。今のルールじゃ、失敗しても点数がつくけど、ああなった時にフィギュアスケートは死んだと思った。フィギュアスケートは採点スポーツである以前に、お客を魅了するものなんだ。オーケストラが一音でも飛ばしたら台無しだし、バレエでダンサーが転んだら白けるだろ?(それと)同じだ。お客をがっかりさせちゃいけない。いけないんだ。だから、ユヅルの言葉に感銘を受けたんだ。若いの、わかってるじゃないか、ってね」
「4回転、4回転、だから何だっていうんだ。どいつもこいつも点数目当てに雑巾を絞るみたいなジャンプばかりして、あんな見苦しいものは見たくない。私が観たいのはたとえばジャネット・リンだ。彼女は軽やかに飛躍していた。距離を跳んで静かに着地する。それが本当のジャンプだ。ジャネットの演技には切れ目がない。ひとつの表現としてコントロールされていて、ジャンプも音楽に乗ってシンプルに跳ぶ。彼女のスケートこそまさに劇場だ。
もうひとり忘れてならないのは伊藤みどりだね。彼女はジャネットとは別の意味で最高の劇場だった。とにかくみんな目を奪われたよ。あんなに空高く跳ぶ選手はいないよ。
そして浅田真央。彼女はゴージャスだった。まさに名女優。他の選手にやれといっても絶対にできないパフォーマンスだった。
そうした名選手と比べても、羽生結弦は別格、破格の存在なんだよ。結弦はどこかで見たような演技はしない。今見逃すと二度と見られないような演技、それだけが価値があるんだ。どんなに難しい技だろうが、その選手独自の表現になっていなくちゃ、皆似たようなジャンプじゃ、点数だけで感動はない」
「キャメルスピン(バトンキャメルを発明)をやったのも、見る人の心を動かすためさ。優雅にゆったり滑るだけだったスケートにダイナミズムを加えて目をくぎ付けにしたんだ。要は、点数を超越した感動を与えられるかどうかなんだ。結弦にはできる。オリンピックの前に怪我はあったけど、彼が戻って来ることだけを願っていた。本物のスケーターをね」
平昌の結弦くんのフリー演技を見ながら・・・
「彼のジャンプの一番見るべきポイントはスピードだ。ジャンプに入る時と出る時のスピードが変わらない。そんな選手はまずいない。(結弦くんのジャンプ映像を見ながら)見たかい?跳びましたよ、なんていうアピールはしない。他の選手は難しいジャンプを跳び終わると“終わった感”が出ちゃうけど、彼は切れ目なくシンプルに演技を続けている。」
「よく尻もちつかなかった。成長したね。大怪我明けだろ。本当によく堪えている。1回ぐらい尻もちついても正直、点数では勝てるはずだ。だけど彼は、お客を魅了し続けることの大切さを知っているんだ」
演技を終えた結弦くんを見て・・・
「ははは。彼もやっと満足できたね。気持ちはよくわかるよ。いや本当に、素晴らしかった」
Q:ソチの頃から比べて羽生選手はどう変わりましたか?
「はるかに人を惹きつける演技になっていたね。よりシンプルなのに、より伝わるものがある。点数なんて関係ない。この大舞台で見せる最高の劇場を見せてくれたと思うよ。これぞ、金を超えてダイヤモンド級の演技だ。」
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アナザーストーリーズ、最高でした!
https://ameblo.jp/poissonbleu/entry-12436433512.html
オリンピックとは何か・・・インタビュー書き起こし