結いあげた金髪。女優顔負けの華やかさは健在のディジーと、その娘マーガレットは、ふたりして呆れ顔で心配してくれる。
「ごめんごめん、今日は気分が良かったからつい」
結婚して日本で俳優活動続けるのに限界になって渡米。当初1年で帰国するはずだったのに、運よく次の作品が決定し、そうこうしている間に仕事の拠点はすっかりこっちになっていた。
「本当にごめんね?ほら、散歩して胃も動いたから今夜はたくさん食べれそうだし」
「ほんと?だったら、Tボーンステーキでも焼いちゃおうかしら?」
「そ、そこまではまだ」
この二人を見ていると楽しい。日本にいる優奈と沙夜さんを思い出して。
日本には仕事で時々帰国するものの、今やすっかり別居状態。
何しろ、こっちにくることになった時、下の子が沙夜さんのお腹にいることがわかって、悩んだ挙句、彼女は日本で出産することにした。もちろん出産の時期と、無事生まれてからも何度も帰国したり、彼女のほうも子供と俺をあわせる為に渡米してくれた。
仕事がこちらにシフトし始めた時に、子供を連れてこっちにきてくれないか提案したけれど、彼女のほうも仕事があったり、子供の学校の問題もでてきて、答えを先延ばしにしている状態のまま早数年。
半ばあきらめて、単身赴任に徹していた矢先、俺は突然倒れてしまった。
ハリウッドスターの弁護を引き受けることの多いご主人と、西海岸にもメイクサロンを出店したいたディジー達とは、今や家族ぐるみのつきあい。
自己管理ができてない!と見かねたディジーは、俺をこの別荘兼自宅で同居を申し出てくれた。
「あ、さっき沙夜からメールあったわよ。明日のお昼過ぎに到着するって」
「え?ほんと!」
「章吾の奥さん?赤ちゃん連れてくるかな?」
「今回は奥さんだけね。それにもう赤ちゃんじゃないよ?ふたりとも」
「残念ね、沙夜も何遠慮してんだか?ふたりとも連れてくればいいのに」
「んーまあ、下の子はまだ小さいし、長時間のフライト中迷惑かけたくないって」
「あいかわらずねぇ、今時赤ちゃん連れのフライトなんてよくあることだし、文句言うやつがSNSでつるし上げ食らう時代なのよ?」
「まぁそういうこともあるけど今回は急だったし、なんせ倒れたことも、一か月前からあなたのうちにお邪魔してることも一昨日打ち明けたわけだし」
「あきれた!いってなかったの?」
「うん、心配かけたくなかったし。だから子供を実家に預けて慌ててとんできてくれるみたい」
ディジーが呆れるのも無理はない。事実このところ、彼女との距離は遠いように思う。
スカイプやメールで話をしても、お互いの知らない人間関係、知らない仕事内容。いちいち心配させるのも、詮索するのも嫌になってきて、二人とも当たり障りのない会話しかしなくなってしまった。

