※2016/9/27追記:本記事の内容、シリアに存在する勢力の関係や呼称についてシリア問題に詳しい識者が用いる用語とのズレや事実誤認があることに気づきました。後日時間を見つけて訂正いたします。お恥ずかしい……


■見る間に泥沼・シリア情勢

シリアでは「IS掃討作戦」と称して始まった軍事衝突が、アサド政権と反政府勢力とIS(イスラム国)との三つ巴の争いに発展している……くらいに認識していたのですが、いつの間にか勢力数が増えて泥沼具合が一層ひどくなっている模様です。ちょっと備忘録としてまとめます。

まずはこの記事で大枠を確認。

トルコのシリア越境攻撃――クルドをめぐる米国との確執
川上泰徳(中東ジャーナリスト・フリーランス)Newsweek日本版

「イラン、トルコ、サウジアラビア、米国、ロシアという外国勢力の思惑と利害でシリア内戦が動く構造がより露骨となり、実際に犠牲を払うシリア人の意思とは全く関係なく、泥沼化していくことになりかねない。」

それぞれ支援する勢力や敵対勢力をまとめると

米国→反政府勢力(クルド人中心)vsアサド政権・IS・アルカイーダ
ロシア→アサド政権vs反政府勢力・IS
イラン→シーア派vsスンニ派
サウジアラビア→アルカイーダ系・スンニ派vsシーア派
トルコ→アサド政権vsクルド人
(「→」は支援関係)

といったところでしょうか……
ちなみに、アサド政権に対する批判はこの通り。

アサド政権の「樽爆弾」が自国民を虐殺する
2015年5月15日(金)15時29分
ルーシー・ウェストコット Newsweek日本版

人間を「駆除」するアサドの収容所、国連が告発
2016年2月9日(火)16時55分
ルーシー・ウェストコット Newsweek日本版


なお、この9月に起きたのはトルコの地上部隊によるシリア領内侵攻で、トルコの航空戦力によるシリア領内での空爆は1年以上前から行われている様子。

アメリカがトルコのクルド人空爆を容認
ティモシー・マグラス Newsweek日本版


それから、「シーア派イランvsスンニ派サウジアラビア」という図式はちょっと単純に過ぎるという指摘も。「両国関係は地域覇権をめぐるもの」であり、「神なき世界政治の現実」との指摘が紹介されています。

サウディ・イラン対立の深刻度
2016年01月06日(水)21時38分
酒井啓子(千葉大学法政経学部教授)Newsweek日本版


■テロとの戦いなんかじゃない

こうして見ているとイライラしてきます。「敵は誰だか思い出せよ! 一番の敵はキチガイ集団のISだろ! 次に人道に対する罪のあるアサド大統領だろ! ロシアはいいかげん人道ってもんを勉強しろよ! トルコは頭冷やせよ! アメリカはしっかりしろ! シーア派vsスンニ派とか持ち込むなよ!」ちゃんとテロと闘えよ……と。
しかし、恐らく、そもそもシリアで起きていることはテロとの戦いなんかじゃない。キチガイのテロリストとマトモな人とが戦っているのではなく、長い間紛争に明け暮れて、互いに多かれ少なかれ頭のタガが外れて、いまさら平和の中で生きることなんかできない連中同士が勢力を競い合っている。それがシリアの実態なんだと思います。例えば、以下の記事がわかりやすいと思います。

ヌスラ戦線が、アル=カーイダから離脱を発表。シリアで何が起きているのか
2016年7月29日(金)17時50分
青山弘之(東京外国語大学教授)Newsweek日本版

なんと、「日本では、邦人ジャーナリストの拉致・身代金要求で知られている組織」であり「もっとも攻撃的で成功した反体制武装集団」と呼ばれる「ヌスラ戦線」は、イスラム国と関係が悪化すると、ちゃっかり「IS掃討作戦」に参加して「サウジアラビア、トルコ、カタールが後援する」立場となり、さらに「2015年9月にロシア軍が空爆を開始して以降、これまでになく劣勢を強いられるようになった」ため、ついには「ヌスラ戦線はアル=カーイダとの関係解消に踏み切り、「国際テロ組織」から「革命家」へと転身することで「反体制派」のなかに紛れ込み、空爆を回避しようとした」なんとなんと、旗を変えて「アメリカさん僕たちはテロ組織とは縁を切ったよ、ISと戦う正義の味方だよ!」というわけだ。何たる茶番。

ついでに言えば、そもそもヌスラ戦線は恐らく日本人ジャーナリストの安田純平さんを拉致しているが、以下の記事で伝えられるところでは「ヌスラ戦線の目的は身代金である」「ヌスラ戦線はこれまで人質を殺したことがない」そもそも営利誘拐を繰り返す、ある意味において合理的な「金で解決できる」組織の模様。もともと「国際営利テロ組織」らしいのです。

安田純平さん拘束と、政府の「国民を守る」責任
2016年05月02日(月)14時04分
川上泰徳(中東ジャーナリスト・フリーランス)Newsweek日本版


■疲れてきたんで、また今度。

とまぁ、ひどい状況です。 気になる記事はまだあるんですが、まとめきれません。
最後に現地の状況を伝える記事をいくつか。もちろん、人道なんぞ守られやしません。

シリア内戦、政府軍が化学兵器、ISISはマスタードガスを使用か
2016年8月25日(木)20時43分
ロイター Newsweek日本版

流血の男児映像が映し出す地獄とヒーロー
2016年8月19日(金)17時07分
ジャック・ムーア Newsweek日本版

死者47万人、殺された医師705人......シリア内戦5年を数字で振り返る
2016年3月16日(水)17時00分
ルーシー・ウェストコット、スタブ・ジブ Newsweek日本版
※本記事、9/5公開、9/7追記しました


■体内埋め込みナノマシンだ!メタルギアだ!

「METAL GEAR(メタルギア)」というゲームシリーズがあります。軍事オタクにはたまらないリアルな潜入・戦闘描写と、ちょいちょいブッこまれるパロディ要素も人気。ゲーム性も高く評価されて長年にわたり続編が発表され続け、人気シリーズとなっています。

METAL GEAR PORTAL SITE
KONAMI

特にオッサンが明るく元気な国を目指したいワタクシとしましては、主人公が白髪のおじいちゃん(クローン技術で生み出されたから老化が早く訪れたという設定で、実年齢は若いのですが……)の「METAL GEAR SOLID 4(略してMGS4)」は非常に印象深いタイトルです。

METAL GEAR SOLID 4
KONAMI

この「MGS4」主人公は老化が急激に進行する体に、特殊な携帯用注射器でナノマシーン(極めて微細な機械)を体内に注入して身体機能を補いながら戦います。ナノマシーンの効果が切れると、余命幾許も無い瀕死の重病人よろしく、咳き込むわ、びっこ引くわ、目眩でぶっ倒れるわ、こんな体調悪い主人公おるかね、という姿を晒します。そうでなくても長時間しゃがんでいると足腰が痛んで、すぐには立ち上がれません(苦笑)それがまた、共感を呼ぶわけですが……

そのナノマシーンが、ついに現実の世界に!!

ナノセンサーは人類に大きな成果をもたらす? 脳と機械を接続する「スマートダスト」
ケイト・ローレンス(ReadWrite[日本版]編集部)Newsweek日本版

まだ手術しないと埋め込めないし、寿命が短くて実用化には時間が必要そうですが、必要な技術が着々と揃ってきている感じ。何より、神経に取り付け可能になっている!!
神経って分からないですよね。心臓はわかる。要するに正しく血液を送り出せばいいんでしょう? だから、いろいろ問題はありつつも、人工心臓はすでに存在する。腎臓も、要するに血中の不要な物質を除去することが役目だから、人工透析という(これまた問題は多いとはいえ)代替技術がある。でも、神経は、特に脳は、なにをしているのか。脳と抹消をつなぐ仕組みは難しそうです。それが、出来つつある。すごい。
これ、そのうち注射器で血管に流し込めば各ナノマシーンが勝手に持ち場にくっついて仕事するようになりますかね。(書いていて、肝臓や腎臓に負担かかりそうだな……って思いましたけども)


■筋電義手だ! アンドロイドだ!

体の機能を何らかの人工部品で補う試みは他にもいろいろ出てきており、以前、切断されてしまった腕の残った部分から運動神経の興奮を拾って、その先に装着したロボット義手(筋電義手と言うらしい……カッコイイ)に指示を伝えて、それで練習したらギターを弾けるようになった、っていうニュースを読んだ気がするんですが……いまちょっと見つけられず。その事例では、大きなコンピュータを介在しないといけないから、日常生活では使えないという話だったと思います。

ギターを弾くところまで出来なくていい、なら、こんな記事も。

3Dプリント人工装具の未来
Jonathan Schwartz(Voodoo Manufacturing共同ファウンダー・最高製品責任者)TechCrunch


■それで、電気羊の夢は見るか?

荒んだ未来のロサンジェルスを舞台に、超巨大企業が開発した模造人間の反乱を描く映画「ブレードランナー(原作小説のタイトルは『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)」では、アンドロイドというより、むしろ生命工学の結果生み出された「人間もどき」が殺人事件を起こすわけですが、生身の身体を筋電義肢やナノマシーンで補った「真性アンドロイド」の世界はどんなものか? 脳は生身の人間なんだから、アンドロイドと100%生身の人間との間で関係がギクシャクする事はないでしょう。基本的には良い事しか無いと思います。
まぁ、敢えて言えば、戦場に送り込まれる兵士のアンドロイド超人化は進むでしょうね。さきほど紹介しました記事にも「彼らの研究は アメリカ国防高等研究計画局(DARPA) からも「革命的な小型化・統合化・エネルギーマネジメント」を伴うことから、軍への応用を目的とした支援を受けている。」と書いてある。
しかし、それも無人機の影響ほど大きくは無いでしょう。どれほど体を機械化していようが、それが生身の人間として生を受け、家族や友人がいる人間であるならば、命と、心と、社会とのつながりと、を持っているのであり、したがって野放図に戦場に送り込む事はできない。敵を殺す前に自分が殺される可能性が、殺し合いを始めることに対して歯止めをかける。でも、無人機はどんなに高価なものでも「もともと命が無い」以上、それは金銭で解決できる存在であり、破壊されることをさほど懸念する必要は無い。殺されるリスクを負わずに、一方的に殺せる。それが問題でしょうね。

ちなみに、「METAL GEAR SOLID 4」の主人公、白髪のオッサンは、世界を牛耳る軍事産業の陰謀を砕くため、世界平和のために老体に鞭打って立ち上がる設定。「永遠の闘争」を理想とする宿敵を、最後には殴り合いで打ち倒して「戦争経済」に終止符を打ちます。が、その後に発表されたスピンオフ作品「METAL GEAR RISING」では、テロと国際犯罪の時代に、職を失ったかつての傭兵達の苦しみ、憎しみ、新たな陰謀が描かれる。必要なのは、ひとりひとりが希望を持てる社会を作ることです。まぁ、これがマクロな政策でポンと実現するほど楽では無いですが。


■9/7追記:筋電義肢見本市!

などとニュースまとめ記事を書いていたら、こんな記事が目に飛び込んできた。もう皆さんメッチャ筋電義肢つかってはるやないですか。この義肢どうやって動かしてるんですか??

パラリンピックもいいけれど実用的な障がいアシストを競う「サイバスロン」にも注目せよ!
ケイト・ローレンス(ReadWrite[日本版]編集部)Newsweek日本版

「競技者たちは「パイロット」と呼ばれ」「ゴールは障がい者が日常かかえる壁をクリアすること」そのための、「世界でもっとも画期的なアシスト技術に関わる機会」とのこと。いやこれどうやって動かしているんだろう。気になる!!!
巷で大変話題の、「貧困」について、いくつかご意見を伺ってみます。

「貧困」って言葉の意味すら知らない変な人たちがコメントしてきたので返答します
長谷川豊(MC・キャスター)BLOGOS

この記事では「日本で今、問題になっているのは主に相対的貧困だ」といった調子で描かれている。
「問題になっている」っていうのが、どういう意味で問題なのか、っていうのも重要なポイントだったりしますが…(苦笑)


日本の貧困は「オシャレで携帯も持っている」から見えにくい
印南敦史(書評家、ライター)Newsweek日本版

この記事に描かれている日本の貧困は、一本目の長谷川さんが「相対的貧困」と呼んで「それも良い経験」みたいに言っている状況よりは、悪いですね。事例によっては、「絶対的貧困」のイメージに近いような。(数字は出ていないので、何とも言えませんが……)
貧困をめぐる言説も(論点を整理しようとしている人の言葉においてすら)少し混乱しているように思います。

まぁ、貧困で問題なのは収入ではなく、経済的貧困とともに乏しくなる社会に対するアクセスや自尊心の方じゃないのかと思ったりするわけなのですが。
その点、例のNHKの報道に片山さつきが絡んで炎上・延焼した件は、かなりマシな「貧困」と言えるでしょう。親御さんが共感的で、友人とのつながりも維持している。温かい人間関係の中で、一定の自尊心を持って生きている感じが、漏れ聞こえる噂からも伝わってきます。(もちろん、マシだから社会的支援が必要無いとは言いません。あと、個人を特定するとか本当に非人道的だと思います…)

さて、このNHKの報道について何がどうして延焼したのか、一言で指摘した東浩紀氏のツイートを引用致します。

“@hazuma: つまりは、子どもの貧困はまちがいなく存在し、犯罪の温床にもなっているし才能が潰されたりもしていると思うけど、その定義上全世帯の16%が含まれる(2012年の日本)相対的貧困の指標だけを使って貧困をアピールすると、「?」的な事例が出てきてかえって逆効果ということではないだろうか。”

そうです。NHKが取り上げた「貧困」は「相対的貧困」で、NHKが取り上げたからこそ、いま巷で「問題になっている」のですが、もっとシビアな問題になり得る、もっと厳しい貧困の事例もある。そっちを考えている人は、NHKの例の報道を見て「何が貧困だ!」とキレる。でも、それも「相対的貧困」ではあるし、比較的マシなケースだからって「甘えだろ」「ヤラセだろ」という反応は間違っているでしょう。教育機会は経済力によらず、本人の適性のみに基づいて提供されるのが理想だと思います。件の高校生が「相対的貧困」の定義に当てはまっているなら、報道内容としても誤っているとかヤラセだとかは言えない。ついでに言うと、社会の一側面を報道するために顔を出して取材に応じた人に罪は無い。自分の財布と相談しながら好きな漫画と趣味のための画材を集めるのも、何ら差し支えない。昼飯なんて好きなもの食えばいい。そこに社会保障費が流れすぎていると感じるなら、個人を叩くんじゃなくて生活保護の支給内容を再検討すれば良い。(私は生活保護の切り詰めには反対ですが)


なお、こんなデータ豊富な記事もあります。

最近ネットで貧困という文字がやたら目につくけど、そんなに酷いの? 日本の現状って?
広瀬隆雄(投資顧問会社で活躍中)BLOGOS

この記事を見ると「やっぱり日本ってヤバいんだ! 政府はもっと福祉を拡充しろ!!」と言いそうになりますが、よく読むとこの記事で引用されているデータが言っていることは

「相対的貧困層が増えています」
……それは、日本の相対的貧困が「大したことない」のであれば、さほど問題じゃないですね。つまり日本の平均が世界的に見てかなりハイレベルなら(先進国内で見てしまうと悪く見えるでしょうけど……)そのハイレベルと比べての貧困なら、問題じゃない、と。
もちろん、「日本の相対的貧困は、やっぱり大問題だ!」という事なら、そりゃ大変だ、という事になります。

「家族に対する公的扶助が米独仏と比べて少ないです」
……イギリスと比べれば日本の方がいいです。OECD平均を下回っている件も、豊かな国の中での比較だと思えば、「負けたのは悔しいけど世界平均と比べれば……」と言えなくもないかもしれない。アメリカに負けているとは驚きだが。むしろいつの間に頑張ったんだアメリカ。
少子高齢化対策で育児支援を拡充するのは、基本的にやった方がいいとは思いますが。

「可処分所得の伸び率が低いです」
……伸び率と絶対値は別問題。元の可処分所得が多ければ、伸び率が低くて他国に引き離されているとしても、まだしばらくは食いつなげるかもしれない。
もっとも、日本人の労働者の収入がOECDの中で比較的低いという話も聞いたので、そこに可処分所得の伸び率が低い事まで重なっている現状はかなりお寒い事は間違いない。

結局、日本は発展途上国ではないが、先進国としてはお寒い状況で、貧困と言っても内戦が続く地域の難民キャンプのような貧困ではないが(当たり前だ)それでも状況次第では、社会に対するアクセスや自尊心の問題も含めると座視できない問題があるし、そこまで深刻でない事例も、深刻度が浅いから問題ではない、とは言えないよね、といったところですか。

ちなみにNAVERまとめですけど、日本人の給与は少ないよという話のソース。。。

日本人の給料事情が、いつの間にか悲惨なことに。。
bianka-xoxさん NAVERまとめ