ごあいさつ
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その言葉に堪えきれなく
なったヒトミさんが涙を零しました。
私も言葉に詰まってしまい、
なんと返したら良いのか
わかりませんでしたが、
取り敢えずポケットティッシュを
差し出しました。
ヒトミ夫
「下の子は……普通だと
思っていたんです。
上の子とは全然違うし、
私達の言うことも理解出来る。
でも上の子の時に良かった
からと、この園に入れました。
もしかしたら何らかの
予感があったのかもしれない。
年少の中頃に担任の先生から
下の子の様子を見ていて
引っかかる部分があると
言われて検査を受けました。
下の子も自閉症スペクトラム
だと診断されました。
ただ下の子は症状が軽い
こともあって、幼稚園生活には
それなりに対応できています。
上の子は普通の小学校に
入学は叶いませんでしたが、
下の子はこのまま幼稚園で
基本的な支援を受けていれば
普通の子供達と同じ様に
小学校に通うことも夢じゃ
ありません!
手前勝手な申し出だとは
わかっております!
お願いできるような
立場ではないことも!
でも私達には……
下の子にはこの園での
生活が必要なんです!」
そう言って真剣な目で
見詰めてくるヒトミ夫に、この時
私は一つ分かったことがあります。
ヒトミ夫は決して声に抑揚が
ないタイプの人ではないし、
ましてや謝罪に対して意欲が
ないわけでもありません。
ただもう心が憔悴していて
そこまでの覇気がないんだと思います。
その一員はヒトミさんでもあるんだけど( ¯ㅁ¯ )
ヒトミさんをイオンで見かけた
時にはわからない事実でした。
だってあの時見たヒトミさんも
ヒトミさんのお子さんも元気だった。
普通に笑ってたし、会話してる
ように思えたし、遠くから見た感じ
自閉症スペクトラムを抱えている
ようには見えませんでした。
そこにあったのは
どこにでもある普通の家族でした。
でもそうじゃなかった。
毎回何かある度に
「忙しい」
と口にしていたヒトミさん。
お子さんが特別支援学校に
入っているのであれば、
色々としなければならないのとも増える。
年中と言っても下の子はまだ
手がかかる時期でもあるし、
上の子だけにかまけてはいられない。
常にどこかイライラしていて
落ち着かなかったヒトミさん。
いつも何かに怒っていたヒトミさん。
障害なんて親にはどうしてあげることも
できない問題とか、変わってあげたくても
変わってあげられない苦しみとか、
何も出来ないもどかしさとか。
どこかにぶつけたかったのだろうか。
その先がたまたまいた私だったのか。
イジメられたことは到底納得できる
ようなものじゃないのに、
どこかヒトミさんのこれまでの
行動に納得してしまう私がいる。
ヒトミさんも……きっと色々と
苦しかったんだろうなぁ……
ただ心情を理解してしまう反面、
私にはどうしても
許せないことがありました。
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