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どうなることやら・・・









「う~む・・・これはなかなかのグッドスタートだね」



妻の作ったリストを覗き込みながら、監督がそう言った。



監督と言うのは、地元の野球アカデミーの責任者であり、シニアチーム(高校2~3年生)の監督であり、メジャーリーグのスカウトもこなすC監督の事だ。



今年5月のトライアウトで次男がBC州の選抜チームに入れてもらい、その後アメリカに行くようになってからというもの、実は我が家にはアメリカの大学からのお誘いがひっきりなしに来るようになったのだ・・・・・いや、ほんとにこれがも~驚くほどの数の連絡が来る。


だが、悲しい事に僕達にはそれをどう対処すれば良いのか、その判断基準が分らないでいた・・・




これが地元の大学に進むとか、長男のようにアートが得意だからその方向に進みたいとか・・・こういう進路なら学校の先生にも質問しやすいし、ご近所にその大学出身の人がいたりしていろいろ話を聞く事も出来るのだろうが、カナダの田舎町に住んでいてアメリカの大学野球に詳しい人をどうやって探し出せば良いのか?


じゃんじゃん来る連絡の大半はメールで来るのだが、そこに書かれた住所がAZとかCAとかなら、「あっアリゾナの大学だな」とか「おっ、今度はカリフォルニアからも誘いが来たぞ」なんて直ぐに分かるのだが、これがRIとかMDとかになると、もう僕にはそれがどこの州からの誘いなのかも分からないでお手上げなのだ。
(RIはロードアイランド州、MDはメリーランド州でした・・・後からちゃんと調べました、苦笑)


実は・・・
10月上旬、妻と次男がアリゾナのスカウトキャンプに行った話をブログに書いてからというもの、友人知人からも「その後どうなったの?」「何か進展あったの?」と、皆に聞かれるので、「こりゃ、何か続きを書かなきゃ、このまま知らんぷりはダメなんだろうな~」とずっと思いつつも、僕自身本当に何をどう書けばよいのやら・・・・別に何かが決まった訳でもなく、この先どう進むのかもさっぱり分からない。



監督が言うには・・・


アメリカの大学野球には、D1リーグと呼ばれる最上位のリーグから順にD2、D3とランク分けされ、さらにその他にも多くのローカルのリーグが存在するらしい。そして、本気で上を目指したい選手はプロのスカウトが絶えずチェックに来るD1かD2のリーグでプレーする事が望ましいのだそうだ。


「いいかい・・・スカウトキャンプ等に参加して、一度目を付けられた選手の家には次々に誘いのメールが来るようになるからね・・・・でも、しばらくはそのまま放っておけばいいから」


・・・と監督は言うのだが、僕達にはその「しばらく」が分からない!


元々僕は、今の時点で我が家の次男にそんなに飛び抜けた才能があるとは思っていない。だから「最初のメールが最後のメールになるんじゃないのか?」、「気が付いた時には1通もメール来なくなってるんじゃないのか?」と、期待と不安が入り混じって落ち着かない。



ただ・・・



そうこう言っている間にも、本当に毎日のように電話やメールがじゃんじゃんやって来て、気が付けばD1だけで既に十数校、これにD2やカレッジ、そしてプロ養成(?)の野球アカデミーや、更には選手を全米に売り込むエージェント等(?)からもかなりの数の連絡が来て・・・・


も~やめた!も~う無理!もう分らん!!・・・と、ついにギブアップ。



僕達だけで悩んでいても埒があかないので、妻がそれらを一覧表にまとめ、監督の所に相談に行ってきました。



「おぉ~これはなかなかのグッドスタートじゃないか!」と、少し意外な驚きといった感じの監督。


そして、そのリストにまじまじと見つめると、突然ペンを取り出してチェックマークを入れ始めた。

「え~っと・・・ここと、ここと、ここと・・・おっ、ここも良い大学だぞ・・・ほ~っ、ここは凄いぞ全米トップ10に入るチームだ」等といろいろな情報を教えてもらったのですが、それでも・・・



「大丈夫、大丈夫・・・焦る必要は無いから。この調子ならまだまだ連絡が来るから、じっくり落ち着いて決めれば良いから」と、笑うだけ。



そうは言われても、僕らのような小市民は落ち着きません(苦笑)。


そもそも今年は長男が高校三年生で進路について大変な年なのに、どうして高校入ったばかりの次男の大学の話で悩まなけりゃいかんのだ!!!…と言う事で、もう僕は頭を切り替えました・・・



「おっ、ここの大学ならロサンゼルスのディズニーランドまで直ぐ近くだぞ・・・」とか
「今日メールが来たのはハワイの大学だよ・・・」とか
「やっぱりフロリダは捨てがたいな~・・・」とか(笑)




…と言う事で、我が家の選考基準は「娘と嫁が楽しめるリゾート地の近くに在る大学に決定!!!」(大笑)。


多くの方から応援やご質問のメール等頂くのですが、そんな訳で・・・まだな~んにも決まってません。


・・・って言うか

その前にもっともっと勉強頑張らないと何処にも行けない気がするのですが・・・(泣)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、まだそこに?

 


「いいか、お前がちゃんとお母さんを守るんだぞ・・・」
「・・・・・」

小さなモニターの中で不安そうな表情を浮かべる次男に、僕は出来るだけ静かな口調で話し続けた・・・


「絶対にイライラするなよ・・・嫌な事があっても、絶対にお母さんを急かせたり、焦らせたりするな」
「・・・・・」

小さなモニターの中には落ち着き無くキョロキョロ周りを見回す次男と、必死で交渉を続ける妻がいた。


「いいか、お前がブレーキになってお母さんを落ち着かせろ・・・いいな?・・・出来るな?!」
「・・・・・うん・・・・がんばる」




少し前のブログに書きましたが、現在妻と次男は野球のスカウト・キャンプに参加する為、アリゾナに行っている。


その次男から突然が電話がかかって来たのは10月9日月曜日、サンクスギビングデーのお昼前、二人を空港まで迎えに行く為、そろそろ家を出ようかと準備をしていた正にその時だった・・・


「とっ、父さん・・・」
「えっ・・・なっ、なんで?・・・今、飛行中の時間だろ?」

「いいから・・・直ぐにフェイスタイムをつないで、はやく!」


次男がそれだけ言うと電話は直ぐに切れてしまった。



(ご存知だとは思いますが)フェイスタイムと言うのはアップル社のiphone同士で繋ぐテレビ電話のような物。僕の持っているサムスンのスマホでは繋がらないので、急いで長男のiphoneから次男へとフェイスタイムを繋げると・・・

 

 

いきなり空港のチェックインカウンターからの生中継が始まった。


「無理です、何度言ってももう手遅れです・・・出発の1時間前には全てロックがかかって操作出来なくなります」
「違うんです、だから1時間以上前から操作はしてたのに、マシンのトラブルで待たされて、カウンターに並びなおして・・・」


「・・・無理です!」



「はぁ~」という溜め息と共に目線を下げた妻がフェイスタイムに気付き、泣き出しそうな顔で・・・


「どうしよう・・・乗り遅れた~・・・」と、言った。




滞在していたホテルから空港までは車でおおよそ30分の距離。
だがこれをバスを乗り継いで行くと2時間はかかるらしい。
タクシーを呼べば良いのだが片道で100ドル以上。

「高いな~」と話していたら、同じくカナダからキャンプに参加していた家族が「レンタカーだから一緒に空港まで乗せてあげる」と言ってくれたらしい。
これはラッキーと大喜びしたのだが、世の中そんなに甘くはない。


・・・これが落とし穴だった



旅行の時、いつも時間に余裕を持って早め早めに動く人と、いつもギリギリで間一髪で動く人がいるが・・・どうやらその家族は後者だったのだ。

その人達でさえギリギリなのに、妻達の乗る便はその人達より更に20分前に出発する。

大急ぎでチェックインカウンターへ走り、自分たちで操作するセルフ・チェックのマシンへ辿り着いたが・・・ここに二つ目の落とし穴が待っていた。

マシンがフリーズして動かない、係の人も手伝ってくれるが結局「カウンターへ行ってください」と言われて並びなおしている間に出発まで1時間を切ってしまった。

こうなると、もう一切取り扱ってくれない。
「預入れ荷物の関係上、1時間前にはチェックイン用のコンピューターを全てロックしてしまう」の一点張り。


仕方なく、別便への変更を聞くと・・・


「一人250ドルほどの追加で変更は出来ますが・・・あいにく3日後の木曜まで空席はありませんね」
「みっ、3日も?・・・」

そう、ここにもう一つの落とし穴が待っていた。

アリゾナは今、秋休み!!(初めて知ったが、秋にも長期休暇週間があるらしい)。飛行機はどこも一杯で空席はほとんどないらしい。


なんとかならないか別会社のチケット等も調べたが、買いなおすと一人片道800ドルくらい、しかもこれはアメリカ・ドルだからカナダ・ドルになおすと一人で片道1000ドル以上にもなってしまう。

延泊のホテル代に食費、そして一人1000ドルの追加出費は痛すぎる。
興奮状態の妻は・・・


「レンタカー借りて、自分で運転して帰る」と言い出す。
「ちょっ、ちょっと待て、落ち着け・・・そこから最短でも約2500キロ、一人で走ってたら帰って来るのは結局木曜だぞ」

「じゃあ大陸横断バスに乗る」
「いや、だから長距離バス乗り継いで帰って来たら、更に時間かかるってば」

「カナダ行きが無いなら、ワシントン州のシアトルとかべリングハム行きにする・・・それかLAまで車で行って、そこからカナダへ・・・」
「だからちょっと待て・・・いいから、落ち着け!~・・・・」



結局その後もすったもんだがあった後、なんとか明日の朝一番のサンフランシスコ行きを見つけた。そこから乗り換えでのバンクーバー行きなら便数も多い、これでなんとか明日中に帰って来られる。

この辺りが、数十年前と現代の大きな違いである。

僕がカナダの自宅に居ながらにして、パソコンでチケットを探し、直ぐにネットで購入、そのe-ticketを直ぐにアリゾナの妻のスマホに転送し、空港カウンターで見せて前日チェックインをする。

こんな事は、僕達が若くて撮影旅行しながら北米を回っていた時には想像も出来ない事だった。




夕方、ようやく落ち着いて笑顔の戻った妻と再びフェイスタイムが繋がった・・・


「ここね、24時間稼働の国際空港だから、空港で泊ってもいいんだって」
・・・嬉しそうに妻が言った

「でも、疲れないように、近くのモーテルかどこかでシャワー浴びて仮眠取った方が良いよ」
「う~ん、でもね・・・飛行機が早朝だから、朝の3時頃に空港へ戻って来ないといけないのよ。その時間にシャトルバスがちゃんと時間通り動いてるか信用できないし・・・」


ここで僕は次男に変わってもらった

「いいか、お前がお母さんを守るんだぞ・・・絶対にイライラするなよ・・・嫌な事があっても、カナダに戻るまで貯めとけよ・・・イライラして絶対にお母さんを急かせたり、焦らせたりするな」

心配する僕にむかって妻が言った・・・

「大丈夫、大丈夫・・・もう、空港のどこに長イスがあるかも調べてあるし、フリーの新聞紙も見つけたから、寒かったらそれかぶって眠れるし、全然大丈夫」

「君の、大丈夫が一番心配なの!!!」



僕は20代の頃、車、バス、飛行機を駆使し、妻と二人で北米中を撮影して回っていた。

田舎町では乗り継ぎがうまくいかない事や、一本バスが出てしまうと次のバスまで2日待ちなんて事も何度もあり、僕達は最低限の所持品でどこででも生きて行く術を身に着けた。

飛行機に荷物を預けた後にトラブルが発生して、そのまま何も持たない状態で空港ロビーで寝るなんて事も何度も経験している。新聞紙がとっても暖かい事もよーく知っている。


あれから数十年・・・時代は変わり、ITを駆使して情報を手に入れたり、予約をしたりする事は可能になった。

でも、旅にトラブルは付き物だ。

旅先で本当に強い人というのは、ITで直ぐに予約が出来る人よりも、きっと即断で「新聞紙かぶって寝る」と言える人なんだろうな~と思う。


・・・って言うか、空港には時間の余裕を持って行こうよ、次からは・・・ねっ、頼むから(泣)。






 

ゆきちゃんへ・・・

 


「あんた一人で大変やな~・・・お弁当作りに行ってあげようかって、今二人で話してたんよ・・・」
 
昨日僕が書いたブログを見て、千葉に住む姉と母が電話をかけて来た。
 

「チケット送ってくれたら直ぐに行ったげるよ(笑)」
「えっ?・・・おっ、俺が送るんか?!」

「そう、あんたが送ってきてくれたら、直ぐにお弁当作りに行ったげる」
「いらんわい!・・・弁当自分で作る!(笑)」

「遠慮せんでも姉と母の分、二枚でええよ~!」
「遠慮なんかしてへんわい・・・絶対来なくていい!!(笑)

・・・と言うような会話を昨夜してる時には気付かなかったのですが、今朝弁当を作ろうとしたら冷蔵庫に一枚の手紙が張り付けてあるのを見つけました。
 
 
《ゆきちゃんへ…》って宛名に書いてあるから僕への手紙かと思ったら
《ゆきひろ》ではなく《ゆきこ》でした(苦笑)
 
昨日旅立った妻(あっ、死んだわけじゃなく、次男の野球でアメリカに行っただけね…笑)に宛てた娘からの手紙でした。
(アメリカ行き、詳しく知りたい人は、昨日のブログをお読みください)
 
 
手紙が冷蔵庫に貼ってあると言う事は、秘密の内容という訳ではなさそうだし、読んでみると・・・
 
ふむ、ふむ・・・なに、なに・・・
 
 
以下、原文そのまま
 
・・・・・・・・

「ゆきちゃんがいないあいだは
えみかがちびママするからあんしんしてて
 
ちゃんとやすまないとだめだよ
 
ふぇーすたいむしようね
 
えみかは じぶんのらんちをつくる!つくる!
あしたはなにがいいかな~
 
こんどからひとりでつくってもいいけど~!
スキだったらじぶんのつくってもいいでしょ
 
じゃ、たのしんでね~
 
おみあげは ひこうきいったいでいいから!
 
じゃ~よろしくりん!
 
バーイ大スキ」

・・・・・
 
娘はカナダの田舎町で生まれ育ってるので、日本語のレベルはちょっと横に置いといて・・・

良いな~・・・この手紙!
 
娘よ・・・手紙の宛名の部分が、こっそりと「ゆきちゃん」から「ゆきひろ」に書き換えられてても父を恨むでないぞ!・・・恨むのなら野球でいつも忙しい兄を恨みなさい(笑)。
 

・・・と言うのは冗談ですが、僕は次男がアリゾナから帰って来たらこの手紙を見せてやろうと思いました。

野球をやっているのはもちろん次男本人ですし、その為にいろいろ努力してるのも知っています。でも自分のやりたい事、やりたい夢にむかって頑張るのは努力などとは言いません。
 
自分が必死で野球に打ち込む、それを付き添ってくれたお母さん・・・
 
ここまでは本人も分かっているでしょうが、そのお母さんが安心して家を空けれるように気遣ってくれた妹や、(無理に来なくて良いけど)千葉のおばさんやおばあちゃん、フェイスブックに沢山の応援メッセージを書き込んでくれた多くの人達・・・
 
そんな多くの人の理解と協力があって、今自分は思い切り野球が出来るんだ、やらせてもらえてるんだと言う事を感謝できるようになれば、きっとその時はもう1ランク上を目指せるようになると思うのです。
 
例えば腕立てが100回しか出来なかったら、そういう人達の事を思い出せば、きっとあと一回、101回目に挑戦しようとするエネルギーになるはずです。
 
簡単に諦めたりなんか出来ないはずです。
 

たとえ野球だけが上手くても何の意味もありません
周りの人達に感謝する気持ちを忘れない
そんな優しさの持てる子になって欲しい
 
 

ふ~っ・・・野球の練習よりも、人としての修行がまだまだ足りんね、次男君!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

アリゾナ

 

 


「君は・・・日本のプロ野球チームのどこが好きだい?」
 
 
突然そう聞かれて、次男は驚いた。

なぜならここはカナダ、質問されたのは当然英語、そして声をかけて来た男はどう見ても日本人ではない白人男性。
 
答えに戸惑っている次男を見て、男はさらに続けた・・・

「まさかキミ・・・阪神ファンじゃないよね?、タイガースのファンなら僕は怒るよ!」
 
 
そう言って人懐っこそうな笑顔を見せたこの男、名前がD・マシソン。
 

「マシソン?・・・」
 
マシソン?、マシソン?・・・どこかで聞いたような名前だな~と思っていたら、実はこの男性、東京読売ジャイアンツで大活躍している剛速球投手スコット・マシソンのお父さん!

そして、なんとカナダ&アラスカ地区を担当している現役のメジャーリーグのスカウトさんだった。
 
 

このマシソン父ちゃんと初めて会ったのは今年の5月、次男がBC選抜チームのトライアウトを受けに行った日の事だ。
 
キャッチャー希望の次男が、POPテスト(キャッチャーがボールを捕球してからセカンドへ送球するタイムを計るテスト)にトライした後、そのタイムを見てからずーっと後ろを付いて来て声をかけてきたのだ。
 
 
「君は10月にアリゾナに来る気はないかい?」
「えっ、アリゾナ?・・・」

「スカウトが勢揃いするキャンプがアリゾナであるんだが、来る気はないかい?」
「あっ、あります、あります・・・行きたいです!」
「そうかい、じゃあ親御さんにメールするからね」
 
・・・と言うような会話が次男との間にあったらしい。
 
 
実際、その後にキャンプへの参加招待のメール等もあり、何度かやりとりをし、本当なら大喜びで送り出してあげたいところなのだが・・・

9月から新年度が始まったばかりだというのに、また学校の勉強を何日も休まなければいけない事。
各地から選手が集まる為、自費で現地集合・現地解散になる事。
・・・となれば、僕か妻のどちらか一方が、また何日も仕事を休んでアメリカまで一緒に行かなければいけなくなる事。
当然、飛行機代と宿泊代、食費、そしてスカウトキャンプへの参加費用等々、またもやドカっと出費がかさんでしまう事。
 
その上、もし今回のトライアウトにも合格すれば8月のアメリカ遠征も待っているというのに、更に10月のアリゾナキャンプなんて・・・
 
今年に入って次男を取り巻く環境が猛スピードで変わっていく中、僕達は答えが出せないまま時間が過ぎて行った。
 
 
 

マシソン父ちゃんとの再会はそれから数カ月後の事だった。

トライアウトで選ばれた最終候補者達のミニキャンプが7月に行われ、その後、次男は無事BC代表となって8月にアメリカで行われたスカウト・トーナメントに参加した。この時のカナダチームの監督兼最高責任者がまたマシソン父ちゃんだったのだ。
 
 
 
トーナメントそのものはアメリカ勢の圧倒的迫力にカナダチームは握り潰されてしまったのだが、そんな事よりも大きな収穫は、ここには普段は接触する機会の無い野球関係者と直接話せるチャンスがゴロゴロ転がっていた事だった。
 
 
 
そして全日程終了後、監督・コーチに挨拶に行くと、こう声をかけられた・・・
 

「YOSUKEはもうアリゾナ行きを決めてくれましたか?」
「えっ・・・いやっ、実は・・・」
 
 
実は、費用や時間、様々な条件も考えて「来年また選んでもらえるように今から一年頑張って、グレード11(日本の高校2年生)になってからでも遅くないんじゃないか?」と、我が家では今年は不参加の方向でほぼ話は決まっていた。
 
 
 
だが、僕達の返事がはっきりしないのを見て、コーチがこう話し始めた・・・

「アリゾナでは一年を通して様々なキャンプが行われてますが・・・今回のキャンプは、実際にメジャーリーガが春のキャンプに使用しているグラウンドや施設をそのまま使える最高の環境で行われます・・・しかも北米全土から招待されたトップレベルの子達だけが集まり、大学やメジャーのスカウトが勢揃いするので、行けばきっと新しいチャンスが広がりますよ」

それはその通りだと思う、そんな事は言われなくても分かっている・・・
この先チャンスは何度も無いかも知れない事も十分理解している。
 
行けば新しい世界が広がるかもしれない・・・でも、大金持ちのお坊ちゃまではない我が家の場合、そこには家庭の事情ってものがあるんだよ、分かるかねマシソン君!
 

僕が思わずそう叫びそうになった時、横から先に妻がこう言った・・・
 
「何人くらいの選手がカナダから参加するのですか?」
 
いやいや、どうせ断るんだから、人数聞いても関係ないだろ・・・と僕は思ったが・・・

「う~む、まだ正確な人数は決まってないけど、参加してる州がそれぞれに作る州代表のチームと、それとは別に多数の州が合同で作るチーム・カナダもあるからね」
 

えぇっ!!・・・チッ・・チーム・カナダ!?

僕は思わずここでグラッと来た。

暑さや疲れのせいではなく、それはずーっと憧れていた言葉を聞いたから・・・
 
《チーム・カナダ》
 
もちろんそれは多州連合チームに入れてもらえたらの話だが、それでももしかしたらCANADAの文字の入ったユニフォームが着れるかもしれないなんて・・・
 
 
元々、次男は都会の強豪チームから野球を始めたわけではない。お父さんが監督をするような田舎町の小さなチームのシングルAレベルから野球を始め、町の代表チームに選ばれただけでも大喜びし、州大会に出ただけでも大はしゃぎしていた。それがいつの間にやらチームBCのユニフォームを着せてもらって、今度はカナダの文字が入ったユニフォームが着れるかもしれないなんて、それはあまりにも魅力的過ぎる!!
 
・・・と、子供ではなく僕の方が興奮して、思わずその場で「はい、参加します」・・・と言いそうになるのを妻が遮り、また聞いた。
 
 
「陽介は誕生日が遅いのでまだ14歳です、年上の高校生達と一緒に参加するには早いんじゃないでしょうか?」
 
だが、これは他の親からも良く聞かれる質問なんだろうか?一人のコーチが直ぐに答え始めた。
 
「彼はこの9月にグレード10(日本の高一)になります、ここが一番大事な一年なんですよ」
「G10が?・・・」
 
「そうG10です。…スカウトが選手をリストアップし、調査を開始するのはG10です。G11は確認作業と最終判断。・・・良い選手だと判断した場合はG12のシーズンが始まる前に、交渉にはいります。G10で参加する事に早すぎるなんて事はありませんよ!」
 
ひぇ~…そうなんだ~、グレード10で動き始めなきゃ手遅れじゃん!…と、僕はまた「では、参加!お願いします」と言いかけたが、またまた妻が・・・
 
 
「でも、他のカナダの子に比べて陽介は体が一回りも小さいですが、大丈夫でしょうか?・・・」
 
真顔で聞く妻に対し、今度はマシソン父ちゃんが嬉しそうに笑いながらこう答えた。
 
「彼はとても良いキャッチャーだよ・・・カナダには怠け者の子が多いが、彼は野球に対してとても真面目でクレバーだ、それに攻撃的で俊敏性もありブロッキングも上手い、そのうえあの年齢で既に強い肩も持っている・・・他のポジションなら6フィート(約180センチ)は絶対条件だけど、キャッチャーなら小さくても気にしなくていいよ」
 
ここで僕はまたもやグラッと来た。

カナディアンの圧倒的なパワーと身体のサイズの差は、小柄な次男にとって絶対的なハンデとして今までずーっと見えない敵となって戦ってきた相手だ。その見えない敵から、現役のプロスカウトマンが「キャッチャーはサイズを気にしなくても良い」という一言で一気に解き放ってくれた気がした。
心の中でしっかりと閉まったままだった扉を開けてくれた気がした。

僕は嬉しくなって今度こそ「はいっ、参加します」・・・と、言いそうになったが、またしても妻が・・・
 
「実はキャッチャーだけでなく、ショートも大好きらしいのですが、何歳くらいまでに他の選手はポジションを一つに絞って行くのですか?」・・・と聞いた。
 
「う~むショートか~・・・」
 
ここでマシソン父ちゃんは今までとは違う明らかに困った表情をほんの一瞬見せた。
 
「このトーナメント期間、僕はずっと試合を見て来て彼が優秀なショート・ストップであると言う事は知っている。動きも速い、肩も強い、攻撃的にどんどん走り込む、おそらく同年代のショートの中でもトップクラスだろう・・・」
 
次男をショートとしても認め、褒めてくれてはいるが、表情からは笑みが消えていた。

「僕はYOSUKE以外にも日本から来た野球少年を沢山知っている。彼等は本当に守備が上手い、知識も技術もある。こちらの少年野球にくれば直ぐにレギュラーになれる」
 
ここでマシソン父ちゃんは一度話を切って僕達を見つめ、少し厳しい口調でこう続けた・・・
 
「でもね・・・通用するのは中学か・・・高校生くらいまでなんだ」
「高校生まで?」

「これから彼らが戦う相手は日本人じゃない。ドミニカやプエルトリコのような中南米の選手達もいる。彼らは6フィート以上の身体を持ち、バズーカのような肩を持ち、強靭で俊敏な身体能力を持っている。申し訳ないがこれから先さらに上のレベルへ上がった時、アジア人が彼らを押しのけてショートのレギュラーを取るのは・・・残念ながら、とても難しいだろうね」
 
少し遠慮気味に、しかしはっきりとした口調で、ショートとしての死刑宣告を受けた気がした。
 
でも僕はここでまたグラッと来た・・・いやっ、今回はゾクゾクっとした。
 
《ドミニカやプエルトリコのような身体能力のずば抜けた中南米の選手》
 
僕達はこれまで、そんな事を想定しながら練習した事など一度も無かった。
そんな選手は野球漫画の中でしか出会わない相手だと思っていた。
でも、実際に今次男はそんな名前を耳にする位置に来たんだと思うと、僕はもうゾクゾクが止まらなくなってきた。
 
僕はそのままの勢いで「わかりました、そんな凄い選手を自分の眼で見るチャンスなら、是非参加させてください!」・・・と言おうとしたのに、今度はコーチの一人が遮って話始めた。
 
 
「でもね、キャッチャーとしては別だよ」
「キャッチャーとしては・・・別?」
 
「ここに参加する子達の多くはPOPタイムが2.2~2.3秒台だ、これが2.1秒台ならかなり速い、もし2.0秒台ならメジャーのスカウトが必ずリストアップするし、試合を見に来てくれる可能性もある」
 
「でもYOSUKEは・・・・1.9秒台だ」
「1.9秒台?・・・」
 
「そう、1.9・・・このタイムの意味が分かるかい?・・・これは、今回トライアウトを受けた中で一番の速さなんだよ。彼はアリゾナに行くときっと世界が広がるし、きっとチャンスが広がる・・・彼は行くべきだと思うよ」

嬉しかった・・・
 
ゾクゾクがワクワクに変わって来た。
 
僕が撮ったビデオを自分で分析してタイムを計った時も確かに1.9秒台だったけど、それはあくまでも素人計測しただけで本当は自信がなかったのだ。でも今、プロのコーチ達がはっきり数字で可能性を告げてくれると、僕は思わず嬉しくて顔がニヤけて来た。
 
今度こそ「アリゾナ参加します!」・・・と言おうとしてるのに、今度はマシソン父ちゃんがまた邪魔をした(笑)。
 
 
「いいかい、なぜこういう大きなスカウトキャンプに参加する意味があるか分かるかい?」
「意味?」
 
「今、YOSUKEは全くのノーマークだ。彼のキャッチングが優秀な事を知ってるのは我々カナダチームだけ。もちろん彼を目当てに試合を見に来るスカウトもいないだろう・・・でもね」
「でも・・・・?」
 
「例えば90マイルの速球を投げる投手がいたとしたら、スカウトは間違いなくリストアップしてるし、試合をチェックしにきてる可能性も高い。そこでもしその90マイルの速球をフェンスまでかっ飛ばす無名の少年がいたらどうなると思う?」
「どっ、どうって・・・?」
 
「誰だ、誰だ?・・・今のフェンスまでかっ飛ばした奴は誰だ?ってスカウト達は資料ひっくり返して大慌てでその無名の少年のデータを探し始めるんだ・・・どうだい、楽しいと思わないかい」
 
確かにその通りだ、もしその無名の少年が自分の知っている子だったら、いやっ自分の息子だったら・・・野球のアニメやドラマで劇的なストーリーを見るよりもよっぽどスリリングで、ドキドキワクワク楽しいに違いない。
 
 
コーチが再び聞いた・・・
 
「アリゾナ行き・・・きっとプラスになると思いますよ」
 
僕と妻の眼が合い
「はい、陽介も参加しますので、よろしくお願いします」・・・やっと言えた(笑)。
 
 
 
そんな訳で、妻と次男は今朝からまたアメリカです。

次男はなんとこの2カ月の間に4度目のアメリカ旅行です。

結局、出発の10日ほど前に発表されたチーム編成で、次男はチーム・カナダに入れる事になりました。
 
周りの人からは「将来が楽しみね」とか、いろいろ言ってくれる人もいます・・・・ですが、とんでもないです、《今の時点で》彼が将来プロの選手になれるなんて僕はまだひとかけらも思っていません、ひとかけらも!
 
そんなに簡単に入れる世界じゃありません。
 
それがどれほど難しく、どれほど低い確率でしか入る事の出来ない世界なのか・・・やっている本人ですら全く自覚してない状態です(苦笑)。

今はただ監督やコーチが言ってくれたように、どんどん外の世界に目を向け、自分自身で可能性を広げていって欲しい・・・ただそれだけです。
 
 
期待はしません。
結果を気にする必要もありません。
 

ただし・・・・やる以上は全力で頑張って欲しい。
 
 
プレッシャーを与え過ぎてはいけないのかもしれません・・・でも、僕は彼にはあえてプレッシャーを感じながらやって欲しいと思います。「ただノビノビ楽しくやればそれで良い」・・・もうそんな位置にいない事をしっかり本人が意識して、周りからの期待を感じ、協力してくれてる人達への感謝を忘れず、そのプレッシャーの中で思い切りもがき苦しみながら必死になって欲しい。後で中途半端な悔いが残らないように、元気に楽しく思い切り挑戦して欲しい。
 
 
そして、もし本当に少しでもその先にチャンスが広がっているのなら・・・
 
もし本当に本人に本気でやる意思があるのなら・・・
 

その時は、僕も可能な限りのサポートはしてあげたい・・・
 
 
出発ゲートへと向かう二人の後姿を見ながら、そんな事を考えていた今日・・・10月4日、早朝のバンクーバー国際空港でした。
 
 
・・・・って、どうなるかも分からない遠い未来の野球の話してる場合じゃねーんだよ!
うちにはもう一人息子と娘がいるので、明日からは6時の弁当作りに始まり、昼間に写真の仕事して、夜中も別の仕事が詰まってるので感慨にふけってるような暇はありません!!
さあ、今日から1週間父子家庭がんばるぞ~・・・オーッ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

英会話家庭教師

 
「真面目にやる気がないなら、もう教えませんよ!」
 
親子で勉強なんか始めると、途中で子供の集中力が切れてきて、最後にはだいたいこんな言葉が飛び出して親が怒り出すのが普通ですが・・・我が家の場合、上の言葉を発したのは娘の方、そして怒られてるのがお父さんなのでした…(涙)
 

お兄ちゃん達は新聞配達をしたり、グローブの修理をしたりして外貨(我が家の場合は、親以外からの外の世界から稼いだ金の意味)を稼いでますが、小学生だった娘は、新聞配達をしている兄を手伝ってわずかな賃金をもらう、言わば下請け業者の立場。9月から中学生になってお洒落も楽しみたいのに、これではお金が足りません。
 
そこで僕が軽い気持ちで提案したのです・・・
 
「じゃあエミカもアルバイトするか?」

「えっ、アルバイト?やる、やる、絶対やる!!」
・・・と、何をするかも聞かないうちに即答が返ってきました。
 

我が家には子供が三人いますが、三人三様でそれぞれが全く違う一面を持っているので実にに面白いのです。
 
まず一番上の長男は、絵を描いたり、コツコツと細かい創作活動をしたりするのが好きな、どちらかと言えば芸術系。
 
二番目の次男は、脳みそまで筋肉で出来てるんじゃないかと思う超体育会系。
 
そして一番下の娘は、本が好き、おしゃべりが好き・・・ですが、おとなしい文学少女とはかけ離れていて、イベントの司会をしたり、いろなんボランティア活動をしたり、小学校にあった全ての運動部に参加したりと、文系+体育会系+社交性と盛り沢山。
 
そんな彼女には、きっとこのアルバイトはバッチリだと思ったのです!
 
 
「英語の先生してみないか?」
「英語の先生?」
 
「そう、エミカは英語話すの上手だし、ボランティアで小さな子にいろいろ教えてあげるのも得意だったから、英語教師できるんじゃないかな・・・お父さんに」

「お父さんが生徒?・・・やりたーい!」
「じゃあ、今日からエミカがお父さんの専属家庭教師!」
「家庭教師!!分かった~!!!」

・・・という訳で、何やら大張り切りで準備が始まりました。
 
 
 
その後、僕は次男を連れて近所のスポーツパークへ一汗かきに出かけたのですが、ほんの1~2時間のつもりが気が付けば3時間半も特打ちで、一汗どころかびっしょり汗かいて家に戻ると、そこには既に立派な英語教室が!!!
 
 
 
 
娘の首にはちゃんと教師用のIDカードがさげられ、レッスン用のカリキュラムもプリントされ、英語教室のルールが書かれた契約書まで、全て手作りで出来上がっていました。
 
「すごっ・・・これ全部エミカが作ったの?」
「そうです!・・・まず全ての書類お読みください。その後にレッスンのご予約をお願いいたします」
 
「はっ、話し方まで別人になり切るわけね・・・(笑)」
 
という訳で、娘と二人、和気あいあいと英語教室が始まりました~・・・
 
 

・・・と、なるはずだったのですが
 

「違います!!・・・下手過ぎます!!・・・何度言えばわかるんですか、THの発音は舌を歯の間に挟んでこうっ!・・・あなたのVERYの発音はBERRYと混ざってます・・・文章の途中で切らずに、もっと滑らかに一気に最後まで・・・まったく・・・真面目にやる気がないなら、もう教えませんよ!」
 
 
 
ひぇ~…怖いよ~…先生になり切ってるよ~…父ちゃん30歳過ぎてからカナダに来たからカタカナ発音抜けねーんだよ~・・・助けて~
 
 
 
 
 
 
 

ヘアーサロン・デビュー

 
「ジャイブ・ジャイブに行きたい」・・・と、娘が言った。
 
 
これが兄貴達なら「ウナギが食いたい」とか「寿司屋に行きて~」となるところだが、彼女は迷わずそう言った。
 
ジャイブ・ジャイブというのはノースバンクーバーにあるヘアー&メイクアップ・サロンの名前だ。
 
僕が長年カメラマンの仕事をして来たので、ここのスタッフの方とは撮影現場で何度もお仕事をご一緒させて頂き、その関係で以前、娘をモデルとして使って頂いた事がある。
 
それまでは、ずっと家でお母さんに切ってもらっていた髪の毛。
健康優良児そのままの日焼けした顔。
 
お兄ちゃん二人と全く同じように野生児として育ってきた娘が、初めて化粧をしてもらい、素敵な髪型にセットしてもらう・・・小学生だった彼女の中で、よほどその日の出来事が嬉しかったのか、「今年の誕生日にどこに行きたい?」と聞いた時、即答で返って来たのが「ジャイブ・ジャイブ」の名前だった。
 
 
 
 
 
初めて親以外に髪の毛を切られる、不思議な感覚。
ヘアーサロン・デビューの数日前から落ち着かない彼女。
 
12歳・・・
9月からミドルスクールに通い始める。
 
大人の女性と呼ぶには少し早いが・・・
女の子と呼ぶと、少しふくれる微妙な年頃。
 
ヘアーサロンのイスで、長時間じっと同じ姿勢を続けるのに「緊張して疲れた~」と笑った彼女。
 
ザクッ、ザクッと響くハサミの音がちょっと怖かったと言った彼女。
 
髪の毛洗ってマッサージされるのが「最高に気持ち良かった~」と笑った彼女。
 
ばっさり切られた髪が足元に溜まっていくのに「心が折れた」と言った彼女。
 
鏡の中で変わっていく《自分の知らない自分》をドキドキしながら見ていた彼女。
 
軽い~・・・と、頭をグルグル回す彼女。
 
ヘアーサロン・デビューの話を、夜中まで興奮して話し続けた彼女。
 
大人への階段を少しずつ上り始めた彼女。
 
 
今はまだベタベタと僕の周りにくっついて離れない彼女に、お父さんがしてあげられる事は、もうほとんどないだろう。
 
 
 
僕に出来るのは、今の彼女をただ写真に残しておいてあげる事くらいかな・・・と、思った12歳の誕生日でした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

スカウト・トーナメント

 

凄いです・・・
 
怖ろしいです・・・
 
とんでもない世界に迷い込んでしまったような気がしてきました・・・
 

春のトライアウトでBC州の代表に選ばれた次男が参加したのは、プロのスカウトが集結するワークアウト&ゲームのスカウト・トーナメント。
 
ここに参加しているのはアメリカのユタ州、ワイオミング州、オレゴン州、アイダホ州、モンタナ州、ワシントン州、そしてカナダのブリティッシュコロンビア州から選ばれた将来を有望視された選手達。
 
 
 
「選ばれて良かったな~」「良い経験になるな~」なんて言う軽いノリでやって来てしまった我が家とは違い、他の参加者達は親も子もみんな目の色が違います。
 
 
 
バックネット裏には特殊なレーダーが設置され、試合中の細かな動きの一つ一つを記録しデータ化していきます。注目選手が出る試合には何球団ものスカウトがスピードガンや資料を持って陣取り、辺りには異様な雰囲気が漂います。
 
 
 
チームの勝ち負け以上に、参加者達はいかにして自分自身のの商品価値を高めるか、いかにして良い条件で大学に引き抜かれるか、そしていかにしてメジャーのスカウトの目に留まるか・・・
 
 
 
・・・そこに笑顔はありません。
 
 
 
僕の目には、(言葉は悪いですが)これは現代版の人身売買のようにも見えてきました・・・・
 

総勢600名?(700名?)以上のプレーヤーが参加するこの巨大なイベントで、子供達を分ける表記は2018年卒業、2019年卒業、2020年卒業と高校卒業の年度。なぜならここは大学やプロに売り込むためのスカウトトーナメント。

スカウト達は少しでも早く良い選手を見つけ、他のスカウトの目に留まる前にコンタクトしようとし、参加者達は少しでも良い条件を引き出そうとする。
 
 
 
はっきり言って・・・怖いです。
 
 
 
ついこの前までは、のんびり子供達とキャッチボールを楽しんでいたのに、ここでは子供の仕草一つ一つを監視されてるようで、なんだか恐ろしいです。
 
 
でも・・・・・
 
野球観ながらこんなにワクワクしたのも久しぶりです!
 
各州のローカルチームではエースや4番バッターを務めてるような子達ばかりが集まってるのですから当たり前なのですが・・・レベルが高い!!プレーが細かい!!スピードもパワーも・・・観ててほんとに楽しいのです!!!
 
 
 
次男がプレーしているのは15Uと呼ばれる15歳以下のクラス。
・・・ですが、大学やプロが注目する投手になると、この歳でも90マイル近い速球をバンバン投げ込んできます。かなり離れた場所にまで、ボールが空気を切り裂く音がビュシューと響き渡ります。「こんな球、バッターボックスで見たら、うちの次男はオシッコちびってんじゃないか?」と心配してしまいます(苦笑)。
 
「おいっ、こんなバカでかくて怪物みたいな奴らと、お前みたいなちっこい奴が一緒に野球出来るのかよ?」と聞く僕に向かって・・・
 
「えっ?・・・ちゃんとボールも見えてるよ」ってケロッとした顔で言ってのける次男。
 
気が付けば普通にプレーして、普通に溶け込んで、普通にその場に馴染んじゃってて・・・一番ちっこいのに、なんか凄いな~って、我が子ながらちょっと感心してしまいました。
 
 
 
結局次男は5試合の内、初戦と最終戦の重要な試合でキャッチャーを任され、他の試合をショートで出場。打率.375 出塁率.444  OPS.944 盗塁阻止率.500
 
・・・14歳で参加した次男には出来過ぎの結果です。
 
 
 
そう、誕生日の遅い次男はまだ14歳。9月からやっと高校生になろうとしてる、どこにでもいるただの少年です。
 
しかし6月にトライアウトの結果が出てから、彼の周りの時間がもの凄いスピードで動き始めた気がするのです。
 
 
 
8月後半、更に大きなトライアウトへの招待が来ました。
 
先日のスカウト・トーナメントを見たアメリカの大学2校からも9月にトライアウトに来るように連絡が来ました。
 
更に10月にはメジャー球団アリゾナ・ダイヤモンドバックスが主催する全米最大規模のスカウトキャンプにも参加する事になって・・・
 
14歳の少年は、この先一体どうなっちゃうんでしょうかね?
 
 
 
とにかく・・・父ちゃんはこの急激な変化のスピードに、もう頭も財布もついて行けません(涙)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

七夕とトライアウト

 

 

「えっ、・・・なっ、何だこれは?」
 
・・・と、言ったかどうかは知りませんが、ストップウォッチを持ったコーチは確かにそんな表情で、もう一度手元のタイムを確認したのです。
 

15歳以下の合同トライアウト一次予選が行われたのは、既に今から数ヶ月も前の事。
 
こういうトライアウト、通常は選手が所属するリーグ毎に行われ、そこで選抜された選手でオールスターチームを作ったりするのですが、今回のこのトライアウトはオープンID制。
 
ブリティッシュコロンビア州(以下BC)に幾つか存在する野球リーグの全てでプレーする同年代の全選手を対象に、腕に自信のある子なら誰でも挑戦する事の出来る、言わば本当の実力を試すための合同トライアウトなのです。
 

ただ・・・
 
 
誰でもとは言うものの、さすがにここに受けに来る子達はほとんどが地元で「おっ~!」と言われるような子ばかりで、中には既にプロのスカウトが狙っているような超有名な子も参加してるので、「まあ、とりあえず同年代にどんな凄い子がいるのか、見るだけでも勉強になるかな・・・」というノリで参加した我が家の次男。
 
 
 
我々の住むBC州は日本の2.5倍もある広大な州。
そこをいくつかの地区に分け、アイランド地区で2回、インランド地区で2回、そしてローアーメインランド地区で3回行われたこのトライアウト1次予選には、そんな腕自慢の子達約400名が挑戦し、そこから絞り込まれた100名がファイナル・キャンプへ招待されます。そして、更にそこで練習や試合を経て最終のBC選抜チームが選ばれるのです。

選ばれるのは8年生、9年生、10年生の学年別にそれぞれ1チーム十数名。

誕生日が遅く、体も小さな我が家の次男が受かるとはとても思えませんので、最初は見ている親も軽いノリで、弁当食べながら比較的のんびりムード・・・の、はずだったのですが・・・

キャッチャーの二塁への送球テストが始まった途端、僕は思わず「あれっ?・・・もしかして・・・」と思ったのです。
なぜなら目で見ただけで明らかに他の参加者とは速さが違うのです。
 
そして、そう思ったのはタイムを計っていたコーチも同じだったようで「えっ、なっ何だこのタイムは?」と言ったかどうかは別にして、そんな顔でストップウォッチを覗き込みました。
 
正式記録は教えてもらえませんが、気になった僕は家に帰ってから参加者一人一人のビデオをスーパースローにして、コマ送りで送球タイムを計算。
 
すると・・・次男の捕球からセカンド到達までの送球タイムが1.95秒!!
 
親ばかで大変申し訳ないですが・・・大人サイズのグラウンドで、14歳の少年がこのタイムで投げたら、はっきり言ってこれめちゃくちゃ速いです!と言うか速すぎです!!甲子園に出る高校球児の中に入ったとしても、このタイムはたぶんトップクラスです。(まあ、練習のタイムと試合のタイムは別物ですが)
 
 
 

そんな訳で、二塁送球テストの後、急にコーチ数人が次男の後ろをぞろぞろ付いて来てキャッチングやブロッキングをジーッと徹底観察。
 
数週間後、無事にファイナルキャンプに招待されたのですが、問題はそこからです!
 
 
あの速さで送球すれば、1次予選で落とされる事は絶対無いと僕は勝手に思ってましたから、とりあえずここまでは進むだろうと・・・ただしここから先は、既にBC州では名前の通った有名な子達ばかり。
 
みんな守備が上手いのは当たり前、二か所三か所守れるのも当たり前、ガンガン打つのも当たり前。右を見ても左を見ても凄い子ばかり、でかい子ばかり。

その上みんなアピールが凄い!
 
外野を守っていた子が、次の回はピッチャーをして、その次の回にファーストの守備に付き・・・と言った感じで、「俺はこんな事も出来るんだ」とみんな必死です。
 
我が家の次男はと言うと、普段はピッチャーやショートも守りますし、状況しだいでどこでも守れますが、今回のトライアウトはあえてキャッチャー1本に絞って挑戦したようです。
 
自信もあり大好きだったショートの守備を封印するのは、少しもったいない気はしましたが、これは大正解だと思います。

親の欲目もあるでしょうが、少なくとも僕の目にはキャッチングに関しては全てのキャッチャー候補の中で彼が一番だと感じたのです。

自分のセールスポイントは何か?と考えた時、きっとそれは右でも左でもスイッチで打てるキャッチャーという事を本人が自覚し、挑戦したのです。
 

ただ・・・それでも受かる可能性は30~40%くらいだろうと思いました。

ファイナルに残っている子達は、やはりデカいしパワーが凄い!
 
 
 
最終の判断を下す監督が、もし「打って打って打ちまくるパワー打線のチームを作りたい」と言えば、おそらく次男は受からないでしょうし、逆に「守って守って、一点を守り抜くチームを作りたい」と言えばかなり確率は上がるでしょう。
 
 
 
「う~む、微妙だな~」と見ていて思ったのです。
正直この凄いメンバーの中で選抜チームに残るのは相当に大変な事だと。
 
それなのに・・・
 
 
 
「たぶん大丈夫じゃないかな・・・」
・・・と、サラッと言ってのけた次男。
 
僕が思わず「えっ?」と聞き返すと
 
「まあ、行けるんじゃない・・・」
・・・と。

「その根拠の無い自信はいったいどこから来るんだ?」と思いましたが、僕はそれ以上聞くのを止めました。
 
 
 
キャンプ終了から10日、先週末ウエブサイト上に発表された最終メンバー19人。その中に・・・
 
YOSUKE  FUJIE
 
ありました!
入ってました、残ってました・・・いや~っ、これはビックリ。
 
僕は正直「嬉しい」・・・ではなく、「凄いな~」と驚きました。
 
「良かったな~、凄いな~・・・いや~ほんと、このメンバーで選ばれるなんて本当に凄いよ」
興奮気味に話す僕に、次男が言いました・・・
 
「七夕の短冊に書いたお願いが・・・これで半分だけかなったよ」
「えっ、半分だけ?」
 
僕が聞き返すと、次男は笑顔で・・・
「メンバーに選ばれて・・・活躍できますようにって書いたから」
「そうか・・・そりゃそうだな、選ばれただけじゃ意味ないもんな、活躍しなきゃな」
 
 
 
本人は「あのメンバーの中でもキャッチャングは俺が一番だった」と言い切り、「バッティングも調子良かったし、右と左を切り替えて打つのをコーチーがずーっと興味深く観てたからね・・・」と、・・・実は彼の中には選ばれるだけの根拠も自信もあったのでしょうね・・・
 
 
 
なんだ息子が少しだけ頼もしく感じた2017年BC選抜チームの発表でした。
 

PS・・・おめでとう息子よ!でもね・・・そんなとこ受かると思ってないから、父ちゃんは休みも取ってませんでした。どうすんだよ急にアメリカ遠征って、誰が運転してくんだよ~、なんで現地集合なんだよ~、バカやろ~(苦笑)。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

言葉の責任

 

 

「ばかもん!お前、なんでホームランなんか打つんだ!!」
 
バントのサインが出ていたにも関わらず、あまりにも良い球が来たので思わずホームランを打ってしまい、ベンチに戻ったら監督から大目玉をくった・・・
 
・・・と言うこの話、本当の話なのか誰かが作った話なのかは知りませんが、日本で野球をやってた人なら一度や二度は監督から聞いてるのではないでしょうか?
 
それ程、野球における監督の指示は絶対であり、チーム全員が指示に従い勝利に向かって進む・・・と言うのが日本の野球。
 
ですがこの日、次男が打ったホームランも、実は打撃コーチからの支持に反発して打ったホームランでした。
 
冒頭の話のようにバントのサインが出ていた訳ではありませんが、コーチの指示はこうでした・・・
 
 
「おいっ陽介、フルスイングするな・・・当てていけ」
「反対方向にゴロを転がせろ」
 
日本の少年野球では日常的に聞かれる言葉ですが、このチームでこの言葉は、次男にとって混乱以外の何物でもありませんでした・・・・
 
 
二年前の9月、初めてこのチームに合流してから、次男が絶えず取り組んできた事・・・それがフルスイングでした。
 
バントを全くしないチーム方針、打って打って打ち勝つチーム。
 
今年だけの事ではなく、上のレベルに行っても通用する選手に育てる事を優先し、目先の勝利より子供達が成長する為の練習や作戦をしてくれる監督。
 
一番年下で、一番小柄だった次男は、必死に練習して練習して、チーム練習が終わった後でも僕の投げる球を数百球も打ち込んで、気が付けばいつの間にか誰よりも強い打球が打てて、誰よりも速いスイングが出来るようになっていました。
 
「おっ陽介、なんだか最近スイングスピードが速くなってきたな」
監督にそう言われて益々やる気になり
 
「おい陽介、お前、別人みたいに凄くなってるらしいな」
練習を覗きにきた先輩から言われてすっかりその気になってうぬぼれて・・・
 
鼻高々になった鼻を思い切りへし折られ、また必死になって頑張ってうぬぼれては、へし折られの繰り返し。
 
でもどんなにへし折られてもずっと続けて来たのがフルスイングであり、今年はそのフルスイングがあってこそ、次男がそこにいるのです・・・
 
 
なのに・・・
 
 
数試合、調子があまりよくなかっただけで、「フルスイングするな、当てていけ」なんて言う指示は、監督の考えやチームの指示、そして何よりも子供達の長い時間をかけて積み重ねてきた努力を全く無視した指示なんじゃないかと・・・僕は思いました。
 
野球はチームスポーツです。どんなにスイングスピードが速くても、どんなに強い打球が打てても、それがヒットにならなければ野球のルール上は意味がありません。ですが少し調子を崩しただけで「もういいからフルスイングするな、当ててけ」と言われた子供は動揺します、どうして良いか分からなくなります、自分に自信が持てなくなって心が折れてしまうかもしれません。
 
大人の言葉は、時として子供の背中を押しますが、逆にいつでも凶器にも成り得ます。周りにいる大人の言葉がころころ変わる程、子供を混乱させるものは無いと思います。
 
僕は次男に言いました・・・
「良いスイングしてるから気にするな・・・ただ、そのフルスイングのままバットの真芯に当てるにはどうすれば良いのか、フルスイングのままタイミングを取るにはどうしたらよいのか、そのフルスイングを活かすために何をすれば良いのか、その修正をする時期が来たんだと思うよ」と。
 
親が答えを見つけてあげても意味がありませんし、そもそも答えなど無い気がします。
本人が考え、工夫して、また鼻をへし折られてそこで初めて見えるものがきっとあるはずです。
 
「おいっ、陽介、フルスイングは必用無いぞ~当てていけ」
 
思いっきり空振りした後に飛んで来た打撃コーチからの言葉、そしてその直後に飛び出したホームラン。
あくまでも結果論ですが、もし素直に言葉通りコツコツ当てにいってたら出なかったホームラン。
 
 
子供にかける言葉って本当に難しいし、何気なく言った一言にもとても大きな責任がある事を感じさせてくれた次男のホームランでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

シニア

 
「大変だ~、陽介~、お前指名手配されてるぞ」
 

・・・と、友達が次男を呼びに来たのは、アルバータ州へ遠征に行ったある朝の事。

 
ダブルヘッダーの為、朝早くに朝食を食べているところに届いたのは「陽介を見つけたら、直ぐに監督のいる119号室まで連れて来るように」という一斉メール。
 
「おいっ陽介、お前何を悪い事したんだ」
「あ~っ朝から呼び出しなんて最悪だな~」
「きっとお前、殺されるぞ」
「これから第一試合なのに、陽介は一人部屋で反省会か~」
 
 
散々チームメイトにビビらされながら向かった119号室。
ドアを開ける勇気がなかなか出ないでいると、ガチャとドアが開いて監督の顔がニヤッ・・・
 

「おー、陽介やっと来たか、中へ入れ」
 
「えっ~中へ?・・・殺される~」
 
・・・と、恐る恐る部屋の奥へと進む次男。

監督が何かを掴むとそれを勢いよく次男の顔目がけてバシーッと殴りつけ・・・・いや、違った、間違い・・・殴りつけてない(笑)、次男の顔の前に差し出した。
 
「おいっ陽介、開けてみろ」
 
監督が差し出した袋の中を覗き込む次男。
 
そこには黒光りする一丁の拳銃・・・
 
「それで、相手のチーム片づけてこい」
「へいっ、ボス・・・」
 

・・・って、いやいやこれも違う(笑)、どうも今日は話が逸れる。
 

ではもう一度・・・
 
監督が差し出した袋の中身、そこにあったのは・・・
 
 

憧れのピンストライプのユニフォーム!!
 
 
次男が所属する野球チームは15歳以下のバンタム、16~17歳のジュニア、17~18歳のシニアの三編成で出来ていて、14歳の次男がプレーするのは一番下のバンタムチーム。
 
一つ上のジュニアの中には去年まで一緒にプレーした子や友人などもいるが、その上のシニアになると雲の上の存在。中学生が高校の高学年チームに憧れるようなもの。

そして同じ系列チームとは言え、バンタムとシニアではユニフォームも全く別。
ピンストライプのユニフォームは、そんな憧れのシニアチームが着る服なのだ。
 

次男が驚いた顔でユニフォームを眺めていると
 
「おいっ陽介、お前今日の第一試合出なくて良いから、シニアの試合に出てこい」
「えっ、シニア?俺だけ?…ジュニアじゃなくてシニア?」
 
「なんだ、いやか?」
「いえっ、行きます行きます、行きたいです!」
 
・・・と言う事で、一緒に遠征に出ていたシニアチームに突然一人だけ合流する事に。
 
監督やコーチからは・・・
 
「打てなくても、エラーしても気にするな、思いっきりやってこい!」
 
・・・とは言われたものの、気にするなと言う方が無理な話。
 
周りはドデカい筋肉野郎ばかり、しかもこのチームは今年・来年とドラフト候補リストに6人も名前が出てる異常なチーム。そんな中に小柄な中学生が一人ポツンとはいると、まさに借りて来た猫状態。
 

「なんだ、あのベンチの隅にいるちっこい奴は」
そんな声が聞こえて来て次男が顔を上げると・・・
 
「おっ~陽介じゃねーか、お前ここで何してるんだ」
「すげーなージュニアふっ飛ばしてシニアに来たのか」
 
シニアもなぜか既に皆が次男の事を知っていて、よってたかっていじくりまわされて、正に借りて来た子猫状態に(笑)。
 
 
結局この日、次男はセカンドとして先発出場し、3打数1安打でヒットも打てたのですが、出てくる言葉は・・・
 
「最初の打席で、捉えたと思った瞬間手元で球がググッて曲がって内野ゴロになったんだ、あんな球初めて見たよ」
「セカンド守ってたら、とんでもなく打球が速くて、一回はじいてエラーしちゃったんだ」
・・・と失敗の話ばかり。
 
「なんだよ、どうせ球はじくんなら全身で球を止めて、そのまま体ごとフェンスまでふっ飛ばされたら大うけで人気者になれたのにな~」
「飛ばされるほど小さかねーよ!」
 
次男は悔しそうにして見せたが、僕は直ぐに感じた・・・
 
彼がとても嬉しそうだと言う事を。
 
シニアの試合に突然出て3打数1安打は上出来だ。守備も一回エラーしたとは言え無難にこなした、自信を持って自慢したっておかしくない。
 
でも彼は失敗を悔しがった。
 
ヒットの話ではなく、打てなかった打席を思い出し、取れなかった打球を思い返して悔しがった。
 
僕はその言葉を聞いて、次男も少しは成長したな~と感じた。
 
「球がおっそろしく速いし、体はバケモンみたいにでっかいし・・・」そう言いながらも、彼の眼はとても嬉しそうだった。新しい獲物を見つけたように。わくわくどきどきしてるのが伝わって来た。
 
失敗の話が出るのは諦めではなく、悔しかったから。
 
次男の性格からして、出る以上は活躍してやると密かに企んでいたはず、そこで何かを掴んで、出来る!と思ったのに、思った通りに行かなかった事を悔しがったのだ。
 
「またシニアに行きたいな~、あのチームで試合したいな~」
 
今の次男がシニアに行っても全くレベルについて行けない事は容易に想像できる。でも・・・行けるか、行けないかはこの際関係無い。
 
何かに向かって目を輝かせながら夢中になれる、そんな目標を見つける事の出来たシニアの試合。
 
たかが一試合、でもそれが彼にとってとても貴重なターニングポイントになるかもしれないな~・・・と親ばかな僕は一人なぜかニヤニヤしています。