どうなることやら・・・

「う~む・・・これはなかなかのグッドスタートだね」
妻の作ったリストを覗き込みながら、監督がそう言った。
監督と言うのは、地元の野球アカデミーの責任者であり、シニアチーム(高校2~3年生)の監督であり、メジャーリーグのスカウトもこなすC監督の事だ。
今年5月のトライアウトで次男がBC州の選抜チームに入れてもらい、その後アメリカに行くようになってからというもの、実は我が家にはアメリカの大学からのお誘いがひっきりなしに来るようになったのだ・・・・・いや、ほんとにこれがも~驚くほどの数の連絡が来る。
だが、悲しい事に僕達にはそれをどう対処すれば良いのか、その判断基準が分らないでいた・・・
これが地元の大学に進むとか、長男のようにアートが得意だからその方向に進みたいとか・・・こういう進路なら学校の先生にも質問しやすいし、ご近所にその大学出身の人がいたりしていろいろ話を聞く事も出来るのだろうが、カナダの田舎町に住んでいてアメリカの大学野球に詳しい人をどうやって探し出せば良いのか?
じゃんじゃん来る連絡の大半はメールで来るのだが、そこに書かれた住所がAZとかCAとかなら、「あっアリゾナの大学だな」とか「おっ、今度はカリフォルニアからも誘いが来たぞ」なんて直ぐに分かるのだが、これがRIとかMDとかになると、もう僕にはそれがどこの州からの誘いなのかも分からないでお手上げなのだ。
(RIはロードアイランド州、MDはメリーランド州でした・・・後からちゃんと調べました、苦笑)
実は・・・
10月上旬、妻と次男がアリゾナのスカウトキャンプに行った話をブログに書いてからというもの、友人知人からも「その後どうなったの?」「何か進展あったの?」と、皆に聞かれるので、「こりゃ、何か続きを書かなきゃ、このまま知らんぷりはダメなんだろうな~」とずっと思いつつも、僕自身本当に何をどう書けばよいのやら・・・・別に何かが決まった訳でもなく、この先どう進むのかもさっぱり分からない。
監督が言うには・・・
アメリカの大学野球には、D1リーグと呼ばれる最上位のリーグから順にD2、D3とランク分けされ、さらにその他にも多くのローカルのリーグが存在するらしい。そして、本気で上を目指したい選手はプロのスカウトが絶えずチェックに来るD1かD2のリーグでプレーする事が望ましいのだそうだ。
「いいかい・・・スカウトキャンプ等に参加して、一度目を付けられた選手の家には次々に誘いのメールが来るようになるからね・・・・でも、しばらくはそのまま放っておけばいいから」
・・・と監督は言うのだが、僕達にはその「しばらく」が分からない!
元々僕は、今の時点で我が家の次男にそんなに飛び抜けた才能があるとは思っていない。だから「最初のメールが最後のメールになるんじゃないのか?」、「気が付いた時には1通もメール来なくなってるんじゃないのか?」と、期待と不安が入り混じって落ち着かない。
ただ・・・
そうこう言っている間にも、本当に毎日のように電話やメールがじゃんじゃんやって来て、気が付けばD1だけで既に十数校、これにD2やカレッジ、そしてプロ養成(?)の野球アカデミーや、更には選手を全米に売り込むエージェント等(?)からもかなりの数の連絡が来て・・・・
も~やめた!も~う無理!もう分らん!!・・・と、ついにギブアップ。
僕達だけで悩んでいても埒があかないので、妻がそれらを一覧表にまとめ、監督の所に相談に行ってきました。
「おぉ~これはなかなかのグッドスタートじゃないか!」と、少し意外な驚きといった感じの監督。
そして、そのリストにまじまじと見つめると、突然ペンを取り出してチェックマークを入れ始めた。
「え~っと・・・ここと、ここと、ここと・・・おっ、ここも良い大学だぞ・・・ほ~っ、ここは凄いぞ全米トップ10に入るチームだ」等といろいろな情報を教えてもらったのですが、それでも・・・
「大丈夫、大丈夫・・・焦る必要は無いから。この調子ならまだまだ連絡が来るから、じっくり落ち着いて決めれば良いから」と、笑うだけ。
そうは言われても、僕らのような小市民は落ち着きません(苦笑)。
そもそも今年は長男が高校三年生で進路について大変な年なのに、どうして高校入ったばかりの次男の大学の話で悩まなけりゃいかんのだ!!!…と言う事で、もう僕は頭を切り替えました・・・
「おっ、ここの大学ならロサンゼルスのディズニーランドまで直ぐ近くだぞ・・・」とか
「今日メールが来たのはハワイの大学だよ・・・」とか
「やっぱりフロリダは捨てがたいな~・・・」とか(笑)
…と言う事で、我が家の選考基準は「娘と嫁が楽しめるリゾート地の近くに在る大学に決定!!!」(大笑)。
多くの方から応援やご質問のメール等頂くのですが、そんな訳で・・・まだな~んにも決まってません。
・・・って言うか
その前にもっともっと勉強頑張らないと何処にも行けない気がするのですが・・・(泣)
なぜ、まだそこに?
「いいか、お前がちゃんとお母さんを守るんだぞ・・・」
「・・・・・」
小さなモニターの中で不安そうな表情を浮かべる次男に、僕は出来るだけ静かな口調で話し続けた・・・
「絶対にイライラするなよ・・・嫌な事があっても、絶対にお母さんを急かせたり、焦らせたりするな」
「・・・・・」
小さなモニターの中には落ち着き無くキョロキョロ周りを見回す次男と、必死で交渉を続ける妻がいた。
「いいか、お前がブレーキになってお母さんを落ち着かせろ・・・いいな?・・・出来るな?!」
「・・・・・うん・・・・がんばる」
少し前のブログに書きましたが、現在妻と次男は野球のスカウト・キャンプに参加する為、アリゾナに行っている。
その次男から突然が電話がかかって来たのは10月9日月曜日、サンクスギビングデーのお昼前、二人を空港まで迎えに行く為、そろそろ家を出ようかと準備をしていた正にその時だった・・・
「とっ、父さん・・・」
「えっ・・・なっ、なんで?・・・今、飛行中の時間だろ?」
「いいから・・・直ぐにフェイスタイムをつないで、はやく!」
次男がそれだけ言うと電話は直ぐに切れてしまった。
(ご存知だとは思いますが)フェイスタイムと言うのはアップル社のiphone同士で繋ぐテレビ電話のような物。僕の持っているサムスンのスマホでは繋がらないので、急いで長男のiphoneから次男へとフェイスタイムを繋げると・・・
いきなり空港のチェックインカウンターからの生中継が始まった。
「無理です、何度言ってももう手遅れです・・・出発の1時間前には全てロックがかかって操作出来なくなります」
「違うんです、だから1時間以上前から操作はしてたのに、マシンのトラブルで待たされて、カウンターに並びなおして・・・」
「・・・無理です!」
「はぁ~」という溜め息と共に目線を下げた妻がフェイスタイムに気付き、泣き出しそうな顔で・・・
「どうしよう・・・乗り遅れた~・・・」と、言った。
滞在していたホテルから空港までは車でおおよそ30分の距離。
だがこれをバスを乗り継いで行くと2時間はかかるらしい。
タクシーを呼べば良いのだが片道で100ドル以上。
「高いな~」と話していたら、同じくカナダからキャンプに参加していた家族が「レンタカーだから一緒に空港まで乗せてあげる」と言ってくれたらしい。
これはラッキーと大喜びしたのだが、世の中そんなに甘くはない。
・・・これが落とし穴だった
旅行の時、いつも時間に余裕を持って早め早めに動く人と、いつもギリギリで間一髪で動く人がいるが・・・どうやらその家族は後者だったのだ。
その人達でさえギリギリなのに、妻達の乗る便はその人達より更に20分前に出発する。
大急ぎでチェックインカウンターへ走り、自分たちで操作するセルフ・チェックのマシンへ辿り着いたが・・・ここに二つ目の落とし穴が待っていた。
マシンがフリーズして動かない、係の人も手伝ってくれるが結局「カウンターへ行ってください」と言われて並びなおしている間に出発まで1時間を切ってしまった。
こうなると、もう一切取り扱ってくれない。
「預入れ荷物の関係上、1時間前にはチェックイン用のコンピューターを全てロックしてしまう」の一点張り。
仕方なく、別便への変更を聞くと・・・
「一人250ドルほどの追加で変更は出来ますが・・・あいにく3日後の木曜まで空席はありませんね」
「みっ、3日も?・・・」
そう、ここにもう一つの落とし穴が待っていた。
アリゾナは今、秋休み!!(初めて知ったが、秋にも長期休暇週間があるらしい)。飛行機はどこも一杯で空席はほとんどないらしい。
なんとかならないか別会社のチケット等も調べたが、買いなおすと一人片道800ドルくらい、しかもこれはアメリカ・ドルだからカナダ・ドルになおすと一人で片道1000ドル以上にもなってしまう。
延泊のホテル代に食費、そして一人1000ドルの追加出費は痛すぎる。
興奮状態の妻は・・・
「レンタカー借りて、自分で運転して帰る」と言い出す。
「ちょっ、ちょっと待て、落ち着け・・・そこから最短でも約2500キロ、一人で走ってたら帰って来るのは結局木曜だぞ」
「じゃあ大陸横断バスに乗る」
「いや、だから長距離バス乗り継いで帰って来たら、更に時間かかるってば」
「カナダ行きが無いなら、ワシントン州のシアトルとかべリングハム行きにする・・・それかLAまで車で行って、そこからカナダへ・・・」
「だからちょっと待て・・・いいから、落ち着け!~・・・・」
結局その後もすったもんだがあった後、なんとか明日の朝一番のサンフランシスコ行きを見つけた。そこから乗り換えでのバンクーバー行きなら便数も多い、これでなんとか明日中に帰って来られる。
この辺りが、数十年前と現代の大きな違いである。
僕がカナダの自宅に居ながらにして、パソコンでチケットを探し、直ぐにネットで購入、そのe-ticketを直ぐにアリゾナの妻のスマホに転送し、空港カウンターで見せて前日チェックインをする。
こんな事は、僕達が若くて撮影旅行しながら北米を回っていた時には想像も出来ない事だった。
夕方、ようやく落ち着いて笑顔の戻った妻と再びフェイスタイムが繋がった・・・
「ここね、24時間稼働の国際空港だから、空港で泊ってもいいんだって」
・・・嬉しそうに妻が言った
「でも、疲れないように、近くのモーテルかどこかでシャワー浴びて仮眠取った方が良いよ」
「う~ん、でもね・・・飛行機が早朝だから、朝の3時頃に空港へ戻って来ないといけないのよ。その時間にシャトルバスがちゃんと時間通り動いてるか信用できないし・・・」
ここで僕は次男に変わってもらった
「いいか、お前がお母さんを守るんだぞ・・・絶対にイライラするなよ・・・嫌な事があっても、カナダに戻るまで貯めとけよ・・・イライラして絶対にお母さんを急かせたり、焦らせたりするな」
心配する僕にむかって妻が言った・・・
「大丈夫、大丈夫・・・もう、空港のどこに長イスがあるかも調べてあるし、フリーの新聞紙も見つけたから、寒かったらそれかぶって眠れるし、全然大丈夫」
「君の、大丈夫が一番心配なの!!!」
僕は20代の頃、車、バス、飛行機を駆使し、妻と二人で北米中を撮影して回っていた。
田舎町では乗り継ぎがうまくいかない事や、一本バスが出てしまうと次のバスまで2日待ちなんて事も何度もあり、僕達は最低限の所持品でどこででも生きて行く術を身に着けた。
飛行機に荷物を預けた後にトラブルが発生して、そのまま何も持たない状態で空港ロビーで寝るなんて事も何度も経験している。新聞紙がとっても暖かい事もよーく知っている。
あれから数十年・・・時代は変わり、ITを駆使して情報を手に入れたり、予約をしたりする事は可能になった。
でも、旅にトラブルは付き物だ。
旅先で本当に強い人というのは、ITで直ぐに予約が出来る人よりも、きっと即断で「新聞紙かぶって寝る」と言える人なんだろうな~と思う。
・・・って言うか、空港には時間の余裕を持って行こうよ、次からは・・・ねっ、頼むから(泣)。
ゆきちゃんへ・・・
「あんた一人で大変やな~・・・お弁当作りに行ってあげようかって、今二人で話してたんよ・・・」
「チケット送ってくれたら直ぐに行ったげるよ(笑)」
「えっ?・・・おっ、俺が送るんか?!」
「そう、あんたが送ってきてくれたら、直ぐにお弁当作りに行ったげる」
「いらんわい!・・・弁当自分で作る!(笑)」
「遠慮せんでも姉と母の分、二枚でええよ~!」
「遠慮なんかしてへんわい・・・絶対来なくていい!!(笑)
・・・と言うような会話を昨夜してる時には気付かなかったのですが、今朝弁当を作ろうとしたら冷蔵庫に一枚の手紙が張り付けてあるのを見つけました。
(アメリカ行き、詳しく知りたい人は、昨日のブログをお読みください)
「ゆきちゃんがいないあいだは
えみかがちびママするからあんしんしてて
スキだったらじぶんのつくってもいいでしょ
・・・・・
良いな~・・・この手紙!
・・・と言うのは冗談ですが、僕は次男がアリゾナから帰って来たらこの手紙を見せてやろうと思いました。
野球をやっているのはもちろん次男本人ですし、その為にいろいろ努力してるのも知っています。でも自分のやりたい事、やりたい夢にむかって頑張るのは努力などとは言いません。
たとえ野球だけが上手くても何の意味もありません
周りの人達に感謝する気持ちを忘れない
ふ~っ・・・野球の練習よりも、人としての修行がまだまだ足りんね、次男君!
アリゾナ
「君は・・・日本のプロ野球チームのどこが好きだい?」
なぜならここはカナダ、質問されたのは当然英語、そして声をかけて来た男はどう見ても日本人ではない白人男性。
「まさかキミ・・・阪神ファンじゃないよね?、タイガースのファンなら僕は怒るよ!」
「マシソン?・・・」
そして、なんとカナダ&アラスカ地区を担当している現役のメジャーリーグのスカウトさんだった。
このマシソン父ちゃんと初めて会ったのは今年の5月、次男がBC選抜チームのトライアウトを受けに行った日の事だ。
「えっ、アリゾナ?・・・」
「スカウトが勢揃いするキャンプがアリゾナであるんだが、来る気はないかい?」
「あっ、あります、あります・・・行きたいです!」
「そうかい、じゃあ親御さんにメールするからね」
9月から新年度が始まったばかりだというのに、また学校の勉強を何日も休まなければいけない事。
各地から選手が集まる為、自費で現地集合・現地解散になる事。
・・・となれば、僕か妻のどちらか一方が、また何日も仕事を休んでアメリカまで一緒に行かなければいけなくなる事。
当然、飛行機代と宿泊代、食費、そしてスカウトキャンプへの参加費用等々、またもやドカっと出費がかさんでしまう事。
マシソン父ちゃんとの再会はそれから数カ月後の事だった。
トライアウトで選ばれた最終候補者達のミニキャンプが7月に行われ、その後、次男は無事BC代表となって8月にアメリカで行われたスカウト・トーナメントに参加した。この時のカナダチームの監督兼最高責任者がまたマシソン父ちゃんだったのだ。
「YOSUKEはもうアリゾナ行きを決めてくれましたか?」
「えっ・・・いやっ、実は・・・」
「アリゾナでは一年を通して様々なキャンプが行われてますが・・・今回のキャンプは、実際にメジャーリーガが春のキャンプに使用しているグラウンドや施設をそのまま使える最高の環境で行われます・・・しかも北米全土から招待されたトップレベルの子達だけが集まり、大学やメジャーのスカウトが勢揃いするので、行けばきっと新しいチャンスが広がりますよ」
それはその通りだと思う、そんな事は言われなくても分かっている・・・
僕が思わずそう叫びそうになった時、横から先に妻がこう言った・・・
「う~む、まだ正確な人数は決まってないけど、参加してる州がそれぞれに作る州代表のチームと、それとは別に多数の州が合同で作るチーム・カナダもあるからね」
えぇっ!!・・・チッ・・チーム・カナダ!?
僕は思わずここでグラッと来た。
暑さや疲れのせいではなく、それはずーっと憧れていた言葉を聞いたから・・・
「G10が?・・・」
カナディアンの圧倒的なパワーと身体のサイズの差は、小柄な次男にとって絶対的なハンデとして今までずーっと見えない敵となって戦ってきた相手だ。その見えない敵から、現役のプロスカウトマンが「キャッチャーはサイズを気にしなくても良い」という一言で一気に解き放ってくれた気がした。
心の中でしっかりと閉まったままだった扉を開けてくれた気がした。
僕は嬉しくなって今度こそ「はいっ、参加します」・・・と、言いそうになったが、またしても妻が・・・
「僕はYOSUKE以外にも日本から来た野球少年を沢山知っている。彼等は本当に守備が上手い、知識も技術もある。こちらの少年野球にくれば直ぐにレギュラーになれる」
「高校生まで?」
「これから彼らが戦う相手は日本人じゃない。ドミニカやプエルトリコのような中南米の選手達もいる。彼らは6フィート以上の身体を持ち、バズーカのような肩を持ち、強靭で俊敏な身体能力を持っている。申し訳ないがこれから先さらに上のレベルへ上がった時、アジア人が彼らを押しのけてショートのレギュラーを取るのは・・・残念ながら、とても難しいだろうね」
そんな選手は野球漫画の中でしか出会わない相手だと思っていた。
「キャッチャーとしては・・・別?」
嬉しかった・・・
「意味?」
「でも・・・・?」
「どっ、どうって・・・?」
次男はなんとこの2カ月の間に4度目のアメリカ旅行です。
結局、出発の10日ほど前に発表されたチーム編成で、次男はチーム・カナダに入れる事になりました。
今はただ監督やコーチが言ってくれたように、どんどん外の世界に目を向け、自分自身で可能性を広げていって欲しい・・・ただそれだけです。
ただし・・・・やる以上は全力で頑張って欲しい。
その時は、僕も可能な限りのサポートはしてあげたい・・・
うちにはもう一人息子と娘がいるので、明日からは6時の弁当作りに始まり、昼間に写真の仕事して、夜中も別の仕事が詰まってるので感慨にふけってるような暇はありません!!
さあ、今日から1週間父子家庭がんばるぞ~・・・オーッ!
英会話家庭教師
お兄ちゃん達は新聞配達をしたり、グローブの修理をしたりして外貨(我が家の場合は、親以外からの外の世界から稼いだ金の意味)を稼いでますが、小学生だった娘は、新聞配達をしている兄を手伝ってわずかな賃金をもらう、言わば下請け業者の立場。9月から中学生になってお洒落も楽しみたいのに、これではお金が足りません。
「えっ、アルバイト?やる、やる、絶対やる!!」
我が家には子供が三人いますが、三人三様でそれぞれが全く違う一面を持っているので実にに面白いのです。
「英語の先生?」
「お父さんが生徒?・・・やりたーい!」
「家庭教師!!分かった~!!!」
・・・という訳で、何やら大張り切りで準備が始まりました。
「そうです!・・・まず全ての書類お読みください。その後にレッスンのご予約をお願いいたします」
・・・と、なるはずだったのですが
「違います!!・・・下手過ぎます!!・・・何度言えばわかるんですか、THの発音は舌を歯の間に挟んでこうっ!・・・あなたのVERYの発音はBERRYと混ざってます・・・文章の途中で切らずに、もっと滑らかに一気に最後まで・・・まったく・・・真面目にやる気がないなら、もう教えませんよ!」
ヘアーサロン・デビュー
スカウト・トーナメント
春のトライアウトでBC州の代表に選ばれた次男が参加したのは、プロのスカウトが集結するワークアウト&ゲームのスカウト・トーナメント。
総勢600名?(700名?)以上のプレーヤーが参加するこの巨大なイベントで、子供達を分ける表記は2018年卒業、2019年卒業、2020年卒業と高校卒業の年度。なぜならここは大学やプロに売り込むためのスカウトトーナメント。
スカウト達は少しでも早く良い選手を見つけ、他のスカウトの目に留まる前にコンタクトしようとし、参加者達は少しでも良い条件を引き出そうとする。
・・・ですが、大学やプロが注目する投手になると、この歳でも90マイル近い速球をバンバン投げ込んできます。かなり離れた場所にまで、ボールが空気を切り裂く音がビュシューと響き渡ります。「こんな球、バッターボックスで見たら、うちの次男はオシッコちびってんじゃないか?」と心配してしまいます(苦笑)。
七夕とトライアウト
15歳以下の合同トライアウト一次予選が行われたのは、既に今から数ヶ月も前の事。
ただ・・・
選ばれるのは8年生、9年生、10年生の学年別にそれぞれ1チーム十数名。
誕生日が遅く、体も小さな我が家の次男が受かるとはとても思えませんので、最初は見ている親も軽いノリで、弁当食べながら比較的のんびりムード・・・の、はずだったのですが・・・
キャッチャーの二塁への送球テストが始まった途端、僕は思わず「あれっ?・・・もしかして・・・」と思ったのです。
そんな訳で、二塁送球テストの後、急にコーチ数人が次男の後ろをぞろぞろ付いて来てキャッチングやブロッキングをジーッと徹底観察。
その上みんなアピールが凄い!
親の欲目もあるでしょうが、少なくとも僕の目にはキャッチングに関しては全てのキャッチャー候補の中で彼が一番だと感じたのです。
自分のセールスポイントは何か?と考えた時、きっとそれは右でも左でもスイッチで打てるキャッチャーという事を本人が自覚し、挑戦したのです。
ただ・・・それでも受かる可能性は30~40%くらいだろうと思いました。
ファイナルに残っている子達は、やはりデカいしパワーが凄い!
・・・と、サラッと言ってのけた次男。
・・・と。
「その根拠の無い自信はいったいどこから来るんだ?」と思いましたが、僕はそれ以上聞くのを止めました。
「えっ、半分だけ?」
「メンバーに選ばれて・・・活躍できますようにって書いたから」
「そうか・・・そりゃそうだな、選ばれただけじゃ意味ないもんな、活躍しなきゃな」
PS・・・おめでとう息子よ!でもね・・・そんなとこ受かると思ってないから、父ちゃんは休みも取ってませんでした。どうすんだよ急にアメリカ遠征って、誰が運転してくんだよ~、なんで現地集合なんだよ~、バカやろ~(苦笑)。
言葉の責任
「ばかもん!お前、なんでホームランなんか打つんだ!!」
バントのサインが出ていたにも関わらず、あまりにも良い球が来たので思わずホームランを打ってしまい、ベンチに戻ったら監督から大目玉をくった・・・
・・・と言うこの話、本当の話なのか誰かが作った話なのかは知りませんが、日本で野球をやってた人なら一度や二度は監督から聞いてるのではないでしょうか?
それ程、野球における監督の指示は絶対であり、チーム全員が指示に従い勝利に向かって進む・・・と言うのが日本の野球。
ですがこの日、次男が打ったホームランも、実は打撃コーチからの支持に反発して打ったホームランでした。
冒頭の話のようにバントのサインが出ていた訳ではありませんが、コーチの指示はこうでした・・・
「おいっ陽介、フルスイングするな・・・当てていけ」
「反対方向にゴロを転がせろ」
日本の少年野球では日常的に聞かれる言葉ですが、このチームでこの言葉は、次男にとって混乱以外の何物でもありませんでした・・・・
二年前の9月、初めてこのチームに合流してから、次男が絶えず取り組んできた事・・・それがフルスイングでした。
バントを全くしないチーム方針、打って打って打ち勝つチーム。
今年だけの事ではなく、上のレベルに行っても通用する選手に育てる事を優先し、目先の勝利より子供達が成長する為の練習や作戦をしてくれる監督。
一番年下で、一番小柄だった次男は、必死に練習して練習して、チーム練習が終わった後でも僕の投げる球を数百球も打ち込んで、気が付けばいつの間にか誰よりも強い打球が打てて、誰よりも速いスイングが出来るようになっていました。
「おっ陽介、なんだか最近スイングスピードが速くなってきたな」
監督にそう言われて益々やる気になり
「おい陽介、お前、別人みたいに凄くなってるらしいな」
練習を覗きにきた先輩から言われてすっかりその気になってうぬぼれて・・・
鼻高々になった鼻を思い切りへし折られ、また必死になって頑張ってうぬぼれては、へし折られの繰り返し。
でもどんなにへし折られてもずっと続けて来たのがフルスイングであり、今年はそのフルスイングがあってこそ、次男がそこにいるのです・・・
なのに・・・
数試合、調子があまりよくなかっただけで、「フルスイングするな、当てていけ」なんて言う指示は、監督の考えやチームの指示、そして何よりも子供達の長い時間をかけて積み重ねてきた努力を全く無視した指示なんじゃないかと・・・僕は思いました。
野球はチームスポーツです。どんなにスイングスピードが速くても、どんなに強い打球が打てても、それがヒットにならなければ野球のルール上は意味がありません。ですが少し調子を崩しただけで「もういいからフルスイングするな、当ててけ」と言われた子供は動揺します、どうして良いか分からなくなります、自分に自信が持てなくなって心が折れてしまうかもしれません。
大人の言葉は、時として子供の背中を押しますが、逆にいつでも凶器にも成り得ます。周りにいる大人の言葉がころころ変わる程、子供を混乱させるものは無いと思います。
僕は次男に言いました・・・
「良いスイングしてるから気にするな・・・ただ、そのフルスイングのままバットの真芯に当てるにはどうすれば良いのか、フルスイングのままタイミングを取るにはどうしたらよいのか、そのフルスイングを活かすために何をすれば良いのか、その修正をする時期が来たんだと思うよ」と。
親が答えを見つけてあげても意味がありませんし、そもそも答えなど無い気がします。
本人が考え、工夫して、また鼻をへし折られてそこで初めて見えるものがきっとあるはずです。
「おいっ、陽介、フルスイングは必用無いぞ~当てていけ」
思いっきり空振りした後に飛んで来た打撃コーチからの言葉、そしてその直後に飛び出したホームラン。
あくまでも結果論ですが、もし素直に言葉通りコツコツ当てにいってたら出なかったホームラン。
子供にかける言葉って本当に難しいし、何気なく言った一言にもとても大きな責任がある事を感じさせてくれた次男のホームランでした。
シニア
「大変だ~、陽介~、お前指名手配されてるぞ」
・・・と、友達が次男を呼びに来たのは、アルバータ州へ遠征に行ったある朝の事。
ダブルヘッダーの為、朝早くに朝食を食べているところに届いたのは「陽介を見つけたら、直ぐに監督のいる119号室まで連れて来るように」という一斉メール。
「おいっ陽介、お前何を悪い事したんだ」
「あ~っ朝から呼び出しなんて最悪だな~」
「きっとお前、殺されるぞ」
「これから第一試合なのに、陽介は一人部屋で反省会か~」
散々チームメイトにビビらされながら向かった119号室。
ドアを開ける勇気がなかなか出ないでいると、ガチャとドアが開いて監督の顔がニヤッ・・・
「おー、陽介やっと来たか、中へ入れ」
「えっ~中へ?・・・殺される~」
・・・と、恐る恐る部屋の奥へと進む次男。
監督が何かを掴むとそれを勢いよく次男の顔目がけてバシーッと殴りつけ・・・・いや、違った、間違い・・・殴りつけてない(笑)、次男の顔の前に差し出した。
「おいっ陽介、開けてみろ」
監督が差し出した袋の中を覗き込む次男。
「それで、相手のチーム片づけてこい」
「へいっ、ボス・・・」
・・・って、いやいやこれも違う(笑)、どうも今日は話が逸れる。
ではもう一度・・・
監督が差し出した袋の中身、そこにあったのは・・・
憧れのピンストライプのユニフォーム!!
次男が所属する野球チームは15歳以下のバンタム、16~17歳のジュニア、17~18歳のシニアの三編成で出来ていて、14歳の次男がプレーするのは一番下のバンタムチーム。
一つ上のジュニアの中には去年まで一緒にプレーした子や友人などもいるが、その上のシニアになると雲の上の存在。中学生が高校の高学年チームに憧れるようなもの。
そして同じ系列チームとは言え、バンタムとシニアではユニフォームも全く別。
ピンストライプのユニフォームは、そんな憧れのシニアチームが着る服なのだ。
次男が驚いた顔でユニフォームを眺めていると
「おいっ陽介、お前今日の第一試合出なくて良いから、シニアの試合に出てこい」
「えっ、シニア?俺だけ?…ジュニアじゃなくてシニア?」
「なんだ、いやか?」
「いえっ、行きます行きます、行きたいです!」
・・・と言う事で、一緒に遠征に出ていたシニアチームに突然一人だけ合流する事に。
監督やコーチからは・・・
「なんだ、あのベンチの隅にいるちっこい奴は」
そんな声が聞こえて来て次男が顔を上げると・・・
「おっ~陽介じゃねーか、お前ここで何してるんだ」
「すげーなージュニアふっ飛ばしてシニアに来たのか」
シニアもなぜか既に皆が次男の事を知っていて、よってたかっていじくりまわされて、正に借りて来た子猫状態に(笑)。
結局この日、次男はセカンドとして先発出場し、3打数1安打でヒットも打てたのですが、出てくる言葉は・・・
「セカンド守ってたら、とんでもなく打球が速くて、一回はじいてエラーしちゃったんだ」
・・・と失敗の話ばかり。
「飛ばされるほど小さかねーよ!」
次男は悔しそうにして見せたが、僕は直ぐに感じた・・・
彼がとても嬉しそうだと言う事を。
シニアの試合に突然出て3打数1安打は上出来だ。守備も一回エラーしたとは言え無難にこなした、自信を持って自慢したっておかしくない。
何かに向かって目を輝かせながら夢中になれる、そんな目標を見つける事の出来たシニアの試合。
たかが一試合、でもそれが彼にとってとても貴重なターニングポイントになるかもしれないな~・・・と親ばかな僕は一人なぜかニヤニヤしています。












