
2月22日に「詩の時間」シリーズ刊行イベントとして、表参道で詩人の谷郁雄さんと対談イベントを開催しました。
当日の内容をライターさんに書き起こしてもらいましたので、数回に分けて掲載します。
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「詩の時間」の会
~オープニング~
(以下、敬称略)
松崎:谷さんとは何度もお会いしていまして、『詩の時間』シリーズを発行した出版社、ポエムピース社長の松崎と言います。
谷:僕が紹介しましょうか。松崎さんは、僕も付き合い長いんですけど、以前、別の大きな出版社の社長をされていまして。力のある方なので、また色々手広く出版を始められて。その付き合いの中で、吉本ばななさんと一緒に『バナナタニ園』というちょっと変わった本を松崎さんが経営するポエムピースさんから出版してもらいました。そんなご縁もあり、今回の『詩の時間』シリーズも二人で始めることになりましたね。
ご自身も子供のころから詩に興味があって、詩を書いていらっしゃったので、詩人でもあり出版社の社長でもあるということをずっと続けてこられた、ちょっと珍しい方です。
その流れの中で、お互い詩を書いたりしているので、一緒にやろうという話になって、このたび本が完成しました。
松崎:詩というものがね、割と特別なモノみたいな扱われ方を世の中でされていて。自分にとってはとても自然なものなんだけれども、例えば、『最近の詩人、何人知っていますか?』と聞いたときに、1人も名前が出ないような特別な世界みたいな感じで、『何があるのかな?』と思われているような状況が詩にとって不幸だなと思っていまして。
中学や高校の頃に読んだ現代詩とか、すごく面白いものがあって。本の中で紹介されていて、こういう風に読むんだよと、たまたまそういうものに出会って、詩の面白さを知って、自分でも書いていて思うんですけど。もちろん、興味があったにせよ、なんか細い道をずっと来て、詩と付き合うという感じがしていて。詩をもっと広い場所に出して、みんなが読める、その魅力に触れ合える場所にしたいという願いがずっとありましてね。以前やっていた出版社でもそういう願いがあって。その中で僕も谷さんと人の紹介で出会ったのですが、気付いたら今谷さんがね、写真家と一緒にコラボレーションして。非常にデザイン性も優れた、写真詩集と言っても良いかもしれないんですけれども。
谷:たくさんやりましたね、写真家の人たちと一緒に。
松崎:それが素晴らしいものが多くて。
写真もやっぱりそんなに売れる世界ではない。特にデビューしたての人はそんなに売れるものではなくて。
「売れないもの×売れないもの」をやったときに、普通は『もっと売れなくなるんじゃないか』という気がするんですけれども、そんなことはなくて。
やっぱりそこに新しい世界のページというか、入ってきやすさという回路が詩にとってできているし、写真にとっても同じことが言えると思うんですよね。
詩をとっかかりに、写真を読むきっかけができるというか、写真を眺める、見入ることができるようになるというか。そういう本を次から次へと手掛けていて、すごい人だなと思ったんですけど、本人とお会いしていると全然すごい感じがしなくて。ちょっと突き飛ばしたら倒れちゃいそうな人だな(笑)、と。
谷:けっこう普通のことをやっていて、普段の生活はごく普通でしょ。その中で、詩だけにはこだわって続けてきたんですけれども、他の人が詩にこだわってやっているのとそれほど変わらないと思うんですよね。
詩といっても僕の場合は、そんなにそう言葉を飾ったりとかしている暇があったら、なるべくたくさん書きたいという、そういう気持ちで今までやってきました。
そういうものを今までたくさん出版してきましたけれども、今回、これまでと違っているのが、原点回帰ではないけど、言葉だけに一回戻ろうと思って。
写真家やイラストレーターとのコラボレーションをいったんやめて、もう一回昔書いていたように言葉だけで本をつくりたいなと思って。
そのタイミングで、松崎さんに作品を見てもらったりしながら、どういう風につくっていったら良いかなと。
これは久しぶりに本当に久しぶりに言葉だけの詩集になりましたね。
まあ、ご覧になったら分かるとおり、デザインが寄藤文平さんという有名、人気な……。
松崎:谷さんがずっと信頼されている方ですよね。
谷:文平さんとの付き合いは僕も長いので、今は超売れっ子になってしまって忙しい方ですけれども、超売れっ子になる前の段階でお付き合いを始めて、僕の詩集のデザインとかをしてもらっていたんですけれども。
今回もこの本が角が丸いんですよ。いつもすごい発想をしてくれるんだけれども、つくるのが大変なんですよ(笑)。
松崎:これ型抜きがほとんど手抜き、手で抜いているんですね。
谷:可愛い本になりましたよね。中が包装紙で、ツルツルとざらざらが交互にあるんですけれども。
松崎:水をはじくような紙と優しい和紙のような手触りの紙になっていますね。印刷自体は少し裏が透けるような感じですけれども、透け感も良いし。カバー自体も包装用のボール紙で、ボール紙の色は見ることができないぐらいなんですね。
谷:白いところにボール紙の地の色が出ているんですよね。
松崎:地の色を隠すためにオペーク白という後ろの色を見えないようにするようなインクを使って、でも黄色など薄い色の部分は後ろの色が透けて、この色を醸し出しているという形になっていますね。
谷:面白いですね。
松崎:谷さんは青田買いですよね。デザイナーの方を。
谷:違うんですよ。文平さんはすごい方で、次々とアイデアを出してくるんですけれども、普通できっこないということをやろうとするんですよ、とりあえず。
それで、ひどいときは表紙のない本をつくりませんか、とか。そういうことを言ったりとかする人なんで、編集者がビックリしてしまって、たまに引かれてしまうこともあるんですけれども……(笑)。
でも普通本って、そんなにお金をかけられるものではないんですよね。一般的にコストの問題もあるので、コストを抑えつつ、見栄えが良いようにつくるということで、だいたいつくり方の方法論は決まっているんですけれども、僕の本の場合、詩集ということもあるので、写真家とのコラボレーションもやってきたので、遊べると文平さんは思ったらしくて。
僕が行くたびに毎回、仕事って顔じゃないんですよね。
ここで新しいこと、変わったことをしたいという。
編集者はすごく困った顔しているんですけれどもね(笑)。お金の計算もしなくちゃいけないし。
でも、かなりの部分は実現しているんですよね。
vol.2に続く
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○出演者プロフィール○
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谷郁雄(たに・いくお)
1955 年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。
大学在学中より詩作を始め、78 年に大学を中退後、上京。
90 年に『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。
93 年『マンハッタンの夕焼け』が小説家の辻邦生の目にとまり、第3回ドゥマゴ文学賞の最終候補作に。
詩集に『自分にふさわしい場所』『日々はそれでも輝いて』『無用のかがやき』『思春期』『愛の詩集』『透明人間 再出発』『バンドは旅するその先へ』『バナナタニ園』他多数。
詩集の他に、自伝的エッセイ集『谷郁雄エッセイ集 日々はそれでも輝いて』などがある。
いくつかの作品は、信長貴富氏らの作曲により、合唱曲にもなっている。
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松崎義行(まつざき・よしゆき)
1964 年東京・吉祥寺生まれ。15歳のときに「童女M」でデビュー。
谷川俊太郎らと詩のデザインレーベルoblaatを設立。顕微鏡で読むガラスの詩集や、詩の電光掲示板「ポエツリー」などを制作、SUPPORT YOUR LOCAL POET と題して朗読会のシリーズを実施。
2012 年、東日本大震災後の「心の復興」を目的に福島で活動。「ここは花の島」(合唱曲=谷川賢作作曲、写真詩集)、「自分らしさを咲かせて」(トリ音/作曲・歌)をリリース。
2014 年、みちるのペンネームで「心の傷を治す本・10 秒の詩」を出版。
2016 年より札幌ポエムファクトリーの指導員を務める。
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ポエムピース「詩の時間」シリーズ
『大切なことは小さな字で書いてある』(谷郁雄)、
『幸せは搾取されない』(松崎義行)は
全国の書店、アマゾン、ヤフーストアにて好評発売中です!
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