ゴーストハンターはゴーストをハントできないのだ | のろ猫プーデルのひゃっぺん飯  おかわりっ!!

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飛びすさって行くような毎日の覚え書き。
私はここにいます、の印。

ここのところyou tubeばかり見ている。

夜も更けたころ、一人ヘッドフォン装着で見るのは心霊番組だ。

外出もせずにずっと家にいるから刺激が欲しいのかもしれない。

 

見るのはもっぱら海外ものだ。日本の、特にテレビ番組は出演者がヒーヒーワーワーわめいて騒がしい。スタジオにはたいていにぎやかしのアイドルの女の子がいて、ちょっとしたことで悲鳴を上げる。時には涙を流す。「具合が悪くなった」とフラフラしだす場合もある。

カメラはそんな様子を「どうだ、視聴者よ。びっくりしたか!」とばかりに映しだすが、こっちは泣いてる女の子が見たくてチャンネルを合わせたんじゃないんだよ。

「なんでこんな小娘をスタジオに入れるんだ!」

 スタジオ見学の素人が画面に紛れ込んだかのように母は怒る。

「こういうのを映せば視聴者が喜ぶと思っているのが腹立たしいね」

 と私も毒づく。

「すぐに憑霊されるような弱っちいやつを呼ぶな!」

「最初から粗塩持ってスタジオ入りしとけ、と言いたいよね!」

 

 それに比べて英国の心霊番組は落ち着いたものだ。

 次の写真はいわくつきの人形を紹介しているところだが、余計なものを削いだスタジオはまるで「徹子の部屋」のようである。

 

 

放送中、人形の座ったロッキングチェアがひとりでに揺れ始めるというハプニングがあったのだが、そんな中でも誰も悲鳴を上げたりしない。

「おや、椅子が揺れ始めましたよ」

 と司会者が指さしただけだ。静かにインタビューは進む。人形の座った椅子も静かにキコキコ揺れている。この方がよっぽど凄みがある。

 

今やyou tubeにはこうした動画が山とある。テレビ番組だけでなく、偶然撮れた心霊画像の紹介や、ゴーストハンターと称する心霊系ユーチューバーの廃墟探索などもフェイクや勘違いに混じってゴロゴロ出てくる。

いわくつきの家も、心霊スポットも世界中にあるし、のこのこ出かけていく野次馬も世界中いたるところにいる。

心霊スポットに好奇心で赴くことを我々は肝試しと呼ぶが、欧米ではゴーストハントと呼ぶ。

ゴーストハントに出かけていく人はゴーストハンターだが彼らがゴーストをハントしているところは見たことがない。そりゃそうだ。だって狩りの相手は見えないんだもの。

ゴーストハンターはみょうちきりんな機械を持っている。スピリットボックスという霊の発する周波数を言葉に変える機械とか、電磁波を計測するEMFリーダー、レーザーグリッドという空間に赤い格子状の模様を投影して見えないものの動きを探る機械などだ。定点カメラの設置も忘れてはならない。

ゴーストハンターにとって霊は研究対象なのである。彼らの芯にあるのは好奇心に他ならない。

「成仏させてやろう」などとはゆめゆめ思っていない。この辺りは宗教観の違いかもしれない。

 

ゴーストハンターはスピリットボックスに向かって話しかける。

「もしいるなら何か動かしてくれ」

「名前は何という?」

見ていていつも私は思う。勝手に人の住処に入ってきた見ず知らずの連中になんで霊が律儀に答えてやらなくてはならんのだ。

私が霊なら無視する。

とはいえへっぴり腰でみょうちきりんな機械を操っている彼らをからかいたい気持ちもちょっと湧くので

「何が望みだ?」

なんて質問には

「血だ!」

と答えてみたりする。

実際、そういう答えがスピリットボックスから流れてくる画像があった。

ゴーストハンターたちは顔を見合わせて慄いていたが、もうこれなんか完全におちょくっているのだ。答えた後ゲラゲラ笑う声がボックスから聞こえてきたが、悪魔の哄笑というより自分で自分の答えにツボって笑っているようにしか思えなかった。

「血」って答え、あまりにもベタ過ぎるではないか。もうひとひねり欲しい。

ゴーストハンターはゴーストをハントできない。それどころか場合によっては自分がハントされて(狩られて)しまう危険がある。あの世に首を突っ込みすぎるとあの世とのパイプが太くなって後戻りできなくなるからだ。たとえば怪異が自宅にまで起こり始める、頭痛や幻聴に悩まされるようになる、といった現象が起こる。

 

本気でゴーストハントするつもりなら武器を携えるしかない。

見えない相手でも立ち向かえる武器が一つだけあるのだ。

信仰心である。

キリスト教でも仏教でもイスラム教でもいい。自分の心をゆだねる神様と普段から強いパイプを作っておけば異形の存在は入り込めない。

動画の一つにこんなのがあった。サウジアラビアのゴーストハンターが廃墟の中で怪異に合った時のことだ。彼は最初から腰が引けているのだが、廊下の真ん中で垂直に立っているデッキブラシに出会った時は(これには圧倒された)いよいよコーランを唱える声に力が入った。けれどいくら彼が「神は偉大なり!」と唱えても怪異の勢いは衰えず、立っていたデッキブラシは吹っ飛び、階段を駆け下りる彼の背中スレスレに金属板が降ってきた。

それをコーランに力がないせいだ、と考えるのは間違いだ。力がないのはコーランではなく、コーランを信じる彼の心そのものなのである。

聖書の一節も、ご真言も、お経も、その力を信じる思いがその言葉に魂を宿す。神様とのパイプが言霊を宿し、邪な存在を圧倒するのだ。

肉体を持たない霊魂はすべて見抜いている。

こっくりさんがこちらの思いを見抜いて小さな当てものするように、ゴーストハンターが面白半分で近づいてきただけの弱者であることを見抜いている。

ゴーストハンターに必要なのはいろんな機械ではない。神への祈りと感謝なのだ。

もっとも深い信仰がある人はゴーストハントなんてしないだろうけど。

 

ちなみに悲鳴を上げて逃げ出すユーチュバーが多い中、すさまじい怪奇現象の中でたった一人で一晩過ごす豪胆な人がいる。

ティム・モロゾフというロシア人だ。

一応、下に二つほど動画を紹介しました。こうした動画が苦手な方のためにずっと下の方に貼っておきます。なおかつ苦手な方のために説明すると箪笥の上のアコーディオンのふいごが動いて音を鳴らし始める、椅子が動く、弾の入っていない猟銃が彼に銃口を向け安全装置を外して引き金を引く、部屋にかけてあるカーテンが人の形にふくらむ、勝手にドアがしまり椅子が動いてバリケードを築く、などなど。相手は敵意むき出しだ。

ティムはそこにたった一人で泊まる。

もしオリンピックに「ゴーストハント」の種目ができたら、間違いなく金メダルは彼だろう。

ロシア人強いなぁ。東洋人は全体に意気地がない。中国人の二人組がいわくつきの廃墟でこっくりさんをするのだがケンカを始めた挙句、起こった怪奇現象に二人そろって「うわーっ」と逃げ出した。

ユン・ピョウとサモ・ハン・キンポーで映画化したいくらいおもしろかった。

心霊動画にはそんな楽しみ方もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティム・モロゾフは二作目です。

ご覧のyou tubeは「spooky hotel」。世界中の恐怖動画に日本語字幕をつけてくれているので助かります。

 

 

 

この人がティム・モロゾフ。男前だと思う。