- 谷崎 潤一郎
- 細雪
- ☆☆☆
美しい日本語で書かれた古典。
大阪船場(大阪経済の中心地。豊臣秀吉が大阪城下町経営のため商人を集めて形成)に古くからある
旧家、蒔岡家の4姉妹を主人公に、その家族の人間模様を昭和10年代の上方上流家庭の生活を
織り交ぜながら描かれている。
新潮出版版の文庫だと上中下の3巻に渡る大作である。
とくに盛り上がりを見せるドラマというか、物語の終着点というものはない。
あえて言えば、一家の悩みの種である3女雪子の結婚問題と、
4女妙子の自由な生き方であろうか。
その両方とも、現代の一般家庭ではなんの問題にもならないのが
なんとなく皮肉を感じさせる。
細雪(細かい雪、まばらに降る雪)という題名であるように
たぶん4人姉妹の中でも雪子に作者は一番心を砕いてあるのだろう。
恥ずかしがりやで、自分の気持をすぐには示さず、物静かな雪子は
まさに深窓の令嬢といった風で、昭和初期には美徳とされたものをもっていた。
ただ、現代に住む私としては、正直そんな雪子には思いいれが持てず
むしろ奔放に生きる妙子を応援してしまう。
関西のいろいろな地名がでてくるので、関西出身だったら
もっと場所に馴染みがあって楽しめるのだろうなと思った。