- 蓮見 圭一
- 水曜の朝、午前三時
- ☆☆☆☆
古典のようなきれいな小説だった。
45歳の女性が死を前に、娘のためにテープを残す。
そのテープの中には直美が大阪万博のホステスとして働いていた23歳のときに
恋し、分かれた恋物語が吹き込まれていた。
A級戦犯を祖父にもつ直美は、その家庭のうちに戦争の影を引きずる。
舞台は70年代。そんな家庭から逃れるために大阪万博のホステスに応募する。
大阪では将来の外交官として嘱望されていた白石がいた。
恋人になった白石は、突然姿を消す。その背後には民族問題があった。
真相を知り、逃げるように分かれた直美。
彼女は白石の影を引きずりながら他の男と家庭をもつ。
直美が一人称で語る形式なので、読みにくいかと思ったら
きれいな文章が続き、すーっと入ってきた。
ところどころに印象的な文章がちりばめられている。
後に悔いを残したくなかったら、言うべきかどうか迷うようなことは
言わずにおくべきだ。
口にしてみて自分でも初めてそれと分かる真実もあるのです。
人間は、選択して決意した瞬間に飛躍する,(キルケゴール)
運命というものは私たちが考えているよりもずっと気まぐれなのです。
昨日の怒りや哀しみが、明日には何物にも代え難い喜びに変わっているかもしれないし
事実、この人生はそうしたことの繰り返しなのです。
私は失敗を楽しめるほどに成長することができたのです。
差別する感情の底にあるのは恐怖心に他ならない。
文庫版の池上冬樹氏の解説もいい。