ドイツ連邦共和国の北部
山口県での父の葬儀を終え、帰りは新幹線を使います。朝一番の「のぞみ」に乗り込みますが、さすがに、四時間半の乗車は、長く感じます。サンドイッチとコーヒーの朝食をゆっくり摂っても、費やす時間はたかが知れています。そんなわけで、前の座席の背もたれに挟まれている総合情報月刊誌「Wedge」に手が伸びるのも、時間の問題でした。「Wedge」の意味は、「くさび」。「アッパーミドルクラスのビジネスパーソン」を想定読者としているとのことで、記事の内容は政治・思想的主張がかなり濃いのが特徴です。ウクライナ戦争を背景とした中国との外交問題とか、行政のIT化が進まない理由等々、真面目な記事がひたすら続きます。
そんな中で、いきなりのアニメの紹介記事。「SPY×FAMILY」というアニメを絶賛する記事でした。週刊少年ジャンプで一番人気の漫画のアニメ化ということです。舞台は架空の国でのスパイ任務。主人公である凄腕のスパイ「黄昏」に課せられた最重要任務は、なんと家族を作ること。他人を信用せず、運にも頼らない黄昏。そんな緻密な彼が、孤児院から引き取った少女（実は人のこころを読めるエスパー）と洋服の仕立て屋で知り合った女性（実は超天然の殺し屋）に完全に翻弄される様がとても面白いとのこと。こうなると、気になって、気になって仕方がありません。帰宅後、早速「Desny+」で視聴します。
で、いや、これは、本当に面白い。回を追うごとに面白くなっていきます。「カリオストロの城」のような破天荒なドタバタ冒険活劇でもありつつ、最終的には「赤毛のアン」のようなココロ暖まるハートフルなファミリー物語として落ち着きます。家族を作ろうとするスパイ・エスパー・殺し屋と３人のキャラがめちゃくちゃ際立っていますが、相手に無理はさせまいとお互いに気遣う姿勢が、家族としての団結力を生み、情け容赦なく降りかかってくる難題奇問を見事に？解決していきます。なので、すっかりはまっています。
架空の国オスタニア。そして、欧風の街並みを路面電車が走る首都のバーリント。ツボにはまる理由は、架空の国で、欧風の街並みという世界が舞台になっているという理由もあります。大人のおとぎ話とも言える「ルリタニアン・ロマンス」という分野の作品群を思い出します。「ルリタニアン・ロマンス」というのは、19世紀末〜20世紀初頭の中東欧の架空の国を舞台とし、支配階級を中心としたロマンスと陰謀の物語であり、名誉、忠誠、愛がテーマであり、正当な皇位もしくは政権の継承が絡み合った作品です。本作品は、アニメ「アリソンとリリア」のように、架空の大陸に存在する敵対する２つの架空の国が描かれていますが、その地図をよく見れば、実際のドイツ連邦共和国の北部が描かれていて、２つの国の境界線は、鉄のカーテンと言われた、かつての東西ドイツ国境のようです。それで、懐かしさを感じるのかも知れません。
最後に、ルリタニアン・ロマンスを彷彿とさせる美しい架空の国々をご案内しましょう。
■カリオストロ公国
宮崎駿さんのルパン三世「カリオストロの城」に登場する、風光明媚、世界で一番小さい国連加盟国です。
■ルリタニア王国
「ルリタニアン・ロマンス」の名前の由来となった「ゼンダ城の虜」に登場する王国です。ノスタルジアの空気に満ち、おとぎ話のような世界を冒険できます。
■アップフェルラント王国
「ゼンダ城の虜」に倣って、田中芳樹さんが書き上げた冒険小説「アップフェルラント物語」に登場します。王国は、ポーランド・シレジア・ザクセン・ボヘミアに接する山国。その国の首都のシャルロッテンブルク駅に停車した列車のコンパートメントから物語は始まります。
■バルカニア共和国
織田裕二主演の映画「アマルフィ 女神の報酬」に登場する国。バルカニア共和国が直接映し出される訳ではないのですが、イタリアの美しい町並みと、クリスマスのにぎやかな飾り付けとの組み合わせが見事にマッチしていて、１２５分の素敵な映像に見とれてしまいました。きっと、バルカニア共和国も美しい国なのでしょう。国名からバルカン半島に存在すると推測します。
■オルシニア国
「ゲド戦記」で有名な、アーシュラ・Ｋ・ル＝グウィンの作品「マラフレナ」に登場する東欧の美しい国。ル＝グウィンが紡ぎだす言葉は、一つ一つが美しいので、素敵な世界に魅了されます。「オルシニア国物語」では、オルシニア国の年代別の短編を集めています。
なお、「SPY×FAMILY」ですが、第２クールがこの秋の10月よりテレビ東京系列で放送開始とのことです。
さあ、今日も地図を広げて、
たまには変装でもして、冒険にでかけましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。