家内の誕生日祝いをかねて、平日の金曜日に休みを取り、一泊旅行に出かけることにしました。
毎日、千葉から東京の府中まで片道二時間ほどの通勤をしており、新宿駅の尋常ではない賑わいと混雑を肌身で感じていますが、いちおう緊急事態宣言発令中なので、とりあえずの旅行先は千葉県内としました。
家内の好みは、海が見える風光明媚な場所。砂浜ではなく、小さな岬に囲まれた入り江を見下ろすような風景がお気に入りのようです。宿泊施設に関していえば、和風ではなく、明らかに洋風でしょう。ペンション風で、家具などの調度は欧風。畳のない部屋、そしてベッドがある部屋です。家内は長野県の純粋に田舎の和風の家で生まれ育っているので、ベッドにはかなりの憧れがあるようです。
私の場合は、子供の頃から、ベッドでの入院生活が長く、住んでいた小さい社宅の自分の部屋にはベッドを入れてもらっていました。その経験から言えば、ベッドの存在は明らかに部屋を狭くしてしまうと確信しています。なので、結婚してからも布団を敷くという生活を貫き通しています。個人的には、畳み一帖分の敷布団も横幅が広過ぎると感じています。
ということで、普通のホテルを探しはじめますが、ここで安房鴨川にあるというアンティークホテルのことを思い出します。結婚当初、松本の花月という旅館に泊まったことがあり、家内はとても喜んでいました。和洋折衷ともいうべき旅館で、あとで調べてみると、アンティークホテルに分類されるとか。であれば、「アンティークホテル」というキーワードで全国の宿泊施設を調べまくったことがあり、安房鴨川のアンティークホテルの存在を知ることができたのです。でも、房総半島の旅行というのは、同じ県内であるのに、どうにも馴染むことができず、そのままとなっていました。でも、昨年からの新型コロナの影響で、房総半島を少しずつ歩くにつれ、少しは見直すようになりました。それに、安房鴨川といえば、魚見台展望台があり、もう一度訪れてみるのも良いかと思ったのです。
さて、旅行の当日です。木更津駅までグリーン車。木更津駅のコインロッカーに荷物を預けたら、川崎駅行きのバスに乗車します。もちろん、川崎駅は神奈川県で県外となるので、海ホタルで下車。つまり、木更津市にある海ホタルを見学します。海ホタルは、完成して直ぐに職場の後輩の車に乗せてもらって、一度だけ見学したことがあるだけです。家内はもちろんはじめて。下車したバス停は2階デッキにあり、中央部にあるエスカレータで真っ直ぐに最上デッキに向かいます。360度の海の風景に、家内もすっかり満足しています。早目の昼食を取り、しばらく散策したあと、再びバスで木更津方面に戻りました。
木更津駅からは、始発の上総一宮行きの各駅列車で安房鴨川へ向かいます。
平日の内房線は特急列車が走りません。休日でも特急の本数は少なく、運転免許を持たない旅人には、なかなか厄介な観光地です。2両編成でしたが、海側のボックス席に座ることができ、穏やかな東京湾を見ながら、車窓を楽しみます。千倉駅を過ぎてからは太平洋の荒波が望めました。
安房鴨川駅からは、タクシーでホテルへ。くねくねと坂道を登り続け、着いたところは、想像以上にアンティークな別世界でした。エントランスに降り立ち、周囲を見回します。南欧のようなホテルの外観に地中海風のテラス、その先に見えるのは、小さな入り江の向こうに広がる太平洋という風景に、気分はすっかり夏休みです。玄関に入り、カウンターで受付を済ませ、部屋まで案内してもらいます。古風な食堂に、額や鏡で飾られた真っ直ぐではない通路、その両サイドには骨董品で飾られた談話室、複雑な構造の階段、ギリシア風の庭池、それらを通り過ぎながら部屋へと導かれます。
部屋の内部もアンティークな文机と家具と寝台。一つ一つに歴史がありそうです。あいにくと、無料のWiFiは電波が弱く、地理的に4Gも繋がりにくいようです。でも、このホテルにネットは不用でしょう。テレビもありますが、テレビを見ようという気にはなりませんでした。いつも、ホテルに泊まると、反射的にテレビのスイッチを入れてしまう私ですが、珍しいことです。なんというか、ゆったりとくつろげる部屋なのです。
食堂といっても、ほぼ個室のような部屋で夕食。お任せのフランス料理のコースです。地元の野菜と魚介類を使ったオードブルに、捕れたばかりのイワサの魚料理と鴨料理。デザートに至るまで、すっかり味わい尽くしました。
食後は、散歩です。ホテルから魚見塚展望台まで、15分ほどの距離。これまた360度の安房鴨川の夜景を存分に楽しみます。散歩後は、貸しきりの展望風呂で入浴。今夜は、うちら夫婦一組だけの宿泊のようです。展望風呂の隣は、遊戯室。まるで、鹿鳴館時代の映画の世界。実際、このホテルはドラマや映画でよく使われているとのこと。この6月の後半も「金田一耕助」かなにかの撮影で全室貸しきりになるとか。
翌日の早朝、再び展望台までウォーキング。さらに、朝食の時間までテラスや庭を歩き回ります。食事の時間となり、昨日と同じ部屋で、これまた美味しい朝食をいただきます。
帰りは、丘を下るだけなので、タクシーを呼ばず、歩いて安房鴨川駅へ。入り江に浮かぶ安房松島を間近に見ながら、小さな鴨川漁港へ続く道を進み、かもがわマリーンブリッジで加茂川を渡ればリゾート気分の前原海水浴場。実に変化に富んだウォーキングコースでした。安房鴨川からは、外房を走る特急「わかしお」で千葉市内へと戻りました。







