大寒や右手左手ポキと折れ/辻桃子 | 葉音ののんびりブログ

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1週間ほど、入院をしています。
そのことを言ったら、みなさんから

「入院百句をぜひ!」
とのお声がたくさんあせるあせるあせる

自分の句はなかなか詠めないので、辻桃子先生が、2年ほど前に骨折して、手術入院された時の句を何句かご紹介します。

大寒や右手左手ポキと折れ
桃子先生が骨折をされたのは、1月15日だそうです。1年で、1番寒い大寒。私は、骨折の経験はないのですが、膝の靭帯が切れた時、ブチッという音がしたような気がしました。
自分の体内から聞こえる音というのは、何とも言えない恐怖感を伴うものです。
しかし、桃子先生は、それを「ポキと折れ」という、あっけらかんとした乾いた措辞で表していて、そこに、自分自身を客観的に見ている俳人としての強さも感じます。

大寒や恐怖ハ回復ナル証
前書に「医師曰ク」と書かれています。カタカナ表記を用いている部分が医師の言葉なのでしょう。確かに怪我でも病気でも、1番大変な時は、ただ直すことに必死で、どんなことにも耐えられるのかもしれません。痛みや治療への恐怖を感じるようになるのは、心に余裕が出てきた証拠。
カタカナ表記が医師の冷静な口ぶりを物語っているようです。

青あざの紫いろに日脚のぶ
青あざがだんだんに紫いろに変わっていく。「日脚伸ぶ」という措辞が、その時間の長さを感じさせます。反面、日脚が伸びていくのだから、良くなっているんだなぁという、安心感もあり。
こういうところが、やはり上手いな〜〜と思ってしまいます。

なんとまあ両腕折れて山覚める
「山覚める」という季語は、辻桃子先生・安部元気先生著の増補版「いちばんわかりやすい俳句歳時記」(主婦の友社)には、
眠っていた山(山眠るは冬の季語)が春になって目覚めること
とあります。折れてしまった両腕が冬の枯れ木のようにも感じられて、「なんとまあ」という明るい措辞に、少し諧謔味も感じられます。

頭蓋骨少し欠けては冴えかへる
頭蓋骨も少し骨折されたのでしょうか?
ここまであっけらかんと詠まれると、一層恐ろしく感じてしまいます。

包帯をごろごろ巻かれ室の花
「ごろごろ巻かれ」まるで、ミイラのようではありませんか。
次のような句もありました。
壊れたる木乃伊ロボット冬ごもり

退院の足が細りて日脚伸ぶ
入院するとあっという間に足が細くなってしまうんですよね。それでも「日脚伸ぶ」という季語から、退院の喜びを感じることができます。

今日で、入院2日目ですが、まだ全然句は浮かんできませんあせるあせるあせるあせる

明日は、いよいよ手術です。
さあ、どうなるかなグラサン

句は「童子」2017年4月号・5月号から抜粋しました。


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