田舎女 *ぽこ* のなんてことはない日々 -2ページ目

 田舎女 *ぽこ* のなんてことはない日々

   独立した娘2人を持つパートタイマー主婦です。
   ワインのこと、愛猫のこと、
   寒冷地のド田舎暮らしのこと・・
   思いつくままに。

映画「ピアノフォルテ」を観てきました。

 

ショパン国際ピアノコンクールの

18回大会(2021年)に出場した

ピアニスト数人を追った映画です。

 

 

2021年当時、私はYouTubdeで

予備予選からファイナルまで全て

大会の様子を視聴していたので、

そのときの記憶を辿りながら

映画を観たのですごく楽しめましたが、

ショパコンを見ていない夫でも

映画自体を楽しめたようです。

 

映画の中で特に印象深かったことを2つ

書きたいと思います。

 

まずはラオ・ハオの ”普通さ” です。

自宅は普通のマンションの一室、

無数の生活雑貨と家族に囲まれた空間の中

高校の試験勉強に追われたり

お母さんが料理をしているすぐ隣で

アップライトピアノで練習していたり。

こんな ”普通” の環境でいても

ショパコンのファイナリストになれるんだ・・

と、かなり驚きました。

 
本人の才能と努力、
先生やチャンスに恵まれる幸運、
そして多大な家族のサポートが
必要であることは言うまでもありませんが、
音楽家の子に生まれて才能を受け継ぐとか
大金持ちの家で防音設備のある広い部屋と
グランドピアノを持っているとか
そういう ”恵まれた” 境遇ではなくても、
才能と情熱がありそれを支えてくれる人がいれば
その才能を正しく開花させ
広い世界に飛び立つことができるんだな・・
ラオ・ハオの映像は
音楽を志すたくさんの人に
夢と勇気を与えたと思います。
 
余談ですが、このラオ・ハオの様子は
一種のサクセス・ストーリーではあるのですが、
彼のあまりに ”普通”な様子を淡々と撮影し
多くのコンテスタントの1エピソードとして
特別扱いせずフラットに編集している感じが
映画として好感が持てるなと思いました。
 
印象に残ったことふたつめは
エヴァ・ゲヴォルギヤンです。
ウエイト・トレーニングなど
ピアノのための体づくりをおこない、
安定剤代わりの小さな人形を持ち歩き、
コンクールのピアノ選定で悩みに悩み、
演奏前には緊張をほぐすおまじないをする・・
素晴らしい演奏の裏側には
17歳の女の子らしい素顔と同時に
常人では考えられないほど心血を注ぐ姿が
隠されているんだなと知りました。
 
また、ピアノの師匠にも
いろんなタイプの人がいると思いますが
エヴァの先生はものすごく毒舌で厳しいですね。
でもその先生をエヴァ自身は
とても信頼しているのが
映像からよく伝わってきました。
コンクールで演奏が終わり控え室に戻ると
すぐに先生に電話をかけ気持ちを伝えます。
その中でもいちばん印象的だったのは
ファイナルの審査結果が出た直後の会話でした。
 
(以下、ネタバレが嫌な人は
 次の段落を読まずに飛ばしてください)
 
審査結果がアナウンスされた直後に
込み上げる涙をこらえるエヴァ。
控え室に戻って泣きながら先生に電話し
「納得がいかない!」と叫ぶ声に、
スクリーンを見上げる私も
「私も同じ思いだよ!」と
心の中で叫びました。
というのも、大会当時(2021年)私は
彼女の素晴らしい演奏に惹かれて
ずっと応援していましたし
彼女が入賞を逃すとはつゆほども思っておらず
その結果にショックを受けたからです。
どういう審査が行われたのか
その基準と方法に訝しい思いを抱きさえしました。
側から観ているだけの私でさえこの有様です。
当事者であるエヴァはどれだけ
ショックだったことでしょう。
日頃から努力を惜しまず
コンクールで全力を出し
圧倒的な演奏を披露した、
世界で戦える実力を持つピアニスト。
とはいえまだ17歳の女の子。
審査結果に傷つき控え室でひとり泣いている
映画の中の彼女に私も心が痛みました。
納得できないのはあなただけじゃないよ、
私はあなたの演奏が素晴らしいと思ったよ、
世界中で同じ思いをしている人はたくさんいるよ、
と彼女に伝えてあげたい、
あなたはひとりじゃないよと抱きしめてあげたい、
そんなふうに思いました。
 
電話口で先生になだめられたエヴァ。
涙を隠しロビーで写真撮影に応じる姿、
審査員に感謝の言葉を伝える様子は、
とても健気で立派でした。
17歳の女の子はこうしてまた一段と強くなる・・
これからも様々な経験を重ねて成長を続け
彼女はどんな素晴らしいピアニストになるだろう・・
楽しみに見守っていきたいなと思いますし、
政治や世の流れなどに捻じ曲げられることなく
音楽への純粋な情熱と素晴らしい才能を
どうか素直に伸ばせますように・・と
祈らずにはいられません。
 
 
今年(2025年)の19回大会でもやはり
審査結果に対して釈然としない思いを抱きました。
やっとその気持ちが落ち着いてきたところで
この映画を観てまた心がザワついたわけですが、
もうコンクールとはそういうものだと
割り切るしかないのでしょうね。
そもそも芸術という数値化しにくいもので
誰もが納得するように順番をつけることが
無理筋なのだし、
無理だと分かった上で
コンクールを主催し参加するのです。
どうしても納得できないなら
参加しなければいいし観なければいいだけの話。
 
どうしたって審査員の好みや
大会としての方向性やさまざまな思惑、
場合によっては政治や世界情勢まで
審査結果には反映されてしまうのだし、
観ている側だって結局は自分の好みで
演奏の良し悪しを判断してしまうのだから、
100%納得できる結果などあるわけもなく、
そうとなれば審査結果などは気にせずに
「素晴らしい演奏を楽しみ
素晴らしいピアニストを発見できる場」
としてコンクールを楽しめばいいのだと、
個人的にはそんな結論に至りました。
 
次回のショパコンは
肩の力を抜いて鑑賞を楽しみたいです。
とか言いながら、やっぱり
お気に入りのピアニストのことは
どうしても応援したくなっちゃうのですけど。
 
  むらさき音符  ブルー音符  音符  ピンク音符  ブルー音符
 
映画を観に街まで出た際にお気に入りのお店で
数ヶ月ぶりのラーメンを食べました。
もちぷる皮の水餃子とエビの出汁が濃厚なラーメン。
どちらも最高に美味しかった〜グッ