家具が倒れ物が散乱する家の中
大きく揺れるビルの上層階
地割れし液状化する道路
煙や炎を上げる街並み
濁流に飲み込まれる家々
混乱の中で逃げ惑う人々
奇跡的に助かった人
亡くなった人
今までも被災地の様子を映したものを
何回か見たことがあった。
胸が痛んだけれど、
どこか映画でも見ているような
現実として受け入れられない感覚があった。
家族は皆無事で、
家も大きな被害はなく、
計画停電や放射線の恐怖はあるにしても、
もっと悲しく苦しい思いをされた方たちに比べたら
自分は被災していないも同然。
大丈夫、自分は幸運だ、大丈夫だ、
そう思いながら過ごしてきた。
でも細かいことはよく覚えていない。
揺れの直後に家でひとりどんなふうに過ごしたか、
学校にいた娘たちや仕事をしていた夫が
どんなふうに家に戻ってきて
どんな会話を交わしたか、
思い出そうとしても思い出せない。
それなのに10年も経った今になって、
東京や東北の見ず知らずの人たちの
被災した様子を映像で見て、
あの混乱した日々が実感として蘇るのは、なぜ?
涙が出て
鼓動が早まり
胃がキュッとせり上がり
喉が締め付けられ息ができなくなる。
身体中がスーッと冷たくなり震え出す。
あんな日々は二度とゴメンだ!と心が叫ぶ。
10年経った今になって、
結構ダメージを受けていたんだなと気づく。
平穏な日々や命がなすすべもなく奪われる恐怖。
天災(と戦争)が恐ろしくて仕方がない。
この穏やかな眠りがいつまでも続いて欲しい