我が家に来て12年、
娘たちに音楽の楽しさを教えてくれたピアノ。
日々の積み重ねの大切さ、
発表会やコンクールの緊張、
いろんなことを経験させてくれたピアノ。

娘たちに請われてピアノ教室に通わせ
ピアノを買うべきかどうか考えたとき、
どうせなら本物を体験させたいと
電子ピアノではなくアップライトピアノに決めた。
高い買い物だったけれど
娘たちが喜んで弾いてくれたから
頑張って買ってよかったと思った。
私は娘たちがピアノを弾く様子を見聴きするのが
とても楽しくて嬉しかった。
ときどき私も遊ばせてもらった。
習ったことがないから上手に弾けるわけじゃないけど
たどたどしくても
少しずつ弾けるようになる楽しさは感じたし、
日(気温や湿度)によって微妙に変わる音色や
指から全身に伝わる振動の心地よさを私なりに楽しんだ。
月日は流れ、娘たちは家を出て、
もうこのピアノを弾いてくれる人はいない。
ときどきは私が弾くかもしれないけれど・・
老後の楽しみに、ボケ防止に、
ピアノを弾くのもいいわねと思っていたけれど・・
もっとたくさん触ってくれる誰か、
もっと上手に弾いてくれる誰かのところに行った方が
このピアノも幸せなんじゃないかな。
最後は感謝を込めてピアノを磨いた。
相変わらず下手だけど、何曲か弾いた。

今までありがとうね。
どこかで私より上手な人にたくさん弾いてもらってね。