ツール・ド・フランスの休息日にランスの映画を観た。
"The Armstrong Lie"
ネットレンタルで日本語字幕版だけれど。
(ここには YouTube の英語版のリンクを貼っておく)
予告
& 本編
この映画を見ても結局のところ真実はよくわからない。
私がこの映画で自信を持ってわかったと言えるのは
ランスの人となりだけだ。
既にドーピング文化が出来上がっていたところに
闘争心旺盛な若者が飛び込んだ。
自分や自分の背負っているものを守るためなら
手段を選ばない性格だったランスは、
勝つために躊躇なく手を染め、嘘も厭わなかった。
そして、いろいろな人の証言を聞いて
見えてきたランスの人となりは、
敵にはとことん残虐だったけれど
身内(味方)には忠義を尽くすということだ。
ドーピングを続け勝利を重ね
背負うものが膨れ上がるにつれ嘘も巨大になり
かなりストレスフルな人生だったろうなと思う。
この映画が製作されている時点で
(ある程度)ドーピングや嘘について告白はしたものの
まだ守らねばならないものを抱えて
秘めている真実はあるようにも思う。
なんともスッキリしない感覚が残る映画だった。
いちどでも敵対してしまったが最後
人生を破壊されるような仕打ちを受けた人にとってみれば
ランスは悪魔のような人間かもしれないけれど、
ランス自身、味方になってくれる人のために
長年戦いの人生を歩んで相当な傷や疲労を負っているはず。
それも自分で蒔いた種といえばそれまでだけど。
ただ、背負うものの少ない人間なら
良心の呵責に耐えられなくなった時点で
(あるいはランスからの攻撃に耐えられなくなった時点で)
「いち抜~けた」と白状して、
一時は世間から責められても
そのあとは重荷のないスッキリした人生を送れるだろうけれど、
ランスにはあまりにも背負うもの、守るべきものがありすぎて
嘘で固めた人生から抜け出すことができないのだと思う。
ドーピングの蔓延していない時代に生きていたら
真のヒーローになり得ただろうに
(それだけの能力は充分にあったはず)と思うと、
時代に翻弄された気の毒な人とも思える。
自分の側に立つ人のためなら悪魔になれる、
そんな強さが彼の魅力(あくまでも私にとっては)で、
私がランスを憎みきれない理由はそれかなと思う。