無花果 42 | 独断と偏見の塊

独断と偏見の塊

妄想吐き出しブログ
スキップビートを中心とした漫画の妄想ネタを綴っています。
出版者様・原作者様とは一切関係ありません。

 

 - いつものように参内した俺は、執務室に向かう途中、ものすごい勢いで駆け抜けていくモノを見た -

 

 

「あれは・・・」

 

 

 - 何年経とうと、俺の目は勝手に彼女を捕らえ、追いかけてしまう -

 

 

「宰相、一度わが家へいらっしゃいませんか。妻が腕によりをかけてご馳走を用意すると言っています。それに、娘も喜びますし・・ぜひ」

 

「失礼。朝議には少し遅れると伝えてください」

 

「は、・・・え?ちょ、宰相?!」

 

 

 - 自分はもう敦賀蓮ではないのだから。別人なのだからと何度自分に言い聞かせようと、身体が、心が、彼女を求める -

 

 

「っく、ひっ・・ふえぇえ~・・・ダメなのに、なんで出て来ちゃうのよぉ~」

 

「・・・なにが、ダメなんですか?」

 

「!!!」

 

「王妃であるあなたが、どうしてこんなところで一人・・・蹲って泣いてるなんて、誰かに見られでもしたらどうするんですか」

 

 

 - 目の前で、子どものように涙を流す彼女の姿に、懐かしさを覚えた -

 

 

「っ・・・だ、て・・・」

 

「・・・」

 

「泣いちゃ、ダメなのに・・・」

 

「そうですね。まずはなぜ泣いていたのか 「笑って、おめでとうって言わなきゃいけないのに・・・」・・・」

 

 

 - あれから何年も経って、お互い大人で、王妃として振る舞う彼女の姿も知っているのに -

 

 

「め、めちゃくちゃに・・・しようとしたっ!」

 

「?」

 

「え、縁談なんかダメって、そんなこと言っちゃいけないのに・・・っ」

 

「縁談・・・?」

 

「蓮がっ・・・結婚するって・・・今日は顔合わせだって、でも、私っ・・・」

 

 

 - しゃくりあげて、何度も詰まらせながら、それでも一生懸命に話してくれる -

 

 

「嫌だ・・・いやだよぉ・・・蓮、蓮、蓮。うぅぅ~~」

 

 

 - 初めてあった頃の、幼い少女のような彼女の姿に、胸が締め付けられる。喉が詰まったように、うまく呼吸ができない -

 

 

「・・・・・・・キョーコ・・・」

 

 

 - 彼女の涙を、早く止めてあげたいのに・・・俺を想って流してくれていることが嬉しくて -

 

 

「・・・これ・・・魔法の石・・・キョーコが想いを込めてくれたから、俺・・・」

 

「っ・・・れん・・・」

 

「今度は、キョーコの涙が早く止まるように、俺が想いを込めておいたから」

 

「っうぅ~~~~~~~」

 

 

 - 久しぶりに触れた彼女の手のぬくもり、涙を一滴でさえ愛しい -

 

 

「キョー 「はい。そこまで」 !?!?」

 

「2人とも、ここがどこだかわかってんのか?」

 

 

 - 十年以上、抑えていたものが溢れて、自分でさえどうすることもできなくなった感情が、急速に冷やされ、現実に引き戻された -