稽留流産ということで、子宮内の血を吸引する手術を受けることになりました。
朝からちょっと不安で、夫にその事を伝えると
「わかるよ。僕も陸上競技の本番の時に怖気づいて監督にお腹の調子が悪いから出られないって言ってしまったことがあってね、勝手にしろ!って怒られたことがあったんだよ。」
「・・・あのね、私の場合はもう選択肢がないのよ。ちゃんと手術受けないと危険な状態になるかもしれないんだから、やめるという選択はできないの。だからあなたはその逃げられるという誘惑があった分、今の私の状況よりも苦しかったんじゃないかな?私はもう今日手術を受けるしかないから、逃げる気持ちは全然沸かないよ。なんか、全然違う話のような気がする。」
「いや、僕だって本当は選択肢なんてなかったんだよ。だって、そこで逃げたらそれまで費やした時間や苦労は水の泡なんだから。お腹痛いって言う事事態、あり得ないことだったのに僕は逃げようとしてんだよ。」
「う~ん・・・ただね、私は緊張してるっていう今の気持ちを伝えたかっただけ。一人で抱え込むなって言ってたでしょう?ま、いいや。いいよ。大丈夫だから。」
な~んて、まったく堂々巡りというかお門違いというか、後から考えてもよくわからない会話になったので、面倒になって話を打ち切り、病院に向かいました。
心電図は心拍60/分で、かなり遅いとのこと。リラックスしすぎで驚かれました。実はこのときの看護師さんがすごく優しい聖母のような雰囲気で、とっても落ち着いたんです。
その後お尻に鎮静剤を打たれました。これは、大抵の人は気持ちが不安定になって暴れたり落ち込んだりする為だったそうで、私には必要なかったみたいと後で言われました。あれから一日以上経っているのにまだお尻が痛いです。。
続けて栄養の点滴とブドウ糖の点滴をし、その間も夫が付き添ってくれたのでボーっとしながらもおしゃべりばかり。
というか、夫がほとんど一人でしゃべっていました。
明治時代の話、自分が点滴を受けたときに「途中でやめるわけにいかないのか」と看護師さんにしつこくきいて笑われたことを事細かに話したり、自分がふがいなくて申し訳ないと謝ってきたり、夫婦というのはこういう事なんだなぁと感傷にひたったり、まぁめまぐるしくいろんな事を話してました。きっと彼も緊張して、どうしたらいいかわからなかったものと思われます。
こちらも落ち着きたかったので、もう大丈夫だよと行って帰ってもらいました。そしてやっと落ち着いて眠れました。。(笑)
さて、前置きが長くなりましたが、いよいよ手術の時間になりました。初めて全身麻酔を経験したのですが、
はじめに『麻酔がよく効く薬』を肩にちょこっと。そして、点滴の中に『眠くなる薬』を注入。
「眠くなりませんか?」「まだみたいです。」「もう少しで眠くなりますよ~」「はい。あ~~・・・」
なにがなんだか・・・耳が聞こえなくなり、手術室に横たわっていたはずが、ぐぐぐっと頭が後ろに引っ張られる感覚で一瞬のうちにSF映画に出てくるような別世界にものすごい勢いで引っ張っていかれたみたいでした。ジェットコースターに乗っているような感覚で、自分の身体はありません。色はものっすごく明るい照明に照らされている、四角いオレンジが基調のような世界でした。
自分がどこに連れていかれるのかわからないまま、ものすごい勢いで色んな形に変化しながらその世界を進んでいきます。いやむしろ、私の形は無くて意識があるだけ。複雑すぎて理屈では理解できないような感覚を体験していくんです。
猛スピードで展開する世界を「あ、そういうことか」と理解しながらも、どんどん流されていきます。
グァ~ン、ゴーォ、ザーーというような雑音のような音が絶えずしていました。
わたし、どうなってるの?へぇ、本当はこの世界にはこんな世界もあったのね?と思いながら進んでいって一体いつまで続くんだろう?
もう手術をしていた事はまったく意識から抜けていて、新しい世界が展開していくことに興奮しながら必死についていこうとしていました。
どれだけ冒険をしたでしょうか、「終わりましたよ~」と言う声でその世界から抜けていきました。
だんだん意識が肉体の感覚を取り戻していって、身体がベッドに移されているときはものすごい数の手で何度も腰を揺らされた感じがして、世界がぐわんぐわんに揺れました。あ、手術している世界に戻ってきたんだ。と、とっても忙しい体験でした。もう、びっくり。
肉体に戻ると気持ち悪くて、お腹も痛くて、陣痛みたいな感覚でした。小さな声で歌を歌いながら気を紛らせてましたが、だんだんお腹の痛みが収まってきて、吐いたら急にラクになったので、さっそく手帳にワナワナの字でその体験をメモしました。
意識はずっと覚醒していたという感覚だったので、漢字もハッキリとすぐに頭に浮かぶし、これは睡眠とは全く違う体験でした。あまりの事に、「すごい・・・」と何度もつぶやいてました。
麻酔から醒めたときの気持ち悪さはもうできれば経験したくないです。。
でも肉体があることのありがたさが前より強くなっています。ご飯は美味しいし、全ての感覚が新鮮に思えます。