客 おい、昼寝してんのか
主 おお、君か。吃驚させるなよ。吉本の「遺書」を読んであんまりつまらないので飛ばし読みしたら寝ちゃったよ。
客 そんなもの、もう読むなよ。ふむふむ。1998年刊行の本の文庫本か、げっ660円もしやがるぜ。そう言えば
松本人志の本にもこんな題名あったんじゃないか。何々、自分が下田で死にかけた時、娘の友だちに霊感の
ある女がいてまだあんたのオヤジは向こうに行っていないって言われただって。死んだ姉ちゃんがこっち側に
ひっぱってくれた。なんかオーラの泉みたいな話だな。おいおい俺たちが吉本に求めているのはこんなことなの
か。
主 まあ、そういうなよ。俺は若い頃、「蕪村詩のイデオロギー」やあの「エリアンの手記と詩」には随分と感銘をうけ
たんだよな。それがここ何年もこんな垂れ流しの文章ばかりだぜ。吉本信者ならいざ知らずこんなものばかり
よまされちゃいやになるぜ。村上龍のなんとかいう小説が大したものだとか。馬鹿言ってるんじゃないよ。大体
40歳過ぎたまともな大人で村上龍読むなんてよっぽどの頓馬だぜ。
客 ああ、全くだな。何々またおもしろいこと書いてあるぜ。東大の先生と亜細亜大学の先生を四年間以上交代させれば
いい。もう爆笑問題のバラエティでいいそうなことだな。
主 でも俺、結構吉本の水難事故以来の口述筆記の本、結構読んでいるんだぜ。調度、素人が実証もろくすっぽしない
で書いているブログを見ているような読後感だけどさ。まあそりゃ俺もブログで適当なこと書いてるから大きなこと言え
ないけどさ。
客 昔から吉本って自分じゃ何もやらないで分析したり総括するからな。
主 そう言うなよ、俺たちだって何もやってなくてただ世間に流されていくだけなんだからさ。
客 埴谷雄高は革命家は何もしなくていい、どっかで革命的な思索をしてそれを啓示すればいいとか言っていたよな。
雲をつかむような話だが埴谷は子供を作らないということ、具体的には奥さんに堕胎を強いていたんだろ。
女性にとっては酷いことだが、現在の人間の存在を深く深く否定していた代償なんだろ。
主 なんか、最後の言い回しが埴谷みたいだな。埴谷は本気だったんだろ。
客 それにひきかえ吉本って無責任にべらべらトンデモ理論を垂れ流してるだけみたいだなよな。
主 だから、それが面白くてみんな買うんだよ。昔は他人に対する罵詈雑言で売っていまはトンデモ話ばっかだよ。
この本にこんなこと書いてあるぜ。
そのもっともわかりやすい目安は、日本の一般の民衆の意識です。たとえば経済面で見ると、いま自分たちの
生活が中流だと考えている人が九十一パーセントを占めるようになっています。過去の流れから推測して、九十九
パーセントの人が自分の生活が中流になったというようになるのは、そんなに遠くない。別の言葉でいえば、国家社会
に特別の要求はない。したがって関心も理想も切実にはいらないということです。そうなると、いま考えられているような
国家や社会は終わりになるでしょう。
この本が書かれたのは1998年だが、今、こんな楽観論を真に受ける奴はいないね。どういう根拠で言ってるのか
わからんが、確かに何らの実践が無い者がいうことじゃないかもな。細木数子の予言と同じようなもんだな。
客 もういいやこんな本の話は、でもどんな読書でも何か得るものがあるだろう。あれ?これ吉本がこんなこと言って
なかったかな。
主 そうねえ。なんだかんだ言っても吉本は向こうの思想家の本を良く読んでいるな。当たり前だがそれが素人とは
違うところだろうね。吉本の思想書といえる何冊かをちゃんと読むにはそれらの本を読んでからじゃないと批判も
理解もできないだろうな。みんな大して本を読んでいないで吉本を読むからかへんてこな吉本信者になっちゃう
んじゃないかね。俺も大して読んでないけどさ。それとフロイトは偉大だよ。結局みんなフロイトの世話になっている
よな。最後に一つこの本で三島の「仮面の告白」の生誕の場面を例に挙げていたが細部が少し違っていた。
そんなところだね。
客 そういえば「心的現象論」がでたらしいぜ。
主 いいよ。そんな話はもう。そうだ安くていい店がある。テンプラがうまいんだ。
客 そうだな、酒飲んで音楽の話でもしようや。