昨日、アマゾンからユリイカの増刊号「矢川澄子・不滅の少女」が届けられていた。そんなに矢川澄子がすきと
いうわけでもないのだが、この本昔アマゾンで見たとき8,000円もしていた。何日かまえアマゾンで検索してみる
と2000円のものが出荷されていたので購入。8,000円なら買わない。包装を解いてみて2,000円の理由が判
明。裏表紙に「リサイクル資料 日野市立図書館」のシールが張られている。要するに図書館の廃棄本だっ
たのだ。巷間で8,000円の高値で取引される雑誌を簡単に廃棄本にする市立図書館の馬鹿さ加減は相変わらず
であるが廃棄本で2,000円とはいい商売だと思った。まあそんなこんなでパラパラ読んでみたが、松山俊太郎
、佐藤亜紀、池田香代子の鼎談には驚いた。松山俊太郎って澁澤龍彦の盟友だと思っていたが、矢川のことも
澁澤のこともボロクソに言って途中で佐藤亜紀が気分を害したほどだ。今まで僕が知っている範囲だと矢川澄子
は澁澤に献身的に仕えていたという関係だが松山によると矢川のいうことは矛盾しており献身というのも誇大宣伝
のところもあり、人間っていうのはもともとの性格の他に、出会い方によって一種のマゾヒズムが誘発されるという
ことがあるでしょう。矢川さん本来のものではない自己犠牲は、澁澤さんがスポイルド・チャイルドとして勝手なこ
とをやっていて、そこに段々組み込まれていちゃったというこなんじゃないかな。と手厳しい。その他離婚に際して
の財産分与の話とか澁澤の母と矢川の関係とかかなり生臭い話に終始する。そのほか澁澤龍彦は文学者とし
てイマイチであったいう評価も下す。まあ確かに「高丘親王航海記」あたりは過大評価されすぎだし小説でもエッセ
ィでも無断借用が多すぎる。澁澤との生活で何回かの堕胎により子供が産めなくなったとういうことも結局は産む
産まないは女性の選択によるもので結局、女なんて必要としなかった澁澤なんて選んだほうが悪いと一刀両断で
ある。松田政男も澁澤夫妻のこどもを産まない生活について、産まないことに対して矢川はある文章では徹底した自
己犠牲を標榜し他の文章では澁澤に対して恨みを吐露しているとし困惑している。矢川の堕胎についての文章はこち
ら。土方巽はいい奴だ
多くの人間は何もせず死んで行き家族にさえも忘れられてしまうのだが、作家として名を残すとこんなにボロクソに
言われるものなのか。なんか苦い感想であるが。作家を良く理解ためには作家の生活も知らなくてはならないが
一番は作品でありその他は付随的なものだと思う。それにしても矢川が気の強い女で別れたあと小説でもかいて
澁澤のことをこき下ろしたらまた澁澤龍彦のイメージも変わっていたかもしれないし、現行では澁澤抜きには語ら
れることのない矢川だが作品に力があれば澁澤龍彦抜きで語られる時もくるだろう。
若い頃、この手の話を読んだりすると小説なんて書く奴は変な人間ばかりだと思ったが、それは違う。
人間なんて大方みんな変なのだ。澁澤のように女に愛情のない男も、他人にいいように使われて人生を終わってし
まう優柔不断な女も掃いて捨てるほどいる。別に文学に関わり合う人間だけがスポイルド・チャイルドということはない。
僕の見た限り大方の人間は変てこだ。