相変わらず仕事が終わって聖書に関する本を読んでいると
頭がおかしくなってくる。そりゃアブラハムがどうとか、
海が裂けるとか天使が雲の上から喇叭を吹くとかまともな
勤め人が読むもんじゃないよね。
今日は仕事の帰りに前の職場の人と安い焼肉屋で飲む。
密やかな夕暮れ、最後の晩餐を終えて最後の祈りをキリスト
がゲッセネマで行おうとする頃、地の民である僕はほたる苑
というファミレス系の焼肉屋でビールをコリント人の二人と
飲んでいた。二人は退職した校長先生で徴税人をしている。
僕たちは人の悪口を交えながら楽しく飲んだ。ま、このくらい
の事は砂漠の理不尽な神も許してくれるだろうさ。
コリントの地より僕はコリン星に行きたい。
そりゃゆうこりんのいる星のほうがいいに決まっている。
わたしはその空を視上げながら、キリストの祈を繰り返していた。
わたしはその時キリストの相も心もはっきりと描くことが出来た。
声さえも、そしてキリストの寂しささえも、手にとるように心に
感じたのだ。それは妙にメロンの匂いのような寂しさだった。
「異神 」 吉本隆明