皆様へのお願い
ご質問など頂く際に、
「匿名」様
「匿名希望」様
以外で、
お名前をつけてくださると幸いです。
匿名・匿名希望が多く、
過去にご質問頂いた内容が、
わからなくなってしまいます。
お手数おかけ致しますが、
なんでも良いので、
お名前をつけてくださるよう、
ご協力して頂けると助かります。
【最新発表】
甲状腺機能低下症と不妊治療
TSHの基準値が、
2.5から3.5、4.0へ。
自己抗体のある場合は、
2.5以上で治療推奨。
甲状腺機能異常と妊娠・出産
【甲状腺機能低下が及ぼすリスク】
・流産
・早産
・妊娠高血圧症候群
・胎児には中枢神経系の発達に影響
【甲状腺機能亢進が及ぼすリスク】
・母体の心不全
・流産
・早産
・妊娠高血圧症候群
・胎児の発育遅延
不妊症との関連
不妊症では、
顕性の甲状腺機能異常だけでなく、
潜在性甲状腺機能低下
（甲状腺ホルモンは正常範囲内・TSHが上昇している状態）や
甲状腺自己抗体との関連
の可能性が考えられています。
不妊治療を始める方は、
一律で甲状腺機能の検査をした方が良い
と思います。
当院でも、
最初に検査を行っております。
TSHの基準値
絶対にこうすべき基準値、
というのはありません。
ただ、「TSH2.5以上だと、
チラーヂンを服用すべき」
という考えは、
5,6年前くらいから変わってきています。
TSH2.5を基準とする考えは、
2010年の、
NegroRらの報告が元になっています。
2018年頃から変化
“Zhat Tらによるメタアナリシスでは、
TSHのカットオフ値を
2.5μIU/mLとした場合には
ARTの転帰に有意差がみられず、
3.5～5.0μIU/mLをカットオフ値として用いた場合に、
治療介入がARTの転帰を改善する傾向がみられた。“
解説：TSH2.5を基準としたら、
妊娠率・出産率は変わらなかった。
3.5〜5.0を基準にすると、
妊娠率・出産率が改善した。
ヨーロッパのガイドライン2021年
“欧州甲状腺学会ガイドライン2021年版では、ART予定症例において
TSH＞4.0μIU/mLで治療を推奨、
TSH 2.5～4.0μ/mLでは抗甲状腺自己抗体陽性の場合に治療を考慮するとされた。”
引用元：
Zhao T, Chen BM, Zhao XM, et al.
Meta-analysis of ART outcomes in women with different preconception
TSH levels. Reprod Biol Endocrinol
2018;16(1):111.
引用元：
Poppe K, Bisschop P, Fugazzola L, et al. 2021 European Thyroid Association Guideline on Thyroid Disorders prior to and during Assisted Reproduction. Eur Thyroid J 2021;9(6):281-95.
医学は、年々変化する
不妊治療での、
TSHの基準値だけではなく、
どんな分野でも変わってきます。
1年前は常識だった事も、
今では変わっている事もあります。
今は根拠が認められていない何かが、
来年には、
医学的に常識になっている
という事もザラにあります。
医学はそういうものなので、
どちらも間違いという事ではありません。
“このように、
不妊症診療における潜在性甲状腺機能低下への治療介入の是非は
知見の集積とともに微妙に変遷しており、
現状ではARTを導入予定の不妊症例においてのみ、
ISH＞4.23μIU/mL
（TSH値のハーモナイゼーションにより、
日本人の基準値が0.6～4.23に設定されている）をレボチロキシン治療の対象とするのが安当と考える。”
引用元
北海道産科婦人科学会 医会報 135号
2023年12月
文・イラスト：理事 岩城桃子
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