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なんでも良いので、
お名前をつけてくださるよう、
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前回の記事
男女の産み分け目的で、
五つ子を妊娠。
減胎手術で2人を残した。
残った2人も死亡。
「先天性の異常あり」
⬜︎ 胎児①の検査結果
・軽度~中度の心疾患(三尖弁逆流)
・ダウン症のリスクが1/65と、
染色体異常の可能性は低い
⬜︎ 胎児②の検査結果
・頭蓋骨一部欠損
・脳の脱出
の疑いがついた。
⬜︎ 上記の検査結果を受けて、
さらに、
1人の子どもの減胎手術をする為に、
Fマタニティクリニックへ紹介される。
Fマタニティクリニック
⬜︎ 妊娠16週5日の受診で、
羊水の減少あり。
⬜︎ 妊娠19週1日、
胎児①は羊水過多、
胎児②は羊水減少を確認、
妊娠継続は難しいと伝えられる。
⬜︎ 妊娠19週5日、
人工中絶手術を実施。
⬜︎ 病理検査から、
MD双胎とわかる。
ご夫婦の訴え
⬜︎ 減胎手術で、
医師が注意義務に反し、
手術時に多数回の穿刺を行い、
減胎対象外の胎児を穿刺などをしたので、
胎児を1人も救えなかったと主張。
⬜︎ 不法行為、又は、
診療契約上の債務不履行に基づき、
損害賠償金を請求。
妻: 約1900万円
夫:440万円
(慰謝料や治療費など含む)
⬜︎ 医療ミスとしての主張
① 減胎手術で太い採卵針を使い、
過剰な回数の穿刺をした事
② 救胎する胎児数、及び、胎児の選択について、
説明しなかった事(説明義務違反)
など
穿刺:針で刺す事
裁判所の判断1
*この裁判は、
地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所で、
審理(検討)されました。
*今回は、地方裁判所と高等裁判所の判断を解説します。
大阪地方裁判所令和2年1月28日判決
(掲載誌:判例時報2456号87頁)
① 減胎手術で太い採卵針を使って、
過剰な回数の穿刺をした事について
<主張:穿刺についてのミス>
細い針で1胎につき1回が原則として、
多くとも3回以内の穿刺に、
とどめるべきだったと主張。
裁判所は、
穿刺の回数や、
穿刺する針の太さもについても、
【ご夫婦の主張を認めず医師の過失はない】
と判断しました。
<主張:羊水の漏れ出し・減少の原因>
多数回の子宮穿刺のせいで、
羊膜損傷をし、羊水が漏れ出した為、
羊水が減少したと主張。
減胎手術の穿刺と、羊水の漏れ出しは、
必ずしも因果関係がなく、
減胎手術から、
羊水の漏れ出しが見られた時期は、
50日間あいているので、
関係は認められない
と判断しました。
裁判所判断2
② 説明義務違反について
<主張:説明が不十分であった>
五つ子の妊娠は、
実際は、
単胎と双胎2組(双胎が2組,うち1組はMD双胎)で、
単胎のみを残す選択肢を、
説明すべきなのに、
説明しなかったと主張。
裁判所では、
5卵性5絨毛膜5羊膜というのは、
誤診ではあったが、
五つ子という多胎で、
詳細を正確に把握する事は、
困難としました。
大阪地方裁判所は、
医師の過失のいずれも認めませんでした。
判断がくつがえった高裁
*大阪高等裁判所に、
控訴(不服申し立て)しました。
*大阪高等裁判所令和2年12月17日判決
(掲載誌:判例時報2497号23頁)
高等裁判所は、
減胎手術で、
母体に対する侵襲への配慮を欠き、
太めの針を使い、
約30回腹部を穿刺して、
「母体の危険防止に対して、
最善の注意を尽くす義務に違反した」
と判断しました。
地方裁判所の判断を覆して、
過失(責任)があると認定しました。
* 認定額 *
慰謝料:50万円
弁護士費用相当額:5万円
弁護士の解説1
今回は、
【妊娠後の減胎手術について】を、
裁判で訴えていった、
という事ですね。
しかし、
患者側の弁護士は、
【五つ子の妊娠になった経緯】
についても、
主張すべきだったと思います。
また他にも、
【男女の産み分けができる人工授精】
と謳っていた事についても、
主張しても良かったと思います。
弁護士の解説2
不妊治療分野の弁護士の観点からすると、
不妊治療(妊娠まで)の観点での主張を、
して良かったのに、
全然なかったと思います。
① 複数の卵胞が育っていて、
多胎のリスクが高いにも関わらず、
人工授精を強行突破した事。
② 男女産み分けのための治療だったが、
医学的に人工授精では、
男女の産み分けはできず、
体外受精でも、
産み分けはしてはいけない事。
③ また、これらの説明をせずに、
治療した事。
弁護士の解説3
少なくとも、
上記の大きなポイントは、
弁護側は主張すべきだったでしょうね。
弁護士は、
分野ごとに分かれている為、
おそらくこの時の弁護士は、
不妊治療分野の知識は、
あまりなかったのだと思います。
解説:弁護士 甲野裕大
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