図書館で借りた結城昌治『暗い落日』が残り数ページになった晩、眠くなって本を閉じて、次いで瞼を閉じたその時思い出した。
明日は早朝から旅行だった。
持って行く本が無いじゃないか。
『暗い落日』は多分あと数分で読み終わる。
その後は何を読めばいい。
明日の朝起きたら『暗い落日』をパパっと読み終えて、それから本棚を探そう。
きっと何か・・・まだ読んでない本が・・・1冊や2冊・・・すぐに見つかる・・・ZZZ・・・
・・・ZZZ・・・
・・・ZZZ・・・
・・・ZZZ・・・あ、いけない、寝坊だ!
本は愚か、着替えもまだ詰めていない僕は、本棚から見覚えのなさそうな1冊を掴み取った。
村上春樹は結構読んだけど、これはまだだったっけ?
なんだかこの人の本は、タイトルと内容が頭の中でリンクしない気がする。
風の歌ってどんな歌だっけ?
羊をめぐるのはどんな冒険だった?
僕だけかなあ?
パラパラと捲ってみると、どうやら本当に初見のようだ。
よし、これにしよう。
鞄の中の下着と半袖のボタン・ダウンの上に投げ込む。
そして律儀な僕は、残り数ページになった『暗い落日』も鞄に詰め込んだ。
『アフターダーク』
久し振りの村上春樹だった。
都会の夜。
終電と始発のあいだ。
何かが起こりそうな胎動。
何かがもう起きていそうな湿気。
二十歳前後、真夜中の歌舞伎町や六本木で時々同じような感覚を味わった。
昼間の世界とは明らかに違う空間。
地面の裏側に対称的に存在する闇の世界のような。
朝が来るとどんでん返しで舞台の床がひっくり返り、セットも登場人物も一瞬ですっかり変わるような、そんな感覚。
因みに池袋や江古田で夜を明かしても無かったなあ、その感覚。
今の池袋はまた違うのかも知れないけど。
面白かった。
色々思い出した。
あそう、この本も和田誠さんの装丁だったよ。
なんなんでしょう、この方。
