5月1日(火)晴れ。
仕事中に同級生のSさんからメール、実家の大掃除のため帰省中とのこと。
彼女の亡くなったおじいさんの蔵書も始末するので、よかったら見にお出でとお誘いを受ける。
壁に蔦の這う古いお邸の前には廃棄物の収集車が3台停まっていて、7、8人の作業員が忙しそうに荷物を運び出している。
その横を「ちょっと失礼します。」と通り抜けて、靴を脱いで上がり込むと、彼女が息子さんと所在無げに立っていた。
彼女が早速家中の本棚を案内してくれる。
小説、文学全集、キリスト教関係の本などの他に、建築家だったおじいさんならではの専門書や雑誌、図版など、膨大な量の蔵書である。
「婦人之友」のバックナンバーが殆ど全巻、整然と並ぶ棚もあったが、あれは奥方の物か。
故人のお人柄が偲ばれる。
「気に入ったのがあったらお持ち下さい。」
彼女のお言葉に甘えて、バッグに数冊の本を入れた。
おじいさんの本棚の隅に、小さな建築模型が飾ってあるのを見つけた。
「あ、自由学園。」
僕の声に彼女も振り向いた。
「へー、こんなのあったんだ。明日館だっけ。」
「そう。弟がここで結婚式したよ。」
彼女が業者と話をしに部屋を出ると、息子さんが僕に話し掛けてきた。
「母は昔と変わりませんか。」
僕は頷く。
「ちっとも変わってませんよ。」
息子さんはちょっと嬉しそうに笑った。
