Yes - Tales from Topographic Oceans (Full Album) 1973

 

 

 

 

 

イギリスのプログレッシヴ・ロックバンド「イエス」が、いま来日しています。(2024年9月22日現在)

 

 

2022年9月の来日から2年ぶりの来日です。

 

 

 

 

 

【イエス来日公演ライヴレポート2024】2年ぶりのジャパン・ツアーが開幕。スティーヴ・ハウの奮闘ぶりとバンドの結束力、そして55年の歴史を凝縮した“究極のセット・リスト”にシビれた!

2024.09.17

 

 

 

 

 

今のイエスのライヴ・パフォーマンスが「安定」しているかどうかは別にして、片山伸さんのイエス・ライヴレポートの「絶賛ぶり」の安定感は読んでいて清々しくなる境地だと思います。1980年前後にはプログレ系のライナーやレビューも書いていた、伊藤政則の熱(暑)すぎるレビューにだんだんと似てきているような気がしないでもありません。70年代にはイエスに対しては冷めた発言をしていた渋谷陽一が、前回のイエス来日(2022年)では「スティーヴ・ハウ完全復活!!」と、驚くほどの絶賛レビューだったので、正直な話私は少し引いてしまいました(いやいや、それ程までの完全復活でもないでしょう・・・と思いました)。渋谷氏は少なくとも70年代後半あたりはイエスに対しては辛口で、明らかにクリムゾン礼賛でしたから。

 

 

 

 

「The CLASSIC TALES OF YES Tour 2024 デビュー55周年記念公演」

 

公演日程

●2024年9月16日(月・祝)/18日(水)/19日(木)東京:昭和女子大学人見記念講堂

●2024年9月21日(土)仙台:SENDAI GIGS

●2024年9月23日(月・休)名古屋:岡谷鋼機名古屋公会堂(名古屋市公会堂)

●2024年9月25日(水)大阪:NHK大阪ホール [SOLD OUT]

 

 

今日、9月22日時点では東京3公演と仙台公演を終え、明日の名古屋と3日後の大阪を残すのみです。仙台からは日帰りだとの情報もあったので、イエスのメンバーは今は東京に滞在しているのか、または名古屋への移動中なのか。

 

 

 

【セット・リスト 9月16日】*『』内は収録アルバム

 

<第1部>

オープニング:青少年のための管弦楽入門(Young Persons Guide To The Orchestra)

01. マシーン・メシア(Machine Messiah)『ドラマ』

02. アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル(I've Seen All Good People)『サード・アルバム』

03. 究極(Going For The One)『究極』

04. アメリカ(America)-Southern Solo- 『イエスタデイズ』

05. 時間と言葉(Time And A Word)『時間と言葉』

06. 世紀の曲り角(Turn Of The Century)『究極』

07. シベリアン・カートゥル(Siberian Khatru)『危機』

<第2部>

08. 南の空(South Side Of The Sky)『こわれもの』

09. カット・フロム・ザ・スターズ(Cut From The Stars)『ミラー・トゥ・ザ・スカイ』

10. 海洋地形学の物語ダイジェスト・メドレー(Tales From Topographic Oceans Medley)『海洋地形学の物語』

<アンコール>

11. ラウンドアバウト(Roundabout)『こわれもの』

12. スターシップ・トゥルーパー(Starship Trooper)『サード・アルバム』

 

 

今回の日本公演では直前のツアーとは数曲の楽曲変更があったようです。何度も来日していると、定番曲と目新しい曲(とは言っても70年代の楽曲であまり演奏されていないという「目新しい」ですが)のバランスに苦心している事が伺えます。

 

 

Machine Messiah (2008 Remaster)

 

 

 

個人的には中学2年生のときにイエス・ファンになって、初めて新譜としてリリースされたアルバム『ドラマ』(1980年)から「マシーン・メシア」をライヴのオープニング曲として聴ける事が本当に楽しみです。アルバム『究極』でイエスファンになった私と同級生の友人にとって、渋谷陽一の「サウンドストリート」で初めて聴いた「マシーン・メシア」は、時代の持つフィルターを取り除けば素直に「良い音楽」だと思ったものでした。ラジオ放送時の渋谷氏を始めとする「音楽評論家」様たちの「時代の制約」がかかりすぎたコメントによって、アルバム『ドラマ』を素直に「良い」と言うのが憚られるという、何かの「雰囲気」があった事を今でもよく憶えています。

 

 

 

 

中学生のか弱い自我にとって「渋谷陽一」「北村昌士」「秋田昌美」といった人たちの書く「文章」は、彼らへの反抗心を無前提に「判断停止」する威容を有していたし、また、私たちは彼らに単純に憧れて感化されるだけの時期でもありました。特に北村昌士がレコメン一色になった頃の「フールズメイト」誌で「私はイエスというバンドが本当に大嫌いだ」と書いていたのを読んだときには、イエスの音楽自体さえもが「良い」と思う事すら許されないかのような、そんな「時代的制約」があった時期だったのかもしれません(1983年頃の一部の人の中で。私自身は北村昌士の音楽的志向と文章に大きく感化されすぎて、また、同級生は後に東京の某大学でのライヴで秋田昌美の前に出演し、秋田氏から「お疲れさまでした」と声をかけてもらった時に「足が震えた」と言っていました)。

 

アルバム『ドラマ』を素直に良いアルバムだと聴けたのは、やっと35歳くらいになってからでした。2002年頃にもなると往年のアーティストたちはすっかり「いい親父」さんになって、良い意味での「隙」「余裕」が音楽にも人間性にも表れてきました。この頃から私は「プログレ」というものと適正な距離で初めて接する事ができるようになったのかも知れません。

 

2003年に初めて観たイエスの来日公演は、そんな「余裕」たっぷりで、隙だらけのコンサートでした。大阪公演のクライマックス曲「悟りの境地」のラストの見せ場(リックの教会オルガンソロの直後)で、リック・ウェイクマンが音を出すのを一瞬躊躇して、音楽に空白が生じ、ハウが決めのフレーズを出す瞬間を焦りまくり、クリスとアランがなんとか繕い、それなりに演奏を続けられたあとに、ジョン・アンダーソンがあたかもバカボンのパパのように「これでいいのだ」と日本語でつぶやいているかのような堂々とした佇まいで鎮座している姿を観て、「ああ、イエスファンでいて、良かった~」と心底から思えたのが嬉しかったです。(五人五様の個性です(^^)

 

 

 

 

今回のツアーは「The CLASSIC TALES OF YES Tour 2024 デビュー55周年記念公演」と題されています。という事でツアーの目玉曲は1973年にリリースされたアルバム『海洋地形学の物語』全体を20分に編曲したダイジェスト・メドレーです。

 

10. 海洋地形学の物語ダイジェスト・メドレー(Tales From Topographic Oceans Medley)

 

 

前出の片山伸さんのコンサートレビューです

 

第2部の最後で今晩のハイライトは、イエス史上最強の超大作『海洋地形学の物語』(合計80分)を20分強の長さにアレンジしたダイジェスト・メドレーだ。このアルバムがリリースされた当時でさえ全曲を演奏する機会は決して多くはなかったのに、スティーヴはこのアルバムの全体像をなんとかライヴで披露したいと考え、壮大なダイジェスト構想に至ったという。スティーヴによれば「クラシック音楽のように演奏者を変えることはできても、聴衆のイエスに対するイメージを変えることはできない」ということで、オリジナル・アレンジからの編集作業にはかなり苦労したようだ。だが実際に作業を始めてみると、単なる時短のためにハサミを入れる編集とは異なり、組曲に新しい視点を与え、誰も想像したことがなかった“新しい組曲”として成立させることに成功している。なんと我々リスナーは、あの大交響曲のエッセンスを一気にライヴ体験することができてしまったわけだ。言葉で表現するのは難しいが、このメドレーの素晴らしさは実際に会場で爆音体験してもらうのが一番わかりやすいだろう。

 

 

 

 

ロック史に残る傑作『危機』の次作となった『海洋地形学の物語』が、特に発売当初は大バッシングを浴びた理由としては、「80分という楽曲時間が長すぎる」という事が大きな理由の一つだと言われています。本作の製作を主導したジョン・アンダーソンでさえも、「長すぎる」と思っていたようで、後にこんな発言をしています。

 

ジョン・アンダーソン(1990年の発言)

 

僕の夢は、「海洋地形学の物語」をもう一度入念に見直し、CDで1時間ものとして再発することだった。リミックスしたりオーバーダブを入れたりすれば、ものすごくいいものになると思うんだけど、それは人間関係のせいでボツになってしまった。大掛かりなものをやろうとすれば、陥りやすい問題のひとつだ。「海洋地形学の物語」の3/4は素晴らしい出来だとずっと思っているけど、あとの1/4がうまく合っていない。昔はアーティストは見直す時間があったけど、あのアルバムは僕たちがもう一度ちゃんと聴き直す時間がないまま世に出てしまったんだ。ワールド・ツアーに出かける必要があったからだけど、非常に努力して作ったものなんで、もう一度やり直す機会があればいいと思う。

 

ティム・モーズ『イエス・ストーリー 形而上学の物語』(シンコー・ミュージック)より

 

 

 

 

私はアルバム『海洋地形学の物語』を初めて聴いたときから、この「長すぎる」という批判は正しいと思いつつも、ではどんな形でリリースされていたらイエスの歴代の名盤と遜色のない評価を得ていたのだろうか?と、ずっと思わずにはいられませんでした。

 

『こわれもの』『危機』の後にリリースされた『海洋地形学の物語』

 

『リレイヤー』『究極』の前にリリースされた『海洋地形学の物語』

 

『こわれもの』(1972年)

『危機』(1972年)

『海洋地形学の物語』(1973年)

『リレイヤー』(1974年)

『究極』(1977年)

 

1973年という年だけに、イエスという素晴らしい音楽を創るグループに、何か途方もない「呪い」「悪霊」「不幸」が憑りついてしまったのでしょうか? もしも人智を超えた何かに憑りつかれたのだとしたら仕方のない事です。しかし、イエスは1973年もライヴでは絶好調でしたし、ビル・ブルーフォードの脱退で『危機』まで築き上げてきたイエス自体がダメになってしまった訳ではない事は後の活動からも分かります。

 

もしもジョン・アンダーソンが言うように『海洋地形学の物語』を再編集することで、本作が名盤に生まれかわると言うのならば、新たな音楽的要素(つまり楽曲の付け加え)なしに、80分の『海洋地形学の物語』に既に出そろっている「部分」「部分」「部分」が、いまリリースされている状態でも十分に魅力的である事が、本作を名盤として世に知らしめる基本的な条件だと言えると思います。

 

つまりは、元から『海洋地形学の物語』は「聴き手」の聴きようによっては十二分に名盤であるという事です。

 

 

片山伸

単なる時短のためにハサミを入れる編集とは異なり、組曲に新しい視点を与え、誰も想像したことがなかった“新しい組曲”として成立させることに成功している

 

 

片山さんのこの発言を読んだのは9月17日にこのコンサート・レビューがネットに公開された日でした。片山さんの書く文章だから「話し半分に」とは思いつつも、

 

組曲に新しい視点を与え、誰も想像したことがなかった“新しい組曲”として成立させることに成功している

 

のかも!

 

と、期待に胸を膨らました状態で9月25日のイエス大阪公演まで無事に過ごしたいと思いました。しかし、やはりネットやSNSでの「生の声」も気になります・・・(大本営発表を鵜呑みにしたら、大阪公演当日の失望が半端なくなる)

 

で、ネットを漁ると「良い感じで音楽を聴いていたら、さあここから!という所でレコードの針が瞬間移動して、全然違う音楽に変わる・・・の連続で、アッという間に20分が終わってしまった」

 

こんなに失望したという意見も目にしてしまったら、「ああ、やっぱりこれが『海洋地形学の物語』の悲しい運命なのか・・・」と、ああやっぱりなあと思ってしまいました。(というか、そんな「短すぎる!」という批判をするのなら、最初から「長すぎる」なんて言うなよ、という思いも不思議に湧き上がってきます)

 

 

本当は大阪公演当日までは、今回の20分『海洋地形学の物語』がどんな出来なのか、どんな編集がされているのか、は知らないでおこうと思っていたんです。でも、こういう否定的意見を一旦目にしてしまったら、このまま大阪公演で初めて聴くのも・・・と思って、ネットにある動画で20分『海洋地形学の物語』を観てみました。

 

 

・・・まあ、そういう意見も出るかなあ

 

というのが観てみたあとの感想です(^^;

 

 

 

 

片山伸

なんと我々リスナーは、あの大交響曲のエッセンスを一気にライヴ体験することができてしまったわけだ。言葉で表現するのは難しいが、このメドレーの素晴らしさは実際に会場で爆音体験してもらうのが一番わかりやすいだろう。

 

 

そうです。『海洋地形学の物語』の「部分」「部分」「部分」の素晴らしさは、イエスファンなら多くの人たちが分かっている事です。片山さんの言う「あの大交響曲のエッセンスを一気にライヴ体験すること」は、そもそも聴き手がその「場所」で、自らも参与して創り出す「モーメント」であるはずなのです。

 

 

ジョン・アンダーソンとともに『海洋地形学の物語』というイエス史上最大のミステリーを作り上げた共犯者であるスティーヴ・ハウが、時代の制約というフィルターによって何重にも歪められてきた本作がリリースされた50年後に、どういう「エッセンス」を聴衆というもう一方の共犯者とともにコンサート会場という「場所」で共有できるのか

 

長々と、ハッタリや、小道具や、切り貼りや、間延び、引き延ばしを駆使しつつ、もっともらしい事を書いてきましたが、会場ではただ単純に「音楽」を楽しみたいと心から思っております。

 

(長い文章は久しぶりに書くと、楽しいです、、)

 

 

 

 

 

Yes - Cut From The Stars (Official Video)

 

 

 

新しいアルバムからはアルバムのタイトル曲「Mirror to the Sky」ではなく、この「Cut From The Stars」を演奏するのですね。この曲は最初は特に可もなく不可もなくな印象でした。何回も聴いているとビリーのベースラインが何気ない瞬間にふと頭の中を駆け巡る反復的な喚起力があって、ライヴ後は気に入ってしまうかもです。2年前の「The Ice Bridge」のように。

 

 

 

 

どっちの正装で行くか、迷う、、

 

 

 

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