The Remembering, Pt. 3 (Remix)

 

 

イエス『海洋地形学の物語』の第2楽章 『The Remembering(邦題「追憶」)』からの約8分間の抜粋です。「追憶」はフルで聴くと20分38秒あります。名作・傑作揃いの70年代イエスのアルバムの中で『トーマト』と並んで、いや、、それ以上に「迷盤」「問題作」「失敗作」扱いされている『海洋地形学』。そこに収録された20分前後の4つの楽曲(合計80分強)の中で、最も1曲を通して聴くのが難しい(退屈)とされている「追憶」。ああ、可哀相な「追憶」・・・

 

私も「追憶」は最後まで苦手な曲でした。というか、最初(18歳のとき)は、第1楽章「神の啓示」だけがダントツで大好きだったので、他の3曲はあんまり聴いていなかったんです。それが、2002年に発売されたコンサートDVD『シンフォニック・イエス』で、ヨーロピアン・フェスティヴァル・オーケストラと共演した第4楽章「儀式」を観て、「儀式」も大好きになりました(以前から「儀式」は、まあまあ好きではあったけれど『イエスショウズ』のバージョンはあまり好きでもなかった)。

 

第3楽章「古代文明」はラストに付け足したかのような、歌&ギター曲「Leaves Of Green」は好きでした。2000年頃から『海洋地形学』全体に関心が強くなりだしていたとはいえ、「古代文明」全体に完落ちしたのは1974年2月18日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの音源をyou tubeで聴いた時でした。ハウのギターだけではなく、5人全員がグルーヴしまくっている演奏の虜になり、以前から思っていた事、「古代文明」は『リレイヤー』への「リレイヤー(継承者)」だと確信する事ができました。これで、3曲完落ち。

 

最後まで残った最難関の「追憶」。良い部分はあるんです。「部分」は。ただ、その良い部分の「点」と「点」が線になるどころか、良い部分をわざと印象悪く聴かせようとしているかのような「20分で1曲」へのこだわりと引き伸ばしのために、「追憶」が元々持っている楽曲としての良さが非常に伝わりにくい!

 

だから、色々と試しました。特にMDデッキを購入した2000年以降は、エディー・オフォードになったつもりで『海洋地形学』を切り貼りして、何バージョンか60分くらいに再編集していました。

 

 

 

「3年後、確実に○○が弾ける練習法」というシリーズがあります。ジャズ・ギター、ジャズ・ピアノ、クラシック・ピアノ、ジャズ・サックスなど、この一冊を3年間しっかりやれば確実に弾けるというシリーズで、付け焼刃的な教則本とは違って、本格的なものだと評価の高いシリーズです。私は3年前にジャズ・ギター版を買いました。3年たって・・・まだ確実にジャズ・ギターは弾けていません、、(ただ怠けているだけです・・・)

 

そんな私が

 

3年後、確実に『イエス・海洋地形学の物語』が聴ける(退屈・苦痛ではなくなる)練習法

 

などというタイトルで語っても説得力があまりないかもですが、『海洋地形学』についてはフリーダムに書いて行こうと方向転換したので、そんな感じで書いて行きます。

 

 

「追憶」攻略法・その1 『良い所を選んで聴く』

 

上掲の8分07秒だけ抜粋された「追憶」は、約20分もある「追憶」のちょうど真ん中のパートです。20分の「追憶」は、とにかく序盤の8分くらいがかなり退屈です。このパートは20分の「追憶」の中の8分から16分あたりのパートで、ハウのアコギの響きと、ジョンの軽快な歌声によって、一旦は「退屈地獄」から解放されるパートです。

 

しかし、ここでも難関『海洋地形学』は、再び退屈ループに陥ります。8分というのは歌モノとして、さらっと聴かせるにしては長い時間だし、「燃える朝焼け」「シベリアン・カートゥル」のような、構成がガチッと決まった楽曲とついつい比較してしまう長さなので、この部分だけを取り出しただけでは、退屈なものは退屈以上にはなりません。

 

 

では次に行きます。

 

 

 

YES The Remembering -- edited version

 

 

 

「追憶」攻略法・その2 『編集した短縮バージョンを聴く』

 

20分38秒の「追憶」を、15分25秒に編集したバージョンです。繰り返し(リックやエディー曰く「水増し」「底上げ」)をバッサリとカットすれば、5分短縮できます。イエスで15分くらいの楽曲というと「悟りの境地」を連想しますよね。中間部分の弛緩がやや長い「悟りの境地」と比べても、この15分「追憶」は構成という面からも、聴きごたえという面からも、遜色ない出来になっているかも、、と感じる事ができます。1973年にCDというものがあれば、たぶん「追憶」は60分4曲の『海洋地形学の物語』の中の15分の1曲として、こんな感じで世に出ていた可能性が高いです。ジョン・アンダーソンが「私の夢は不完全な形で世に出てしまった『海洋地形学』を60分に編集して、もう一度リリースする事だ(大意)」と発言しています。「普通に」再編集すればこんな形になるでしょう。15分の「追憶」、悪くないです。いや、結構良いです。

 

 

しかし、私たちは既に80分『海洋地形学』を知ってしまっております。もうその「記憶」を「追憶」の彼方に葬り去る事は不可能なのです。この15分の「追憶」を聴いていると、スッキリした構成に爽快感を感じるのと同時に、何か大切なものを切り捨ててしまった寂しさと罪悪感すら感じてしまいます。例えば「危機」を5分もカットするなんて、想像すらできませんよね。1秒たりともカットするなんて考えられない。どうやら今では私も「危機」と「追憶」を同等に大事に思うような人間になってしまったようです。一度80分『海洋地形学』の不可思議な魅力に憑りつかれてしまうと、こんな境地にまで達してしまいます。

 

 

では次に行きます。

 

 

Yes Edits: 2016 - The Remembering (instrumental edit)

 

 

 

「追憶」攻略法・その3 『ジョン・アンダーソン要素を取り除いてみる』

 

スティーヴン・ウィルソンのリミックス版は、私は1枚も購入しておりません。これはその中のボートラなのでしょうか。「追憶」のインストゥルメンタル・バージョンです。日本語に訳すとカラオケ・バージョン(で、良いのか?)。つまりジョン・アンダーソンだけ(クリスとハウの美声も)を除外したイエスです。

 

実は私が「追憶」を、やっと「これはかなり良い曲なのではなかろうか」と、初めて真に思えたのは、3年くらい前にyou tubeで耳にした「追憶」のインストゥルメンタル・バージョンでした。上掲のバージョンとは違うもので、今はそのリンクもあるのかどうか分かりません。しかし、30年くらい「追憶」という難敵(ラスボス)と格闘してきて、ふと「ああ、ええ曲や!」と劇的に思えたのが、歌なしバージョンだったのは事実なのです。その劇的な効果・効能には、自分で自分を疑いました。

 

ジョン・アンダーソンの歌も歌詞も大好きな私ですが、ジョンを除外したイエスの楽曲の方がずっと良いと思えた事に驚くとともに、元々の『海洋地形学』のフル・バージョンの「追憶」も、以前よりずっと良いと思えるようになりました。この時に再認識したのは、「追憶」は「それでもリックのプレイは手抜きだけれど、ハウ、クリス、アランの演奏は素晴らしい」という事です。インストの「追憶」を聴いて、「追憶アレルギー」を解消された人が全世界で何人いるかは分かりません。その中の1人が私である事だけは確かです。

 

元々の曲が良いという事は、楽器演奏だけでも十分に聴く事ができるという事も再認識しました。まるで環境音楽のように「追憶」を、『海洋地形学』を聴くというのもアリだと思います。私は特に「神の啓示」に対しては、昔から、ある意味ではそんな聴き方をしていました。

 

そして、『海洋地形学』=「難解で退屈」という図式の原因の一端が、ジョンの仰々しい(褒め言葉です)歌唱や歌詞にあるのかと。やっぱりそうなのかと、思わされました。マイク・オールドフィールド『呪文』のような感じで、最初から「追憶」がインストだと思うと、「追憶」を好きになるきっかけになるかもです。あまり構えて聴かずに、最初は気楽に聞き流す感じが良いのかもと思いました。

 

このインストゥルメンタルの「追憶」に、ヴォーカル・パートのメロディーをマイク・オールドフィールドに弾いて貰えたら、どんなに素晴らしいか・・・という妄想もついついしてしまいます。(イエスの執政官・執権、スティーヴ・ハウがそんな事を絶対に許可する筈はないと知っていつつも)

 

 

 

しかし、歌なしの「追憶」が、「きっかけ」になったとしても、

 

3年後、確実に『イエス・海洋地形学の物語』が聴ける(退屈・苦痛ではなくなる)練習法

 

の最終段階としては物足りない。

 

 

さて、あと一息です。『海洋』のラスボス、リックを攻略です。

 

 

YES The Remembering, High The Memory, Live NYC 1974

 

 

 

「追憶」攻略法・その4 『もしも、リック・ウェイクマンが本気で弾いたら凄い曲になっただろうなあ・・・と、無理やりでも想像して聴いてみる』

 

16分15秒からのリック・ウェイクマンのキーボード演奏が本当に素晴らしいです。リックのソロで大ヒットした『地底探検』の100倍は良いです。もう、ココだけでも聴く価値があります。『海洋地形学』を嫌ってロクにレコーディング・スタジオに来なかったリック。しかし、大嫌いな音楽(海洋)を演奏していても、ライヴでは生来の演奏家としてのプライドが自然と発揮されるのでしょう。この演奏をしながらビール12本と、カレーを食べていたとすれば、インド人もビックリです(あの逸話は多分「古代文明」を演奏している時でしょうね)。「イエスは子供騙しのハッタリだ」と言った、ジェントル・ジャイアントの楽器持ち替えに対抗して、メロトロン、モーグ、ビール、カレーの持ち替えでケリー・ミネアーに対抗です、我らがリック・ウェイクマン!(おことわり・私はGGメッチャ大好きです。)

 

 

 

80分の我がバイブル(禁断の経典)

 

Yes - Tales from Topographic Oceans (Full Album)

 

 

 

効果・効能には個人差がありますので、こんな方法で

 

3年後、確実に『イエス・海洋地形学の物語』が聴ける(退屈・苦痛ではなくなる)練習法

 

と言えるかどうかは、当方は一切の責任を負うものではない事を、お断りしておきます(^^;