寛永の雅
江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽
会期: 2018/2/14(水) ~ 2018/4/8(日)
会場: サントリー美術館
公式サイト: https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_1/
出品作リスト: リスト(PDF)
ちょっと用事で出かけたついでに、時間が空いたのでこんな時はサントリー美術館♪歴史無知だから寛永年間と言われてもピンとこなかったのだけれど、、、なに、「探幽」?それは気になる(笑)。そして、会場入り口の説明パネルを熟読したところ・・・。
「黄金と侘び」の桃山文化、「絢爛と活気」の元禄文化の間にあたる寛永文化は「きれい」がひとつのキーワード。その「きれい」とは、華麗さより落ち着いた上品な色彩、少ないモチーフと大きな余白の構図、均整のとれたシンプルかつシャープな造形、古典作品に基づいた豊かな文化性などからなる瀟洒な美しさをあらわすもの。
って、なんだか要するに私の好みストライクな予感!トキメキを覚えながら先を読み進めます。フムフム、学問芸術に造形の深かった後水尾院が牽引したのね、、、しかもフィーチャーされてるのが、茶の湯の遠州、江戸焼きの仁清、絵画の探幽。狩野派で1番大好きな狩野探幽!!これだけでも観に行く動機になります。残念ながら茶の湯はわからないけれど、京焼きは好き。仁清も好き。これは、とっても楽しそうな展示ではないでしょうか!わくわく。うきうき。
俵屋宗達・画 黙阿弥光悦・筆 《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》 サントリー美術館蔵
秋の野の鹿と『新古今和歌集』に収められた散らし書きにされた和歌たちのコラボ♪優美で美しく可愛い!(*‘∀‘) 寛永文化の中心は京都。後水尾院は長く絶えていた儀礼や古典文芸の復興に心を尽くし 古典復興の気運が高まります。中でもとりわけ和歌は、宮廷文化の象徴として再注目。幕府も積極的に公家衆と交流し、やがて町民まで巻き込んだ大きなウェーブとなっていったそうです。
鷹司房輔ほか・詩、清原雪信・画 《女房三十六歌仙歌合画帖》 MIHO MUSIAMU蔵
そんな気運の中、流行したのが歌合画帖という雅で素敵な趣向。これ↑は鎌倉時代に撰述された『女房三十六人歌合』に選ばれた女流歌人36人のうち、平安時代の歌人と院政期以降の歌人を左右に配して画帖の上で歌を競い合わせるという架空の歌合大会が繰り広げられています~(*‘ω‘ *)。装丁も美しいし、添えられた各歌人の挿絵も優美。写真は、購入した図録より式子内親王(左)と小野小町(右)の頁です。当時は同じような趣向の画帖が数多く制作されたようで、他にも数点展示がありました!これぞ雅な遊び。現実には実現しえなかった組み合わせの歌合わせを想像し、あーでもないこーでもないと気の置けない仲間同士で評論しあいながら想像を楽しむひとときは楽しかったでしょうね~。
重要文化財 《東福門院入内図屏風》 右隻 三井記念美術館蔵
寛永文化の開花と発展の影には公武の良姜な関係を保つための政治と経済の活動ありき。写真じゃどうしてもその壮麗さが伝わらないこの屏風↑、二代徳川秀忠を父に、浅井長政の三女、於江の方を母にもつ東福門院和子が後水尾天皇の女御として入内した際の二条城から禁裏へと向かう行列を書いた絵巻を後に屏風に仕立てたといわれています。将軍家から皇室へ。これは歴史的大事件。そして、そんな大事件に相応しく今では想像を絶するほどの物々しい大行列の入内です。いったい支度金はいくらかかったのでしょう(+o+)。こういった幕府の融和政策や資金援助が、寛永文化の発展と浸透に大きな助けとなったんですね。同じお金なら、戦争に使うよりずっといいです(´ー`)。
焼き物は、ごく一般的な知識のみであまり詳しくないのですが・・・京焼って好きです。というより、尾形乾山が大好きといった方がいいのかもしれませんが・・・。シンプルかつモダン、優美で上品。でもフォルムは人工的ではなく温かみがあって・・・。尾形乾山の師匠だった野々村仁清の時代から既に京焼きの京焼きらしさが確立されています。どれもこれも「好き!」がビビビな焼き物ばかりで、かつ、これらが今の時代まで美しく保存されていることにもまた感動でした。前期展示から、特に気にいった4点を図録から撮影し、コラージュしました↑。
《白釉円孔透鉢》は、現代の作品といっても通るほどのモダンで洗練された造形!孔を通して、四季折々の景色を背景に眺めるのもオツだなぁ、とか。秋には枝葉付きの柿の実をひとつ、入れて飾ってあるのを眺めながらの酒肴なんかも楽しそう・・・なんて、想像が膨らみます。《飴釉白帆文茶碗》は、その独特の飴色の色合いと艶が伝わらず残念ですが、本当に良い色あいです。写真は少し金色に見えますが実際は生成りがかった白色で、サっと早筆風に単純化された帆船が側面を漂っています。余白の美、そしてこの手のひらサイズの茶碗が広い海原へ通ずる宇宙的な広がり。
《銹絵富士山文茶碗》の富士山も、のびのびとして品があって好みです。京焼きって、本当にひとつひとつのフォルムにぬくもりがあっていいですよね~。《白濁釉象嵌桜文茶碗》は、まず何をおいてもその独特のけぶったような淡い青色の美しさに目が吸い込まれます。白抜きで桜の花びらがさりげなく描かれているのわかりますか?満開の桜の薄ピンク色の中、このお茶碗の色はめちゃくちゃ映えるだろうなぁ、美しいだろうなぁ・・・とウットリ。
さてさて。大好きな大好きな狩野探幽です( *´艸`)。探幽が沢山観られて本当に幸せ♡ 皆が和歌に夢中になった時代なので、その大家である柿本人麻呂の肖像と和歌の組み合わせの掛け軸も大人気だったらしく、この展示でも数名の画家による様々な柿本人麻呂像が展示されていましたが、やっぱり私は探幽のそれが一番よかったです^^。味があって、探幽の、柿本人麻呂へ対する敬愛の気持ちまで現れているような気がします。
狩野探幽 《富士山図》 静岡県立美術館蔵
探幽もやっぱり富士山は描きますね~。今までに観た富士山の中で一番好きかもしれない(´艸`*)。後期展示では、もうひとつ、別の探幽による富士山図と入れ替えになるようなので、そちらも観に行かなきゃ~と思っています。サントリー美術館は最低2度通うのがお勧め。
狩野探幽 《源氏物語 賢木・澪標図屏風》 右隻 出光美術館蔵
探幽の源氏物語まで~!なんて美しいのでしょう。実物はこの↑の写真の数十倍の美しさです!本当に瀟洒。絵は動かないのに、映画のワンシーンを眺めているような気分になりました。その他にも素敵な探幽が色々あって大満足。七宝工芸目当てで訪れた五島美術館の「光彩の巧み」展で展示されていた、改築中の名古屋城上洛殿の探幽の襖絵も、別の場面が描かれた一式が展示されていました。
この日は空いた時間の寄り道だったこともあって、1時間ちょっとしかなかったのでとにかく探幽と仁清に集中!というわけで、失礼ながら茶の湯の小堀遠州関連は、サーっと眺めて通り過ぎるのみ。次回、後期展示の際にもうちょっとじっくり勉強させて頂きたいと思います^^;。







